最優秀賞 かいばみ賞
おくりもの 井上 朝子 毎年春になると 祖母が車椅子を押し畑へ行く 祖母がならした土に 私は車椅子の上から種をまく いつのことだっただろう 小さな手で握った取っ手 うまく注げず暴れるジョウロ 祖母が黒い指でぬぐってくれた涙 頬に残る土の跡 今年の夏 祖母の姿がない 主のない荒れた畑 久しぶりに 母に車椅子を押され畑へ出た 不格好なトマトが 赤く揺れていた 一つ手に取り 畑に重ねて眺めてみる トマトの甘さを かみしめる 祖母の思い出 かみしめる
肉親の死を経験する人は大勢います。
しかし祖母の生き方が自分に何を残したのか考えたり、気づく人はほとんどいません。
祖母はあなたに種をまくことを教えた。あなたの心の中の土を黒く豊かにしてくれた。
あなたが大地と同じく、命を育てる力を持っていることを教えてくれたのだと、あなたは深く気がつきました。
奨励賞 1席 かいばみ賞
風の声 井ノ川 莉奈 大地にそよぐ風の声は、 遠い記憶を呼びさますような風の声。 森のむこうの未来を知っていて、 雲の流れる先に何かがあるか おしえてくれる風の声。 「行きなさい。」 と風の声が私に呼びかける。 「信じなさい。」 と風の声が私に呼びかける。 あふれるおもいを強さに変えて前に進む。 はるか何億年も前から、 この大地を駆けまわっていた風の声。 私たちは、 そんな風の声と大地を駆けまわっている。 昔も今もそして未来も……。
あなたの耳は遠い記憶を呼びさます風の声を聞きました。
「行きなさい」、「信じなさい」と風の声は言います。スケールの大きさと豊かな感性に驚きます。あなたには一生風の声が聞こえるでしょう。
アニメーション世代だから生まれてくる言葉なのでしょう。
奨励賞 2席 かいばみ賞
バッターで打てない気持ちわかるかな 山井 瑞樹 バッターでうてない気持ちわかるかな ランナーじろじろ見ている アウトになると、みんなざんねんがるな がんばらないとダメだな うてないと、どうしよう うてないと、どうしよう バッターでうてない気持ちわかるかな かんとく、コーチがじろじろ見ている ストライクになると みんなざんねんがるな うたないとダメなんだな ぜったいうたないとダメなんだな うてなかったらどうしよう うてなかったらどうしよう
わかる、わかる、私にはわかる。でもきっと、何でもできる子には、わからない。
こんな気持ちも野球の楽しさのひとつなのかも知れません。
奨励賞 3席 かいばみ賞
桜 中村 彩香 桜、桜 あなたの りっぱな枝には、 春になにがさく? 一年生のように かわいい うす紅色の 小さな 花よ 桜、桜 あなたの りっぱな枝には 夏になにがさく? 元気な子どものように つやつやとした みどり色の 元気な わか葉よ 桜、桜 あなたの りっぱな枝には、 秋になにがさく? 太陽のように 真っ赤にもえた 鳥の くちばしのような おち葉よ 桜、桜 あなたの りっぱな枝には、 冬になにがさく? 雪うさぎのように 白く 美しい 雪の 花
桜が好きな人は多くて、私も大好きです。
太陽のように/真っ赤にもえた/鳥の/くちばしのような/おち葉よ…。
イメージが美しく変化する、秋の桜の表現が見事です。
桜の四季を豊かな感性でとらえています。
本の中の世界 鈴木 祥矢 一ページめくるごとに 物語が進んでいく こわい話 ゆかいな話 昔の話 どんどん読み進めないと 終わりが来ない と中でやめたら そこに残されたままだ ぼくはもっともっと 知らない世界へ行くために いっぱい本を読むよ。 そして ぼくの世界を広げていくよ。
読むと、私も本の中の世界を歩いている気がします。最後の5行を読んで、そっと拍手しました。あなたの世界は本の中からも広がっていきます。
金丸の冬 阿部 由香莉 もうすぐ冬がやってくる 毎年きまった時期に 北風をつれてやってくる 山の生き物達に 「もうすぐ 寒い冬がやってくるよ」 と告げている まるで 音のしないサイレンを 山々にこだまさせているみたい もうすぐ冬がやってくる 毎年きまった時期に 地面をこおらせる 土の中の虫達に 「早く冬眠しなさいよ」 とせかしている まるで 水晶のような輝きを光らせて 合図を送っているみたい もうすぐ冬がやってくる 赤や黄色にいろどられていた 金丸のパレットが いつの間にか 白一色になった 白い絵の具で 美しい雪の花を描くんだね
まるで 音のしないサイレンを/山々にこだまさせているみたい/この表現に感心しました。
とぎ澄まされた感覚にひかれます。
佳作
音を聞きたい 江尻 彩奈 私は音が聞こえない もし、音が聞こえたら 春の風のそよぐ音を聞きたい サラサラ 私は音が聞こえない もし、音が聞こえたら 夏の海でうちよせる波の音を聞きたい サブーンザブーン 私は音が聞こえない もし、音が聞こえたら 秋の落ち葉をふみしめる音を聞きたい カサカサ 私は音が聞こえない もし、音が聞こえたら 冬のもちつきの音を聞きたい ペッタンペッタン 私は音が聞こえない もし、音が聞こえたら 父や母の声を聞きたい 永遠に聞くことのできない声を
最後の4行で選びました。まわりの大人たちも、あなたのご両親の声をカタカナで表現できなかったのです。顔も、動く口元もみえている、でも声が聞こえない。
夢の中で、あなたはどんな音を思うのでしょう。
まめまき 島 拓也 今日、 学校で、 まめまきをした。 ぼくのおいだすおには、 かたづけしないおにだ。 まめをおもいきりなげつけられたから、 おには、 もうにげていったと思う。 おには、 どこから心の中に入ってくるのだろうか。 遠い、遠いところから 来たのだろうか。 それとも、 人の心からうまれたのだろうか、 そんなことが知りたい。
節分に、自分から追い出したい色々な鬼を作って、おたがいに豆をぶつけあったのでしょう。
その鬼が、どこから心の中に入ってくるのだろうと考える。
心の中から生まれたのだろうかと考える。そのやわらかな思いがすばらしい。
かみなり 松井 位吏可 かみなりが光った かみなりが鳴った ゴロゴロゴロゴロドッカーン びっくりした 写真をとったみたいにピカッと光った ドッカーンと大きな音がなった 「おちた」 と友だちはいった 「かみなり、かみなり」 と友だちはうたった わたしはわらった またかみなりが鳴った 「ドッカーン、こらー遊んでいるな」 朝学習のときにかみなりがいかった
「かみなり、かみなり」/と友だちはうたった/この2行がとてもすきです。
リズム感があって、子供たちの表情や様子が、生き生きと伝わってきます。
最後のオチも、とてもいい。
はるまきだいすき 北村 麻紀 うちは、きゅうしょくのはるまきが だいすきです。 くるんとまるまったおうどいろ。 かぶりつくと 「チャリッ」といいおとがします。 こうばしい、においがします。 こころのまんなかが、 はるまきのえになりそう。 だいすきなばあちゃんにも たべさせてあげたいな。 うちのたべるのがまんして、 ひとつだけ おうちにもってかえりたいな。
「チャリッ」という音。こころのまん中が/はるまきの絵になりそう/はるまき大好きの気持ちが、よく伝わります。
雪 肥田野 優希 何だか今日は たえまなく雪が降っています 全部全部を うめつくしています この雪が あなたの心にも降って あなたの心もうめちゃったのですか だったら 春になったら溶けて また一緒に 笑ってお話できますか
全部全部を/うめつくしています/この部分にひかれました。
あなたのやりきれなさ、せつなさ。心の中をうめつくす雪が、表しています。
おとなになった心に降る、雪の姿です。
波 中原 甲一郎 ぼくがであった波は、 ザバーンという音やった。 ぼくは砂を盛り上げ、堤防をつくった。 山をつくった。 川をつくった。 波がすべてをこわしていく。 でも、 波は人を温和にしてくれる。 ぼくの心もやすらいだ。 こわされてしまったのに、 やすらいだ。 波はふしぎや。
海の波をザバーンという音で感じました。
波に洗われていて、あなたの心はやすらぎました。波の力は不思議です。
わらいキノコ たべた 坂上 由奈 ウフフッ ウフフッ きょうは おでかけ ウフフッ パパのおみせへ ウフフッ ママとおしょくじ ウフフッ エヘ エヘ うれしいな かんごふさん ゆなのごはんに わらいキノコ いれたでしょ
パパが働くお店は、レストランでしょうか。
お父さんとお母さんにつつまれて食べることが、何よりの幸せ…。
音がく大すき 土田 ひびき 音がくは 音があるから おもしろい いろいろな音があって おもしろい べんきょうの中で 一ばん音がくがすき だって ふしぎな音がきけるんだもん きれいな音もきけるんだもん おうちでも いっぱい音がくやってるよ
たくさんの種類の色があるから花は不思議。花が大好き。
そういわれるとわかるのですが、「音はいろいろあるから大好き」といわれて驚きました。
そういう感じ方も、あったんだ…。
わらってる 牧岡 亜実 ある冬の日のこと おじいちゃんがおさけをのんでいった。 「じいちゃんとばあちゃんどっちがすきだ?」 「どっちも」 「じいちゃんとばあちゃんどっちか一人えらべ」 「しょうじきにいいなさい」 「うーん……」 「おじいちゃん」 「そうかじいちゃんうれしいぞ」とわらってる そして一年 「おじいちゃんさむくないかな?」 おそらのうえでわらってる。
おじいちゃんのこと、いつまでも思い出してあげてください。うれしそうに笑っています。
ゆき 河野 早耶 きょう、学校にいったら、 グランドがゆきだらけ。 わたしはだれもふんでないところで、 かおのスタンプをおしたよ。 かおのあとがついたよ。 わたしの口のまわりに ゆきがついて サンタクロースになっちゃた。
雪国の子なら、誰でも1回は本当にしてみたことがあるでしょう。
しないではいられない気持ち、私も思い出しました。きれいなきれいな雪です。
竹よ 南部 光迅 すらーっ、 すらーっ、 天を突き 一日ひとふし伸びる竹。 照りつける光を力に替え 今朝またこんなにも高みをました、 竹よ。 ざわわ、 ざわわ、 天を混ぜ ひと晩すがら騒ぐ竹。 嵐の闇をしなやかさに替え 今宵またこんなにも凌ぐ力をました、 竹よ。 16の夏、 そんなにも強い君を私は羨み 君を仰いだ。 そして今、 秋の訪れとともに 君は深く深く根を伸ばし 凍える日々の過ごし方を私に告げる。 竹よ、 長い眠りを貯えて また伸びろ。 命の強さを仰がせてくれ。 竹よ、 春が来たなら。
竹の姿には、私たちが教えられるものがあります。まっすぐさでしょうか。
がまん強さでしょうか。無言の生命力でしょうか。
自然界のさまざまな姿に、私たちは生き方を学びましょう。
チャレンジ 堀田 有未 どんどん木をのぼる どんどんのぼって一体最後は どうするのだろう さきっちょはみえないし 困るばかり のぼるだけのぼっておちたらどうする 不安でくたびれて木のまたでやすむ やすんでのぼって上をみる 一体何がしたいのだろう ときどき手がすべる 何があるかも知らないところへ ひとりで行くなんてバカだろうか 木からとびおりる勇気はない ずっとやすんでいたくはない たかくとおい 果てない木
こういうメモを残しましょう。心のスケッチをくり返しましょう。自分の姿が見えてきます。
大すきなおかあさん 計良 大輝 いっしょにねたよ あたたかいよ よくねむれるよ クッキーをつくったよ はーとのかたちだよ あまくておいしいよ せえたあもあんでくれるよ 白とこんのしましまだよ かっこいいよ おきに入り
私にも、こう思った日がありました。この詩を読んだ人は、誰もがほほえみます。
思い出します。 選評 むずかしいこと、かんたんなこと。その2つの考え方が、あなたの心をたがやして、あなたを大人にしていきます。
気持ち 渋谷 未紗 人を 好きになるのは むずかしいことだ 人を きらいになるのは かんたんなことだ 人の いい所を見つけるのは むずかしいことだ 人の 悪い所を見つけるのは かんたんなことだ 人の気持ちを 考えるのは むずかしいことだ 自分のことばかり 考えるのは かんたんなことだ 人はみんな 気持ちがあるんだから 自分らしく 生きてかなきゃいけないんだ
むずかしいこと、かんたんなこと。
その二つの考え方が、あなたの心をたがやして、あなたを大人にしていきます。
森の奥 長田 直樹 森の奥へ あるいていく。 キラキラ 輝いているチョウが ゆったり 飛んでいる。 もっとむこうに 川が 流れてゆく 音を たてながら 木も カサカサ……と ささやいている。 草の上には 光のすじが 風に ふかれて 春の音を たてている。
不思議な、でも本当に見えてくる景色です。歩いて進んでいくのはあなた。
この森が、目をつぶればあなたの心の中にあります。
入選
そうじき 内山 彰人 そうじきは、 はらぺこな人みたい。 毎日毎日 そうじきは、 ゴミを食べてばかりいる。 そうじきのスイッチをいれると、 音がでる。 ガオー!と、 きょうりゅうが くるみたい。
美しさ 江口 紗代 この世になくならないモノなんてない 生命はいつか 枯れていってしまうから 誰かが、それを どんなに大切にしても 守ろうとしても いつか枯れてしまう だから生命は 少しでも永く生きようと 『努力』をする その『努力』をしている時の 真剣さは・・・ 苦しむ姿は・・・ 一生懸命さは・・・ 不安に満ちた心は・・・ 何かを乗り越えたときの 喜びに満ちた 感激の笑顔は・・・ とても美しいと思う
うまのおやこのたんじょう 小野田 陽一 やっとおわったあ うまのおやこのたんじょうだ おやうまは百本の くるくるぼうでつくったよ どう体とあしをつくったよ くびとかおをつくったよ たてがみとみみもつくったよ はりがねをくるくるぼうの 中にいれてまげていくよ それをくみたてていくよ おもったより大きかったよ でも、一とうじゃあ さみしいよ 子うまをつくろう ほそいくるくるぼうで五十本 ちっちゃい子うまの たんじょうだ おやこのうまの たんじょうだ ぼくの手から うまれたおやこだ ふーっ おわったあ
私の心を・・・ 小山田 桃子 私の目をあげる。 あなたが幸せになるのなら。 私の口をあげる。 あなたのおもいがきけるのなら。 私の耳をあげる。 想いがあなたにつたわるのなら。 私の心をあなたにゆだねる。 あなたがふりむいてくれるのなら。
お花って不思議 川上 美穂 「あれ?」 「どうして?」 とっても不思議。 花はどうして種より大きいの? 大きくなるひみつを 種のどこかにかくしているの? おしえてお花さん。 お花はすぐ死んじゃう。 人間は長く生きる。 もしかして 人間は少しずつおおきくなる でもお花は すぐ大きくなるから 早く死んじゃうんだろうなぁ。 生きるって楽しいから 一度は時間をかけて成長できたらいいのに とっても楽しいよ!!
ゆき 木澤 知絵美 まだ眠っている 私は誰にも気づかれぬよう そっとドアを開けた 冷たく澄んだ空気の中 まだ薄暗い空から 降っている雪 真っ白な雪 耳をすませば しんしんと音が聞こえてきそうな雪 ただただこの世界にとけこみたくて 私はここに立ちつくしている
私のいる世界 木村 飛鳥 私は木村飛鳥という世界で一人の人間だ 私のかわりは誰もいない 私の見る物は 楽しかったり悲しかったり やわらかそうだったり・・・ いろいろ見るけど 私はたいていの物が好きだ 私のさわる物は やわらかかったり固かったり・・・ いろいろあるけど 私はたいていの物が好きだ 私の聞く音は こわかったり楽しかったり 明るかったり暗かったり・・・ いろいろあるけど 私はたいていの音が好きだ 私のかぐにおいは いいにおいだったりくさかったり・・・ いろいろあるけど 私はたいていのにおいが好きだ みんながみんな好きなわけでもないけど わたしのきらいな物は 私にきらわれたくて生まれてきたんじゃない そう思うとちっとも悪くない 私のいる世界は私がいるから いまあるんだ
文字と絵の本 小林 千秋 あるとき私は絵本を見てた。 そのとき文字がこういった。 「わたしがいなけりゃ意味わからん。」 そしたら絵たちがこういった。 「わたしがいなけりゃ場面がわからん。」 わたしは二つにうなずいた。 文字と絵とがグループ組んで はじめて絵本ができるんだ。 そしたら二人 仲直り。 それから読んだら なんでかな いつもより ずっと楽しいお話になっていた。
おばあちゃんありがとう 近藤 礼子 お兄ちゃんとケンカした 泣きそうになった 泣いちゃおうと思った その時 おばあちゃんが優しく言った 「礼子、自分が悪いと思ったら泣けばいい 自分が悪くなかったら泣くな。」 と、手をにぎってお兄ちゃんの所に 連れてった お兄ちゃんとの話し合いの時もずっと 手を「ぎゅっ」とにぎっていてくれた お兄ちゃんがこわかったけど あんまりこわくなかった 「もぅお兄ちゃんとケンカしないよ。」 と心の中で思った いつもありがとう。おばあちゃん
家 酒井 大輔 家は、とってもおもしろい。 家のまどが顔にみえる。 わらっている顔。 ふつうの顔。 ロボットみたいな顔もある。 ふしぎだけどいろいろあってとてもたのしい。 にらめっこしているみたいだ。 でもずっとまけちゃう。 おもしろくてわらっちゃう。
アリ 正司 晃大 アリは、小さい 虫をはこぶのもひとくろう すの入り口もちいさい 小さいものばかりだ アリと人間をくらべたら 人間は巨人だ すの中は人間にくらべたら 小さいけれども アリにはこれで十分なんだ。 広くて小さいわりあてだ アリは小さいけれども その小さい体で生きている
おまつり 瀧下 昌克 いか焼き たこ焼き お好み焼き まわり一面いいにおい さめつり ヨーヨー 金魚すくい なにがとれるかわくわくするよ 綿あめ ニッキに りんごあめ 去年と同じ味がする
ふじ山 塚本 公玲 ふじ山はきれいだ ふじ山のブルーはきれいだ ふじ山のホワイトはゆきだ ふじ山のギザギザはきれいだ ふじ山のはいいろはかげだ ぼくはちぎりえで ふじ山を作ろう わしをこまかーくちぎって はっていくよ めちゃくちゃむずかしいよ かたに力がはいるよ でもあきらめないよ やっとできたふじ山は 本もののようにきれいだ 作ひんてんに出そう
かみさまの生活 土田 萌 かみさまはね とおくにすんでいるけど 目にみえない こーんなしかくいところに こーんなイスみたいのがあって ごうかなベッドでねるんだよ かみさまはおそくねるとおもうんだ おそくまでなにをしているかというと てるてるぼうずをつくって おねがいしているの かみさまはね りんごとみかんをたべて それでね きらいなたべものは くりなんね かみさまには けらいがいるのね なん人いるかというと 五人いるの かみさまは一人 そしてね かみさまは こころのやさしい人なの かみさまは 白い手と白い足をしてて ふくは白くて むねにお花がついている 赤いつえをもっているのね そのつえは まほうのつえで こまったときにつかうの かみさまはね 女の人 かみさまの心の中にはね しあわせいっぱい つまっているのね かみさまはね おとうさんとか おかあさんとか おじいちゃんとか おばあちゃんとか こどもとか いないのね かみさまは ちっちゃいかわいいハムスターを そだててる そしてね そのハムスターに まい日 ひまわりのたねのえさをあげてる かみさまはね まい日 こんなくらしをしている
まど 登坂 恵美子 図書室のまどからは 車が見える いま赤信号で車がとまった 四階の廊下のまどからは 山が見える 雪がつもっていてきれいだ 病室のまどからは 木のてっぺんが見える とまっていたとりがとんでいった まどからは いろいろなものが見える でも・・・ 病院のどこのまどからも 私の家は見えない
うさぎのぬいぐるみ 長坂 恵奈 うさぎのぬいぐるみが かわいい やわらかくて あったかくて ねむたくなる うさぎのぬいぐるみと 話したいな 生き物のうさぎみたい だくとおちつく だくと はらっぱであそんで いるような においがする
お父さん 中島 みづき いつもより帰りの遅い父のことが気になり なんどもなんども時計を見る 父は四トントラックの運転手だ 毎日発泡スチロールを運んでいる 「携帯にかけてみようか」 「運転中だと危ないよ」 「遅いねえ」 みんな心配しながら父の帰りを待つ 「朝も、はやかったでしょ」と、母にきく 「五時前に出ていったんだよ」 「朝ごはん食べたの」 「車の中で食べられるように、おにぎりをもっていったよ」 そういえば、父と朝ごはん食べたことがしばらくないなあ 朝早くから働いている父 それなのに休みの日は 必ず遊びに連れて行ってくれる やさしい父 運転はだれよりも上手だ だから、遅くても大丈夫だよね お父さんだもの
「なんてなくの?」 荻口 なつみ 「なっちゃん、 ネコは、 なんてなくの?」 「にゃ‐お」 「じゃあ、 ゾウさんは、 なんて なくの?」 「ゾウさんは 泣かない。 微笑う」
ひまわり 樋口 香織 ひまわりはいつも お日様とお話をしている 暑い夏の日に うーんとせのびして いっしょうけんめい話をしている お日様にとどくように 大きな大きな葉を広げて 話しかけている いったい どんな話をしているのだろう。
命のたん生 藤田 有貴 メダカがうまれた 1cm以下の 小さなメダカ わたしたちといっしょに生きている 一生懸命生きようとしている これからどんなことがあろうと 一生懸命生きる 形はちがっても 生きるものすべてが 「生きよう。」と思うのは けっして変わらないと思うな
家族の植物 牧野 佳代 おじいちゃんは、松の木 松の木は、いつも堂々としていて勇気いっぱい おばあちゃんは、チューリップ いつも笑っている笑顔のすてきなチューリップ お父さんは、けやき うちを支える力のある大きなけやき おかあさんは、コスモス やさしくほほえんでみんなを見守ってくれる優しいピンクのコスモス お姉ちゃんは、ヒマワリ いっつも元気。真夏の太陽のようなヒマワリ 私は、サクラソウ 小さくて、かわいくて、私の大好きな花だから 私の家族はフラワーガーデン
ゆき 松井 勇生 ゆきが 土にふとんをかけるみたいに おりてくる。 人間には ゆきは、つめたいけど、 土は、 あったかいなっていうみたいに ねている。 人がゆきどけをすると 土は、さびしそう。
秋 見つけた 松本 のぞみ 秋 みつけた 栗 落ち葉 あっ そうだ オレンジ色の トンボ 一ぴき
ポロリ 矢島 竜也 あんなことを あんなことをいうなんて 口からポロリとでたんだ。 そんなことおもってないのに 大切な 大切なひとなのに 口からポロリとこぼれおちた。
鏡のような水たまり 山本 勇基 晴れた日 学校の登校途中 小さな水たまりを見つけた 太陽の光をたくさんうけて ぴかぴか光っている 外の世界が そっくり入ったように 水たまりの世界に映っている 電信柱 流れていく雲 走っていく僕 本当にそのまま映っている 小さな小さな水たまり 鏡のような水たまり
髪の毛 横井 良憲 床屋のおじちゃんが死んだ 僕の髪をいつも切ってくれる 床屋のおじちゃんが死んだ びっくりした 「死ぬ」なんて いつもおびえていたけれど 実感なんてしていなかった おじちゃんも死ぬんだなって びっくりした おじちゃんに髪を切ってもらってから いったいどれくらいたっただろうか 床屋のおじちゃんが死んだにも関わらず 僕の髪の毛はぐんぐんどんどん伸びる おーい、もう切ってくれる人はいないんだぞ それでも僕の髪の毛は おじちゃんがいた頃とかわらず伸びる まるで「死」なんかに負けないぞ そう言ってるみたいに ぐんぐんどんどん伸びている
心 吉田 詩織 心って不思議だよね 悲しい時 うれしい時 そのままにあらわれる 心がつらくなると 体までつらくなる つらくなったら泣けばいい 気がすむまで大声で泣けばいい うれしくなる時もあれば 悲しい時もある 心って正直だ だからこころなんだよ
雪わり草 吉田 文香 雪わり草は とってもきれい 雪わり草は 学校の山にも さいている むらさき 水色 ピンク いろんな色をして さいている 水色の雪わり草が 好き 学校の山に もっともっと さかないかなあ 水色の雪わり草
たんぽぽ 渡辺 瑞穂 私はたんぽぽ。 春のようせい。 春の種をとどける。 そこに、種がなじめば私は…… そこから、わたげになりまた旅にでる。 春のおとずれをつげれば 私のやくめは終わってしまうの。
第8回矢沢宰賞の審査を終えて
このたびもたくさんの作品を読ませていただきました。私はすぐれた詩に出会うと、人間の気持ちってこんなにも豊かなものなんだ、こんなにもすばらしい発見ができるんだと感動してしまうのです。だから来年も、その次も、選をしたいと思うのです。今年もその感動をいただきました。
自分の心を豊かにするために、皆さん、自然に親しみましょう。私たち一人ひとりがこの自然の一部なんだと感じようではありませんか。あなたが吸っているのはこの空です。飲んでいる水は海や川、雨と同じ水なのです。あびているのは太陽のエネルギーです。木や草、魚や動物たちを生かす力と同じものに支えられて私たちは生きているのです。でも背中をあたためてくれる陽ざしの中に両親の愛情のあたたかさがまじっていると感じるのはあなただけ、人間だけの思いです。発見し、感動し、その時々の気持ちを自分だけの言葉で書きとめようではありませんか。するとあなたの姿が見えてきます。自然の中に生きて感動し、発見し、考えを深くしながら生きている自分が見えてきます。
私は詩を書くために生きてはいません。生きていることがうれしいと感じた時、つらいと感じた時などにその気持ちの中に詩の成分が生まれてきます。それをたくさん集めると詩になります。私の一つの詩を読むと、私が生きたたくさんの日が見えてきます。詩は汗や涙と同じです。一生けん命に生きれば誰にも毎日生まれてくるのです。この文を読んだあなたの生きた言葉を、私は来年もまっています。
- 審査員 月岡 一治
上越市出身。国立療養所西新潟病院内科医長。第6回新潟日報文学賞受賞。出版物に「少年-父と子のうた」「夏のうた」(東京花神社)がある。
年ごとの入賞作品のご紹介
回 | 最優秀賞受賞者 | タイトル |
---|---|---|
第1回(平成6年) | 山本 妙 | 本当のこと |
第2回(平成7年) | 山本 妙 | 災害 |
第3回(平成8年) | 高橋 美智子 | 小さな翼をこの空へ |
第4回(平成9年) | 野尻 由依 | 大すきなふくばあ |
第5回(平成10年) | 佐藤 夏希 | お日さまの一日 |
第6回(平成11年) | 除村美智代 | 大きなもの |
第7回(平成12年) | 徳田 健 | ありがとう |
第8回(平成13年) | 井上 朝子 | おくりもの |
第9回(平成14年) | 藪田 みゆき | 今日は一生に一回だけ |
第10回(平成15年) | 日沖 七瀬 | 韓国地下鉄放火事件の悲劇 |
第11回(平成16年) | 佐藤 ななせ | 抱きしめる |
第12回(平成17年) | 髙島 健祐 | えんぴつとけしゴム |
第13回(平成18年) | 濱野 沙苗 | 机の中に |
第14回(平成19年) | 田村 美咲 | おーい!たいようくーん |
第15回(平成20年) | 高橋 菜美 | 空唄 |
第16回(平成21年) | 今津 翼 | 冬景色 |
第17回(平成22年) | 西田 麻里 | 命に感謝 |
第18回(平成23年) | 山谷 圭祐 | 木 |
第19回(平成24年) | 坂井 真唯 | クレヨン |
第20回(平成25年) | 宮嶋和佳奈 | 広い海 |
第21回(平成26年) | 金田一 晴華 | 心樹 |
第22回(平成27年) | 安藤 絵美 | 拝啓 お母さん |
第23回(平成28年) | 宮下 月希 | 大好きな音 |
第24回(平成29年) | 宮下 月希 | 心のトビラ |
第25回(平成30年) | 阿部 圭佑 | ものさし |
第26回(令和元年) | 上田 士稀 | 何かのかけら |
第27回(令和2年) | 宮下 音奏 | 大好きな声 |
第28回(令和3年) | 横田 惇平 | ふくきたる夏休み |
第29回(令和4年) | 野田 惺 | やっと言えた |
第30回(令和5年) | 舘野 絢香 | 気持ちをカタチに 思いを届ける |