第12回矢沢宰賞

第12回矢沢宰賞

最優秀賞 ポプラ賞

えんぴつとけしゴム   髙島 健祐


えんぴつは書いていく

どんどんどんどんかいていく

あっちへこっちへ走ってく

けしゴムはけしていく

どんどんどんどんけしていく

けしてけしてけしてチビになる

えんぴつはまちがいも

ぜんぜんぜんぜんきにしない

まちがいなんかきにしない

けしゴムはまちがいを

けしてけしてけしていく

まちがいをけしていく
審査員
審査員

紙の上に、自分の意志をもったえんぴつとけしゴムがいます。
二つがお互いを知りつくしていて、どんどんどんどん何かが書き上げられていきます。
紙の上に広がる世界が、生きていて、スピード感があって、楽しく、とっても気持ちがいい。
これからもどんどんどんどん書いて下さい。
同じ言葉をくり返すことで言葉に躍動感を与え、高島君は楽しんでいます。

奨励賞 ポプラ賞

しろいはる   西牧 慎矢


しろいふくをきているやまを

ちかくでみると

キラキラキラキラほうせきのよう

そらをみあげると

ピーヒョロロとはるのこえ

くもからかおをだすたいようが

どこまでもつづくだいせつげんを

ポタポタとかしてゆく
審査員
審査員

冬のおしまいと春のはじまりが重なっている日の雪の山を、「しろいはる」と表現しました。
感性が深く、すぐれています。
おわりの3行は、春が来ている様子を目に見えるほどにとらえていて、感心しました。

自分   川端 美緒


あなたは
中学生になって くつ下をはけない人間を
信じられますか?

あなたは
中学生になって 身長140センチ以下の人間を
信じられますか?

あなたは
中学生活のほとんどを
病院ですごしている人を
不憫に思いますか?

あなたは
人を恐れ 外に出られない人間を知ったら
哀れみますか?

私はそんな
人間です

でも・・・

そんな人間にも
幸せや 希望があったり
家族や 友達の愛情に
めぐまれている事を

信じられますか?
審査員
審査員

でも…とあなたは言います。そして生きていこうとする自分自身の気持ちを、たしかめなおします。家族や友達の深い愛情につつまれていることに気づきます。
せまい考え方をしているかも知れない自分を、他人の目から見てみる。
これはなかなかできないことなのです。

とびばこ   福原 有佑


ぼくは とびばこ
ぼくは ゆうきがないと
とべないよ

スピードをつけてはしるんだよ
バーンとふみきるんだよ
手をまえについて
ピョーンと とぶんだよ

ぼくは いつも
こころの中でおうえんしているよ
(ゆう気を出して がんばれ!)
審査員
審査員

なんてやさしいとびばこがあることでしょう。
「ぼくはいつも、心のなかで応援しているよ」。
このとびばこは、あなたを見守るお父さん、お母さんの気持ちそのものです。
両親の思いが、あなたのやさしくてあたたかい心を育てました。

おかあさん   池内 ことみ


ことみちゃんは
おかあちゃんって よぶの
おかあちゃん、
きょうは いいお天気だねって いうの

おかあちゃんは
いいお天気よって いうの
あしたは さむいよって いうの
審査員
審査員

風や空気の気配で、お天気がわかるのでしょう。
一日一日が、ことみちゃんとお母さんの中で、やさしくやさしく過ぎていきます。
二人にとって、毎日が、大切な一日です。

いえ   河田 篤紀


ぼくんちのいえは ふるい
おかねもすくない
だけど

とんぼは ぼくのいえに
いっぱいとまる
百五ひきくらい
いえにとまる
審査員
審査員

家の豊かさは、そこに暮らしている人の心の豊かさのことなんだなあと教えられました。
とんぼはちゃんと知っていて、住む人の心があたたかな家にいっぱいとまる。
私の家にはどれくらいかと、心配になりました。
河田君は、心も豊かです。きっと頭と肩にとんぼがとまる。

僕は移植に賭ける!   外山 恭平


僕は移植をして治るかはわかりません。
もしかしたら
死んでしまうかもしれません。

けれど、もし移植が成功して
健康になったとしても、
僕が今までこの病気と共に、
障がい者として生きてきた時間。
健康に、普通に生まれてきたら
絶対に見えない世界を生きた16年間を、
絶対に忘れないで誇りに思い、
大事な宝物として、
新しい外山恭平として生きていきたい。

そんな自分に出会えることも期待して、
僕は 移植に賭ける!
審査員
審査員

外山恭平君は「特発性間質性肺炎」の治療のため、肺移植手術を受けようと渡米しています。
日本を出る前に、彼は「忘れたくない16年間」という36頁の冊子を残しました。
その冊子の最後5行を私が行分けしました。心の底からの願いと思いが、私に伝わってきます。募金をして応援したたくさんの皆さんと共に、移植手術の成功を祈ります。

佳作

心   高橋 育子


ほめられると かおがぽっとなっ
てとてもはずかしくなる
そして、うれしさがだんだんでて
くる
その時
心もからだもぽっとする
かんどうすると
心がとてもあったまって 
なみだがでてくる
でも なみだがほっぺたとおる時
そのなみだ あったかい
きっと心であたためられたんだ
審査員
審査員

心は感動する。心は涙を流させ、その涙をあったかくしてくれる。
心は顔 と体までぽっとあつくする。心って何だろう。
その不思議な心を大切にして、私たちは生きていきます。

どうぶつのトランポリン   加倉井 優


ぎゅっ、ぎゅっ、トランポリンの音。
「うふふっ。」
とびながらわらってる。
楽しそう。

足をそろえてとぶところは、
カンガルーみたい。
ペンギンみたい、かえるみたい。
トランポリンの上を
ぐるぐる回って歩いてる。
ひよこみたい、にわとりみたい。

「ああ、おもしろそう。」
審査員
審査員

優さんがトランポリンに乗っている姿を想像します。
「うふふっ」とほんとに楽しそう。
登場するカンガルー、ペンギン、かえる、ひよこ、にわとり。
どれも動きのイメージが鮮やかで、みんな楽しそう。

なくぞ   小林 隆介


だいどころで
弟とゲームをしていた
おちたカードを
ひろおうとして
弟が
いすからおちた
パタンとおちて
うごかない
なくぞ、なくぞ
たよりのじいちゃんは
きづかずに
ふろを
あらっている
審査員
審査員

けがはしていない。驚いただけだ。
そう思った瞬間から始まったお兄ちゃんの弟観察です。
でも、おじいちゃんのかわりに、大丈夫だよって、抱きおこしてやって下さいね、お兄ちゃん。

かわいそうなうこっけい   田篠 美優


こっことないて
かわいい うこっけいだったよ
えさ
ぱくぱく食べたよ


うこっけいのお母さん
しんじゃって
かわいそうだったよ
うこっけいの子ども
もっと
かわいそうだったよ
審査員
審査員

うこっけい(烏骨鶏)は鑑賞用にかわれるニワトリの一品種。
ニワトリであっても母親の死、その体の回りを声もなく歩く幼鳥の様子が目に浮かびます。
その両方の姿を、ちゃんと見てやって下さいね。つらくても。

大切なおじいちゃん   古渕 雄也


おじいちゃんてスゴイ
あまくない土からあまーいいちごを
作っちゃう。
おじいちゃんてスゴイ
山から切り取ってきた木を使って
小屋を作っちゃう。
おじいちゃんてスゴイ
まっすぐなワラからしめなわやぞ
うりを
作っちゃう。
おじいちゃんてスゴイ
屋根や木の上に上がってもへっち
ゃらだ。
おじいちゃんてスゴイ
けがをした時
いたがったり泣いたりしない。
おじいちゃんてスゴイ
おしゃべりではないけれど、
みんなにやさしいから、
みんながたよりにしている。
ぼくは、そんなおじいちゃんの
ふとんに入ってねるのが大好きだ。だっておじいちゃんのにおいは
安心するから。
ぼくはそんなおじいちゃんの
一番弟子になりたい。
審査員
審査員

孫はおじいちゃんを尊敬のまなざしで見ています。
おじいちゃん、長生きしてよかった。一番弟子ができましたよ。
二人とも生活の様子があったかくて、いいなあ。

いのち   長谷川 基


ぼくのからだの
一ばんだいじなもの
いのちは一つしかないから
だいじにするよ

おうだんほどうが
赤にかわるとき
わたったよ
ママにおこられたよ
いのちがなくなったら
みんなにあえないから

いのちは
あぶないことをすると
なくなるかもしれないよ
だからぼくはしないよ
審査員
審査員

(元気で暮らすのよ)。お母さんの願いです。
いつかあなたが、(お母さん、長生きしろよ)と心の中で言う時が来ます。
その時、今日のこの詩を、もう一度読んで下さい。

腹痛   笠原 綾


どう言ったらいいんだろう。
どうしようもなくイタイ。
どうしようもなくさむい。
みんな平気な顔をしている。
私がこんなにイタイのに。
おさまるまで待つしかないの?
そんなことつらすぎる。
ねぇ、どうしたら伝わるの?
このイタミが……。
審査員
審査員

思春期に体験する、さまざまなこころのイタミ。
それを腹痛で表現しています。
成長する時にともなう心の痛みは、感受性が強い人ほど強いことでしょう。

いいわけ   阿部 卓也


ふざけた気持ちで部活をしていた
すると先生に呼ばれた
「何やってんだお前らは」
大きな声が耳の奥まで響く
ぼくの帽子は地面を見つめた
「アイツらもふざけてました」
友達の声が聞こえた
それは同時に
みにくいいいわけにも聞こえた
なぜだろう
自分の口から
自分の声で
「すみませんでした」
そのひとことが
どうしてでないのか
汗でしめった掌を
勇気がわくまでにぎりしめる
少しの時間……
ぼくの目はもう前を見ていた
弱気な帽子をぬぎ捨てて
一つ決意した
この先の人生
たくさん失敗する
でもいいわけだけはしない
そう思って
まるめた頭を
ゆっくりさげた
審査員
審査員

帽子の使い方が印象的です。あなたの、いさぎよさを隠していた帽子。
無言のまま、あなたは丸めた頭をゆっくりさげました。その弱気な帽子をぬぎ捨てて。

わかった   多田 佳介


ぼく、わかった。
初めての入院で。
家族とはなれれば、
どんな人だって
悲しいってことが。
ぼく、初めてわかった。
審査員
審査員

自分が経験してみて初めてわかる。深く、わかる。
家族も、佳介君がどれほど大切だったか、今回手離してみて、わかった。

おとうさん   山下 翔子


おとうさんは
よしふみさん

ひらがなの「よ」は
よしふみの「よ」

かたかなの「ヨ」は
よしふみの「ヨ」

おとうさん
だいすき
審査員
審査員

きっとこの詩を読むお父さんの心の眼には涙。
翔子さんは、お父さんの名前の一文字を見つけただけでお父さんを感じます。
(お父さん、だいすき)とつぶやきます。父を信じきっている姿にうたれます。

空   渡部 将広


なぜ空は青いのだろうか?
なぜ空には、くもがあるのだろうか?

なぜ空に太陽があるのだろうか?
なぜ空にはいろいろものが飛ぶのだろう?

なぜ空は毎日きれいなんだろうか?
なぜ空を見るとなごむのだろうか?
なぜ人は空を見るのだろうか?

だれか空の秘密をおしえてください
審査員
審査員

私たちが青い空を見上げると、心がいやされるのはなぜだろう。
それはこの地上に生きる生命が、遠い遠い昔、あの空のかなたから来たからではないでしょうか。地球上の動物たちが、毎日大きな空を見上げます。なつかしい空を。

ぼくとしと ちからづよさと   三谷 昭人 


ぼく しが にがてだ
しの どこが にがてかって
ちからづよさが ないから
しっかし よわよわしい
しは いくらでも かけるのに
「おいおい あきとー だめだ」
と いいかえす じぶん
ぼくは そうして
ちからづよい しを
きょうこそ かくんだ!
審査員
審査員

詩は作るものでもあるけど、生まれてくるものでもあります。
この詩はちっとも弱くない。自分をはげます明るさと、力強さを持っています。
そして自分への応援歌は、幾度でも力強く生まれてくるのです。

空を飛ぶ 白い雲   田伏 理紗


空を飛ぶ 白い雲になって
毎日町を見ていたい
毎日人を見ていたい
雲になれたら どんな感じなんだろう
楽しいのかな…
悲しいのかな…
私も雲になって雲の気持ちが分りたいな
審査員
審査員

雲の気持ちを知ってみたい。なんてすばらしい発想でしょう。その雲にも、子どもの雲と、おばあちゃんの雲があるかも知れない。発想する能力が、あなたの体を空に浮かべました。さあそこから見えることを、書きましょう。新しく詩 の世界が広がります。

いのち   安達 希生


川は、
人間に利用されるために
あるのだろうか。
森は、
人間にめぐみを与えるために
あるのだろうか。
いや、
川も森も
人間が出現するよりももっと昔から存在している。
川や森によって
人間は生かされているのだ。
魚や家ちくや野菜など
たくさんのいのちが
ぼくの体の一部となり、
ぼくの体の中にうけつがれている。
ぼくのいのちは
だれにうけつがれていくのだろうか。
ぼくは何を成しとげるために
この世に生まれてきたのだろうか。
その答えを見つけるために
ぼくはこれからも
いっしょうけんめい生きていきたい。
審査員
審査員

人間は生かされているのだ、たくさんの命に。これだけで大きな発見です。
そして自分の命は誰に受けつがれていくのだろうと考える。
何を成しとげるために生まれてきたのだろうと考える。
それを知るために、人間は何千年も行き続けているのです。

車椅子バスケットボール   山中 耕大


試合開始のブザーと共に
ボールをドリブルし
ビートを刻み始める
私の鼓動と連動している

小学校の体育の時間
私は車椅子に乗り
体育館のすみで
みんなの笑顔を
見ているだけだった
自分の中の小さな殻に閉じこもっていた

高等部に入学し車椅子バスケと出会った
スピードのあるパス
迫力のあるドリブル
鮮やかなシュート
車椅子同士のぶつかり合い
体育館内の熱い風が私に吹いていた

それから毎日
私は練習を重ねた
ツメがわれたり
車椅子を壊したこともあった

今私は車椅子に乗り
体育館のまん中で
皆の視線をあびながら
ドリブルしている
ディフェンスをかわし三点ラインに止まり
シュートモーションに入る
ボールと
過去の自分を
解き放った
審査員
審査員

車椅子バスケと出会い、今は生き生きと生活している様子が書かれています。
最後の二行に感動しました。(過去の自分を/解き放った)。
充実した心と詩の力の両方がないと、生まれてこない表現です。

入選

ぶらんこと花びら   阿部 楓香


ぶらんこのうえに
花びらが
のっていた
のっていたから
いっしょにのりました
花びらが
ぶらんこから
かぜにのって
いきました
つぎに
ちがう花びら
がきました
その花びらも
おなじことを
していました
ぼくの学校   荒田 優人


えんぴつが うまくつかえたとき
先生から ほめられたとき
字が うまくかけたとき
こたえの上に まるがあったとき
おわりのチャイムが なったとき
おべんきょうは たのしいよ。
わすれものをしたとき
おともだちが しかられたとき
雨で そとにいかれないとき
先生が いないとき
がんばったのに うまくいかないとき
おべんきょうは いやだなあ。
でも、あしたはまた、がんばるからね。
先生 学校でまっててね。
ぼくのおよめさん   五十嵐 佑亮


もしぼくに
およめさんが
くるなら

うれしい
およめさんが
いいな

ぼくが
もりもり食べたら
「わあ、うれしい。」
って言ってくれる人が
いいな

いつも
うれしい顔をしてる人が
いいな
雨   池内 祐未


私は、雨が好きだ。
そっと降りおちる
そらの表情は、
時に泣くことも、
悪くないと・・
私に語りかけているようだから。
私は、雨が好きだ。
夏   石川 浩子


「ドン」
この音が好き。
私の中も
好きって言ってる。
あっ
花開く
「ドン」
ひとりごと   出水 麻依子


私はブランコ
風に揺れて
今日も暖かなお日さまの下、
みんなを乗せて
ユラユラ、ユラユラ

私はみんなが大好き
みんなも私が大好き
今日もみんなを乗せて
空中のお散歩ユラユラ、ユラユラ

みんなの笑い声が
キラキラ、キラキラ
私はとても幸せ
だけど、夕方、
みんなが帰ってしまうと
ひとりぼっち

私はブランコ
いつか、みんなを乗せて
あの高い空の彼方へ
行けるといいな
敵   井上 勇佑


いつか
治療が終わったら
外国や宇宙にふっ飛んで行きたい

治療の時は
「点滴」という大きな敵に
つかまっている
点滴は
どこへ行っても、勝手についてくる
何をするにも邪魔をする
まるでぼくは
くさりにつながれた犬だ

その敵から解放されたら
一番高いゲレンデから
すごいスピードで
滑っているようなカイカン!
だから
その勢いで大きな自由をつかんで
外国や宇宙にふっ飛びたい
赤ちゃん   今井 成輝


八月に赤ちゃんが、生まれた。
女の子だ。
ぼくににていた。
赤ちゃんは、五ヶ月だ。
赤ちゃんは小さくてかわいい。
「おにゃ、おにゃ。」
となく。
見ていると、たべたくなる。
赤ちゃんは、ぼくの手を
「ぎゅっ。」
とにぎる。
赤ちゃんの手は、きもちいい。
足もすごくつよい。
見ていると、
「にこっ。」
とわらう。
かわいくてなきそう。
夜   岩林 幸子


夜は好き
一日の終わりだから…
月が顔を出すから…
やっとゆっくり眠れる…
そう思えるから…

夜は好き
ほっと一息つけるから…
月が輝きだすから…
やっと自由になれる…
そう思えるから…

ああ…もうすぐ太陽が昇る
そうして時間に追われるボクの一日が
また始まるんだ…
空を見ていると…   江部 真由美


空を見ていると
けんかしたあの子に言った言葉が
忘れられなくなる

空を見ていると
あの子に言われた言葉を
頭の中で思い出してしまう

空を見ていると
もうあの子なんてキライッ!て
思ってしまう

でも空を見ていると
どうしてあんなけんかになったのか
思い出してみる

そして空を見ていると
やっぱり自分が悪かったと
思い出した

そして
起きて自分の頭をはたき
あの子の所へ走ってく
どうしてだろう   遠藤 綾乃


どうして花は
冬に
顔を出さないのだろう
雪はこんなにきれいなのに

どうしてだろう

どうして人は
夜に
ねむってしまうんだろう
月はこんなにきれいなのに

どうしてだろう
風   小沢 瀬里香


私の後ろにいるのは誰
ヒューとふく音
髪や服をひらひらと動かす
そう それは、風
強い風
優しい風
涼しい風も吹いている
風は、目には見えない
風はいたずら好き
そして空と友達
人の背中をおしているのも
一緒に走っているのも
曇り空を動かしているのも
花や木の葉を揺らしているのも
桜の花びらを落としているのも風
台風
吹雪
風はいろいろな所に吹く
太陽の日差しと一緒に
木々に風が吹いて
きらきらと葉が輝く
まるで宝石みたい
私は夢みたいな不思議な風が好きだ
もうすぐ春が来るよ   北山 美佑紀


2月は、苦しみがいっぱい
寒さがきびしいね
でも もうすぐ春が来るよ

病気の人が多いね
でも もうすぐ治るよ

受験生の人は苦しいね
でも もうすぐ合格できるよ

失恋した人がいるね
でも すぐ恋人ができるよ

やっぱり 2月は苦しみがいっぱいだね
大丈夫だよ
いっぱい 苦しみがあっても
あなたには 絶対幸せが待っているよ

えっ ほんと?
うん ほんとだよ
じゃあ やっぱり 春が来るだろうね
うん 春が来るよ
減るもの   上村 歩向


えんぴつは減る
消しゴムも減る
インクも減るし
食べ物も減る
みんな減っていくけれど
みんなやくにたっていく
くも   桑原 茉也子


くもはあお空を見あげてる。
あお空はくもをみつめてる。
あお空はくもに、
「まちはきれい。きみもみてごらん。」
とあお空はいった。
くもがみようとしたとたん、
「きみの色はすてきだね。」
といった。
くももいった。
「きみのあおも、きれいだね。」ふたりとも、いいきもちになった。
じしゃく   牛腸 光瑠


じしゃくは 黒ばんに くっついてばかり
まるで黒ばんは お母さんみたい
お母さん黒ばん こもり ごくろうさま
花   斉藤 絢香


花を見ると
美しい
美しい花を見ると
心が
優しくなる
なぜだろう?
一生懸命咲いているからだ
中越地震   高綱 良毅


十月二十三日
中越地方に地震がきた
グラ!
グラ!
ガタン!
震度6弱の地震がきた
「だいじょうぶかあ」
とみんなで言った
みんなぶじでよかった

外に出た
三十分以上外にいた
寒かった
ぼくはずっとふるえてた
みんなこわかったと思う
ぜったいにまたくる
ゆだんはできない
ぜったいに
空き缶   田口 大


空っぽなんです。
今は空っぽなんです。
そのうち誰かが
何かを入れてくれるまで
私は空っぽなんです。
空や大地は満タンだけども
私の中は空っぽなんです。

空っぽなんです。
まだ空っぽなんです。
周りのみんなは
少しずつ少しずつ入ってきてるけど
私はまだ空っぽなんです。
いつかきっと何かを入れたいけど
まだまだ空っぽなんです。

あっ、何かを入れてくれた。
冷たくて凍えそうだけど
なぜか暖かで
でもまだ何だか分かりません。
ドキドキドキドキ
また誰か入れてくれないかな。

まだ誰も入れてくれません。
いつまで待てばいいのだろう。
辛くてせつなくて
でも誰も気付いてくれません。

まだ誰も入れてくれません。
いつまで待てばいいのだろう。
でもいいのです。
もういいのです。
私は空っぽのままで
今は満タンになる夢を
今に満タンになる事を
楽しみに・・・

今は空っぽのままで
空き缶のように・・・
水の中   玉城 翔太


魚の気持ちになってみて下さい
水の中で泳いでいる魚の気持ちを
わずかに感じる川の水の流れを
大きく広がる海の水の中を
つめたくなったり、温かくなったり
何だか気持ちがうれしくなります
水の中で泳いでいる、魚の気持ちに
なってみて下さい。
白い雲   中尾 浩平


青空の中にある 白い雲が
僕は、好きです。
止まってよく見ると、
ゆっくりと動いているけど、
走ったり歩いたりすると、
雲の様子は わからない。
「どうして、雲は、しずかなのかな。」
風の飛行機にのって
雲は 流れていく。
「雲っていいな、自由で。」
「どうして、雲はしずかなの。」
ボーッとしながら見てると、
はっきりと 雲の事がわかるよ。
僕は、ボーッとするのが 得意なん
です。
小学生や中学生の時は、
雲のことをゆっくり見つめたり 考えたりした
ことはないけど、
高校生の今は、
よく 雲の様子が
わかるようになって、
よかったです。
ゆき   庭野 廣樹


ゆきって
つめたいなぁ。
ゆきって
たべてもあじしない。
ゆきって
かぜとともにやってくる。
ゆきって
ふだんはくもにすんでいる。
ゆきって
じめんにしいているじゅーたん。
ゆきって
はくいきもしろくする。
ゆきって
かえるたちのふとん。
ゆきって
きもちいいなあ。
ゆきは、そらからのおくりもの。
よかった   長谷川 弘貴


ママが
ふうせんみたいになった
おこったから

ぼくが
わるい子したの
かたづけしないから

だめーって大きなこえで
いった

ぼくがかたづけしたから
ママは、ニコニコわらった
あー
よかった
あき   廣田 信幸


はっぱ
かれて
かしゃかしゃかしゃって
音が する

ふんだら
かしゃって 音が する
誰でも一度は   二神 達也


「自分だけ悲劇のヒーローぶるな!」
よくドラマとかで耳にするセリフ
障害を持った者に対しての一言

だけど誰だって一度は
「悲劇のヒーロー」になるんだよ
「なるな」という方が無理だろう
「なんで自分だけこんなめに」と
一度は思うんだ

大事なのは
いつまでも「悲劇のヒーロー」でいたまま
じゃ
自分がダメになってしまうということ
それからの人生をプラスの方に考えるか
マイナスの方に考えるかは
自分次第だ
小さなえんぴつ   嶺井 由利絵


一年のころから使ってきたえんぴつ
もう小さくなったえんぴつだった
それでも まだ 使った
折らないように 親指とひとさし指と中指で
持って書いた
むずかしかったけど きれいに書けた
えんぴつは生きているようだった
えんぴつは その後
ちっちゃい えんぴつは どこかへ
行ってしまった
片づけていたら 見つかった
なつかしかった
一年から使っていた
それはそれは なつかしかった
やっぱり片づけてよかった
けずったら まだつかめたので
持っている
涙の檻から希望の道へ   八子 千晴


昔の私は いつも泣いていた
苦しくてつらくて 何度も危ないことをした
なんで 私だけこんなに苦しいの?
私が 生きる意味なんてあるの?
わからなくって ただただ涙をこぼした
そして ここに来た
私はここで たくさんのことを学んだ
私以上に 病気で苦しんでいる人達がいる
私以上に つらい目にあった人達がいる
でもみんな そんなつらいことがあっても
一生懸命 生きている
私は ばかだった
自分一人のことしか見ていなくて
周りを見ようともしなかったんだ
おろかな自分を 反省した
この頃からだった 少しずつ変り始めたのは
少しずつ 学校にかよい始めた
そして たくさんの人達のお世話になった
そして 夢をもった
生きていて よかったと
心から思えた 瞬間だった
今生きていなかったら
夢をもつこともできなかった
今ならそう 思うことができる
あの頃とは違う
今は夢という光に向かって
ただひたすら歩き続け始めている
つらかったときのことも
今の自分になるきっかけだったから
みんなに会って いろんなことを学べたから
今の自分に なれたんだ
「ありがとう」
心から そう言いたい
自分   八木 麻衣子


今まで歩いて来た道を見て
ふと不安になったんだ
まちがいをしていたんじゃないかっ
てもう1回もどってみたいけど
時間は、巻きもどせないんだ
じゃあ
ふりかえってみるよ
笑ったこと泣いたこと
怒ったこと嬉しかったこと
楽しかったこと悔しかったこと
いくつもの道がのびている
でも、やがてその道は
僕の道1本になっていたんだ
何もまちがいなんてなかったよ
だってさまちがいも全部僕の道だったんだ
僕の道は僕にしか歩けない
自分の道でいいんだよ
人とくらべたらまちがいかもしれな
いそれでも僕は
自分の道を歩くんだ
もう何も怖くないよ
妹は新1年生   山谷 里奈


妹は 1年生になるのに
すぐに泣きます
妹は 1年生になるのに
すぐにおこります
自分のしたいことを
はっきり言えないし
カタカナだって
すぐにわすれます

でも私は知っています
妹は何にでも
いっしょうけんめいだから
たとえ結果がでなくても
いっしょうけんめいだから
だから私は妹に
賞じょうとトロフィーを
心の中でおくります。
星の世界   渡辺 美玖


夜星がピカピカ光る
夜、空を見ると

空いっぱいに
星が見える
流れ星がふってくる
空いっぱいの星の世界

朝になると
星は消えてなくなり
わたしは悲しい

夜は
暗くて寒いけど
空いっぱいの星の世界が
わたしは大すき

第12回矢沢宰賞の審査を終えて

 今年度は小学生の皆さんによい作品が目立ちました。でも、小学生の1、2年生は、授業で詩を習うのでしょうか。高学年に対しても、先生はどのように詩を教えるのでしょうか。現代詩という今の詩には、まるで基本の形がありません。つまり指導される先生にも、生徒に書かせようとする詩のお手本がないのです。

 それなのに、1500編以上もの作品が寄せられ、読むと私の心をゆさぶる言葉に数多く出会います。立派にしになっているものが少なくないのです。きっと先生と子どもたちの間に、しっかりした心の交流があったからでしょう。(何でも思うとおりのことを書きなさい…。)教室で、そう指導されている先生のおだやかな姿が目に浮かびます。

 ここに紹介できた作品はほんのわずかですが、応募される皆さんには次に書く詩のお手本になります。先生がわかりやすく教えて下さる私の選評を参考にして、おのおのの詩を深く味わって下さい。

 子は親を見て育ちます。両親や祖父母が作る家庭の空気を呼吸して、心と体がのびていきます。その中で伸びようとする芽の美しさにはっとしたなら、その言葉や心の表情を、大人は書きとめてやって下さい。それがこの詩賞への応募につながるなら、何よりのことです。のび悩んでいたなら、そっと応援してやって下さい。お前はお前でいい、今できることをしようと励まして。

 詩や文章を書くと、今自分が何を考えているのかよくわかります。幼い子が画用紙に自由に絵をかくように、短い文章でもいいから書いてみましょう。そこには、自分の心の世界が見えてきます。その文章からむだな言葉を削ると、詩が生まれて来ます。

 また次回、たくさんのさまざまな作品に出会えることを楽しみにしています。

  • 審査員 月岡 一治
    上越市出身。国立療養所西新潟病院内科医長。第6回新潟日報文学賞受賞。出版物に「少年-父と子のうた」「夏のうた」(東京花神社)がある。

年ごとの入賞作品のご紹介

最優秀賞受賞者タイトル
第1回(平成6年)山本 妙本当のこと 
第2回(平成7年)山本 妙災害
第3回(平成8年)高橋 美智子小さな翼をこの空へ
第4回(平成9年)野尻 由依大すきなふくばあ
第5回(平成10年)佐藤 夏希お日さまの一日
第6回(平成11年)除村美智代大きなもの
第7回(平成12年)徳田 健ありがとう
第8回(平成13年)井上 朝子おくりもの 
第9回(平成14年)藪田 みゆき今日は一生に一回だけ 
第10回(平成15年)日沖 七瀬韓国地下鉄放火事件の悲劇
第11回(平成16年)佐藤 ななせ抱きしめる
第12回(平成17年)髙島 健祐えんぴつとけしゴム
第13回(平成18年)濱野 沙苗机の中に
第14回(平成19年)田村 美咲おーい!たいようくーん
第15回(平成20年)高橋 菜美空唄
第16回(平成21年)今津 翼冬景色
第17回(平成22年)西田 麻里命に感謝
第18回(平成23年)山谷 圭祐
第19回(平成24年)坂井 真唯クレヨン
第20回(平成25年宮嶋和佳奈広い海
第21回(平成26年)金田一 晴華心樹
第22回(平成27年)安藤 絵美拝啓 お母さん
第23回(平成28年)宮下 月希大好きな音
第24回(平成29年)宮下 月希心のトビラ
第25回(平成30年)阿部 圭佑ものさし
第26回(令和元年)上田 士稀何かのかけら
第27回(令和2年)宮下 音奏大好きな声
第28回(令和3年)横田 惇平ふくきたる夏休み
第29回(令和4年)野田 惺やっと言えた
第30回(令和5年)舘野 絢香気持ちをカタチに 思いを届ける