第30回矢沢宰賞

第30回矢沢宰賞

最優秀賞

気持ちをカタチに 思いを届ける   舘野 絢香(埼玉県)


鉛筆を持ち、真っ白な紙に無数の線を描く
筆を持ち、色とりどりのパレットから色を得る
思いのままに筆を走らせる

誰にも邪魔されずにカタチにできる狭くて広い場所
この一瞬に時間をかける
これが私の幸せのカタチ

他の誰にも分からない私の感情を表す
描いた者だけが得られる満足感と達成感
画用紙を見ればまるで色が舞を舞っているようだ
真っ白な紙を自由に私色に染める
それが私の楽しみのカタチ

色を合わせれば合わせるほど黒に近づいていく
私の気持ちも同じだ
気持ちを詰め込めば詰め込むほど負の感情が生まれる
その気持ちをカタチにする
何とすばらしいことだろう
自由に表現できるということは
一人の人生をいろどる一枚の画用紙
この一枚一枚が未来の私へ思いを届ける
審査員
審査員

画用紙という真っ白い紙の上に、自分の思いのまま線や色を走らせる。画用紙は狭いけれど、どこまでも広くひろがる「私の幸せ」の場所でもある。「自由に私色に染める」という表現がすばらしいし、この詩の重要なところでもある。満足感と達成感が表現されている。自分の気持ちを一枚の画用紙の上にカタチにすることは、自分の人生を画用紙という宇宙の上に彩ることでもある。

奨励賞

つたえよう   今井 楓子(群馬県)


なぜだろう 素直になれない
なぜだろう モヤモヤしてため息一つ

いつも口出ししてくる母も
うっとうしい父も
とっても とっても 大好きなのに
自分のためだとわかってるのに
ベットに身を投げ考える

なぜだろう 素直になれない
なぜだろう いつも後かいする
もっとやわらかく接したいのに
たくさん楽しくしゃべりたいのに

イライラする
ウジウジしてる
そんな自分が嫌いだ

最近のくもり空
今の私とにているな
この心が晴れたなら
勇気が持てたなら

心からの
たくさんの
愛と感謝をこめて

「ありがとう」
審査員
審査員

気持ちの上で、素直になれない。「なぜだろう」とくり返し自分で自分に問うてみるけれど、わからない。「いつも後かいする」のだ。自分の行動と考えがチグハグでわからない。素直になれない。青春期特有の気持ちのモヤモヤ。理屈ではわかっていても、どうしようもない。自分の中に閉じこもっていないで、早く抜け出たい気持ち。

でこぼこの私へ   野田  惺(大阪府)


わたしのでこちゃん
好奇心が旺盛
感性が豊か
一度通った道は
写真みたいに覚えている

わたしのぼこちゃん
暗算が出来ない
こだわりが強い
感覚過敏
母の地雷を踏もうが、絶対に
焦らない、急がない
マイペース
これはぼこに入れるべきか、
でこに入れるべきか…

問題児のぼこちゃんと
変わり者のでこちゃん
ぼこちゃんばっかりが気になって
でこちゃんの存在を忘れてしまうことも
あるけれど
ぼこちゃんとうまく付き合えるようになって
「まぁいいか」そう思えるようになったら
「ぼこもでこもぜんぶ私」
心の底からそう思えたら
私を好きになれるかな。

幸せになることを諦めないでよ
審査員
審査員

私の中にも性質のちがう「でこちゃん」と「ぼこちゃん」がいるという。世間で言う「でこ(凸)」と「ぼこ(凹)」かな?性質のちがうものが同じ人間の中にもいるということ。でも、ときに持てあましてしまうこともある。そう、「ぼこもでこもぜんぶ私」ということ。私を好きになろう。こういうユーモラスなとらえ方の詩も大切。

自然と人間   山田 咲希(群馬県)


森の中で音が鳴っている
ざわざわ しゃらしゃら
ザーザー さらさら
ピィーヒョロロロロ

いろんな音が鳴っている
静かで大きな音が鳴っている
魚は水の中で生きている
熊は土の中で眠っている
木は日光を浴びている
全部助け合って生きている

空にはわたがしが浮いている
木にはピンポン玉がなっている
湖には飴細工の木がしずんでいる
全部自然の形で残っている

都会で音が鳴っている

ブーン ブロロロ
がやがや ざわざわ
トンテン カンテン
いろんな音が鳴っている

うるさい小さな音が鳴っている
私たち人間
たくさん自然を壊してきた
自然の力で生きているとも知らずに
壊しては後悔し
反省せずに繰り返し
壊しては後悔し
反省せずに繰り返してきた

取り返しのつかないものまで壊してきた
未来は私たちの手で変えられる
悲惨な未来を希望あふれる未来へと
私たちが変えていく

この手でもてる大きな未来へ
暗闇で光る未来へと
審査員
審査員

森の中でも水の中でも、いろいろな生き物の気配がある。みんな助け合って、さまざまに生きている証拠の音が鳴っている。後悔したり反省したりしても、長年それらをたくさん壊してきたのは人間だ。森や水中の生き物たちではない。それを踏まえ、「光る未来」へと変えていくのは私たち人間である。第三節の表現の工夫に注目した。

本   土田 舞斗(新潟県)


本にはいくつもの世界が
閉じこめられている

人は読んでいく内に
少しずつ少しずつ
閉じこめられた世界の中に
入りこんでいく

そうすると
少しずつ少しずつ
人の話す声
木ノ葉が風ですれる音が
聞えてくる

空に浮かぶ空の動き
のびていく影の形も
視えてくる

この世界にはいくつもの本がある
本の数だけ世界がある
新しい本を手に取ると
新しい旅が始まる

これから多くの世界を旅して
自分の好きな世界をみつけたい
審査員
審査員

本には、無尽蔵の世界が閉じ込められていることを深く考えてみよう。ひとりではとても見切れない世界が広がっていることは間違いない。ただ読み進んでいくだけではない、第二節に書かれた通りのことが聞こえたり視えたりしてくる。第三節にあるように「本の数だけ世界がある」。世の中の機器が進もうと、自分なりの世界を探ること。

入選  (50音順)

別れ   アサドーラヒ マハブビアン タニア(群馬県)


そう聞くとなぜかみんな暗くなる
なぜだろう
私にはよく分からない

勿論かなしい別れもあるだろう
死別
恋人との別れ
卒業
自分の過去との別れ

別れから得られるものだって沢山ある
当たり前だったことへの感謝
今よりもっと大切に想う気持ち
出逢えた幸せの再確認だったり
貴方と別れたとき私の心は不安でいっぱいだ

メッセージが来てから速くなる鼓動
「ドクンドクン」
同時にあふれる大量の涙
話せば話すほど私の涙は滝のようにこぼれおちていった
私は思った

「あぁ、これが別れってやつか」
人生で初めての別れ
いろんなものを失い
いろんなものを手に入れた

これが別れだ
十三年しか生きていない
これから色んな別れに出会うだろう
一つ一つの出会いを大切に
そしたらきっといいことがあるかもね
審査員
審査員

いろいろな「別れ」がある。別れは失うだけでなく得られるものもある。「幸せの再確認」だったりもする。初めての別れで大量の涙を流し、いろいろなものを失い、入手もした。

一筋の光   荒木 星奈(群馬県)


暗闇の中にいた
またここか
今日で何度目だろう

どくんどくんと僕の左側が鳴っている
なんでこんなにうるさいの
声に出してみても返事はかえってこない

そりゃそうだ
ここには僕以外の誰もいないのだから
返事なんてかえってくるわけない
そんなことを考えながら
一歩ずつ一歩ずつ
暗闇を歩いていく

いつまで続くんだろう
助けて
その瞬間
暗闇が少しだけ明るくなった気がした
周りをみわたすと
空から一筋の光が降りそそいでいた
その光に向かって歩く

進んでも進んでいる気がしない
その時
一筋の光から一人の少女がでてきた

あなたは誰
そう言って少女はにこっとほほえむだけで答えてくれなかった
ふとした瞬間
少女が口を開いた

あなたは一人じゃない
そう言った
その時
暗闇がまぶしく輝いた

そうか僕は一人じゃないのか
ありがとう大事なものを思いだせた
僕は一人じゃないということに
審査員
審査員

暗闇の中でひとりになると、心臓の音、誰もいない、助けて。一筋の光から少女が出てきて「あなたは一人じゃない」と言う。何かの拍子に孤独になっても、一人じゃないのだ。

思い出の修学旅行   池田 優子(埼玉県)


早朝、駅の待ち合わせ場所へ歩みを進める。遂にこの日が来た。ドキドキと胸が高鳴り、いつになく緊張する。今からはじまるこの行事が一生の記憶に残ることを願って、私は改札をくぐった。

この新幹線に乗れば、昼頃には古都の風に触れられる。私は東京を出発した。
昼下がり、駅の入り口を通り抜ける。パッと開けたその景色に、私は息を呑んだ。まず目に飛び込んできたのは大勢の鹿たち。警戒心なくこちらに近付いてくる彼らを見ていると、歓迎されているようで心が躍った。

ああ、遂に辿り着いたんだ。長い歴史を伝えてくれる都、奈良に。
真下から見上げた五重塔。色褪せても尚、壮麗に並ぶ仏像たち。教科書では感じられない感動が、胸の奥底から湧いて出た。

次なる古都へと進む為、私は奈良を旅立った。
タクシーに揺られて、京都の街を眺める。立ち並ぶビルの間から見えた立派な寺に思わず目を奪われる。古来よりどっしりと構えるその姿は、多くの人々に大切にされてきたことを物語っていた。

人波に揉まれて歩いた三寧坂。涼やかな風鈴の音。鼻孔をくすぐる宇治茶の香り。甘い八ッ橋の味。賑わう街並み。そして、段々と見えてきた清水の舞台。眼前に広がる雄大な自然と、奥に見える街を見ていると、昔からそこに居たような、懐かしさが胸に込み上げる。京都は、今も昔も人々を魅了し、虜にさせる都だった。

三日間は案外すぐに終わりを告げてしまうもので、私はもう京都を発ってしまう。ホテルを出てバスに乗ると、途端に寂しさが込み上げる。しかし、ここで過ごした楽しいひと時は忘れることはないだろう。沢山の思い出を背負って私は京都を出発した。
審査員
審査員

関西への修学旅行の思い出が緊張感をもって書かれはじめている。すぐに「鹿たち」が現れるのではなくて、車中の楽しい様子や奈良での観察もほしかった。京都まで欲張った。

たんぽぽ   大井 美糸(山梨県)


私の人生はたんぽぽのようだ
ふわふわと飛んでいく

どこへ飛んでいったって
いつしかその場になじんでいる

ふまれたって
わたげを飛ばして咲いている
いつしかその場になじんでる

たんぽぽは新しい出会いいっぱいだ
沢山の場所へ飛んでいって
新しい人に出会う

私の人生はたんぽぽのようだ
審査員
審査員

ふわふわと飛んで「その場になじむ」、風が吹くまま、なんと自由なんでしょう。そこに「新しい出会い」を求めている。あれこれとむずかしいことにこだわらない。それも人生。

神田祭   岡㟢 心春(千葉県)


ピッピッ 「わっしょい」
ピッピッ 「わっしょい」

まどの外から聞こえてくる 大きなかけ声
黒い服にそでを通し 深緑色のはっぴをはおる
たびをはいて 外に出ると

ピッピッ 「わっしょい」
ピッピッ 「わっしょい」

さっきよりも 大きなかけ声がひびく

白いはっぴを着た人達が
「わっしょい わっしょい」

オレンジのはっぴを着た人達が

「わっしょい わっしょい」

色とりどりの はっぴを着た人達が金色にかがやくおみこしをかついで
次々と通りすぎていく

同じはっぴを着た人達を見つけ 満員電車の中を歩くように 人にもまれて進んでいく
近くにいくと しかいが開け 私のせより高くかつきあげられたおみこしが 目の前に現れた。

おみこしの前に行き 男の人にだきあげてもらう
かつぎぼうに足をのせると 高くて足がすくむ
下を歩く人達が 私の足をギュッと支え
私は前をむいて立ち上がる

ピッピッ 「わっしょい」
ピッピッ 「わっしょい」

会場全体からわき出るような熱気に包まれる
せんすを両手に持ち 大きくふる

笛の音に合わせ 私はひときわ大きく声をあげた

ピッピッ 「わっしょい」
ピッピッ 「わっしょい」
審査員
審査員

はっぴを着て、外の「ピッピッ わっしょい」の祭りのにぎやかな声にもまれて行く。おみこしに乗せてもらう。神田祭のにぎやかさが作者を高揚させ、賑わいも伝わってくる。

笑顔   岡野 琴音(群馬県)


笑顔には
たくさんの力がある

たとえば
あいさつをする時
友達と話す時
一瞬でも
クシャッという笑顔を見ると
自分も相手も笑顔になる

誰かが笑顔だと
とても元気づけられる

もし 何か不安な事があっても
誰かが笑顔で声をかけてくれたら
少し気持ちがかるくなると思う

また 笑顔は
人を幸せにする

あわのような雲のある晴れた日
自分が少し笑っただけで
すごく喜んでくれる人がいた

そのとき
笑顔にはとてもすごい力があるのだなと思った
少し笑顔になるだけでも
誰かを助けられる気がする
何かになやんでいる人を
救える気がする

そう思った
だからどんな時でも
笑顔でいようと思った

笑顔を大切にしようと思った
審査員
審査員

笑顔の重要さをテーマにした作品。笑顔のもつ力、自分も相手も笑顔が大切ということ。笑顔が笑顔を呼ぶ。とても元気づけられる。「どんな時でも/笑顔でいよう」という心。

うちの犬はサスケ様だ   笠倉 望夢(奈良県)


うちにはサスケというオスの犬がいる

その犬の見た目はつぶらな瞳で尻尾がキュート少し小さい
 それにめちゃくちゃ可愛いいのだ

だが見た目がそうでもその犬には裏がある
 それは怒ると歯をむき出して顔が恐ろしくなる
 その上チーターそれか風のような速さの足を持っている持ち主なのだ

 だがやんちゃで元気で可愛い顔して恐ろしい裏があっても可愛いのだ
 そう家にいる番犬何よりも可愛い

 その方こそサスケ様なのだ
審査員
審査員

うちの犬は可愛いオスの犬だけれど、怒ると顔が恐ろしくなる。チーターか風のようにも速い。でも、元気でめちゃくちゃ可愛いのだ。「サスケ様」として可愛がっている様子。

バス通学   川端 愛莉(熊本県)


私は毎朝バスに乗る
朝早く起きてバスに乗る

学校までは乗り換えて一時間半
登校するだけで疲れてしまう

眠たいのを我慢して毎日毎日バスに乗る
でも
初めて一人でバスに乗った時は楽しくて
一人でできたことが嬉しくて
時には疲れる日もあるけれど
盲学校の先生や先輩たちは面白い

中学校の時は
保健室に行ったり早退したりしてたけど
今は
毎朝バスに乗って皆勤賞

盲学校は人が少なく静かだけど
みんな賑やかで
みんなが私を知ってくれている

私は思う
じゃあ今日もがんばるか
今日も私はバスに乗る

どんなに早く寝ていても
やっぱり朝は眠たくて
それでも行きも帰りもバスに乗る

そんな私に私は言いたい
お疲れさま
審査員
審査員

毎日通学バスに乗る。疲れることもあるけれど、皆勤賞だ。朝は眠いけれど、学校は楽しいから「今日もがんばる」。バスに乗って通学する自分に「お疲れさま」と言いたい。

今と昔   菅野 剛成(群馬県)


夏の夜
何度も聞いた
蛙の鳴き声

ゲコゲコゲコ
何重にもなり大きく大きくなっていく

眠れなくなり苛立つ僕
そんな夜のオーケストラ

今年はなぜか聞こえてこない
天井見上げ考える僕
去年まではあった田

今は家が建っている
原因を知った僕
その瞬間
二つの感情込み上げる

一つは喜び
二つは寂しさ
今後はゆっくり眠れる

それは逆に
寂しさでもあった

昔からの
僕にとっては子守唄
やっぱり聞きたい
夜のオーケストラ
審査員
審査員

夜の蛙の鳴き声はオーケストラのようだけれど、今は聞こえてこない。その原因に対して「喜び」と「寂しさ」の感情がこみあげてくる。でも、昔からの「子守唄」を聞きたい。

虹   神戸 天飛(神奈川県)


無垢な子供は虹の美しさにうっかり負ける
そして忘れられなくなる

虹の橋を渡った犬は空を見上げて虹を待つ
虹と出会えたら橋の向こう側の飼い主を懐かしく思い出す

がめつい大人はお金が欲しい
虹を見たらお金をねだる

ニジマスは虹に憧れている
水に映った虹を食べると虹色になった

空は虹が出ると自分が変色したと思ってオロオロする
そして急いで消そうとする

虹の大きさは一つではない
一目で分かる大きい虹もある
小さな欠片の虹もある

でもどんな大きさの虹も弧の形をしている
弧は平等だ
大きさによって弧の価値が変わる訳ではない
弧は揃うと円になる

どんな小さな弧も誰一人欠かせない
円になると大きな力を持つことができる

でもそれと引き換えに弧は曖昧になっていく
そしていつか知らないうちに自分が弧であることを忘れてしまう

弧が一人逃げた
このままでいたい

空に丸い虹を見つけた
指先で虹の一部を隠して見る

弧の沈黙が聞こえた
そして虹は消えた
そこにはもう何も無い
審査員
審査員

虹を見上げながらいろいろなことを思う。子どものこと、犬、がめつい大人、ニジマスなど。「自分が変色したと思ってオロオロする」空は独自な見方だし、弧と円もおもしろい。

祖父のぬくもり   木村 夏蓮(群馬県)


わたしがねているとき
わたしが遊んでいるとき
わたしが食べているとき
どんなときでも側にいてくれた

ポカポカとした昼
日なたぼっこを一緒にする
ごつごつとした大きな安心感のある手で
わたしの手を包み込む

わたしの心もポカポカする
トコトコ
公園に一緒に行く
足が悪いので一緒には遊べないけど
ニコニコ笑っている

家族みんなで夕食を食べていると
わたしにだけむいた果物をくれる

わたしがもらうと
太陽のように笑う

そんな身近な人が
とつぜん命を落とす

ごつごつした手を
わたしはさわる
ひんやりと冷たく
でもぬくもりを感じる

夏休み
祖父母の家に行く

仏だんに折ったウグイスに
「ありがとう」とつぶやく
審査員
審査員

とてもやさしかった祖父の思い出あれこれ。どんな時でも、そばにいてくれたし、足が悪いのに公園にも一緒に行ってくれた。とつぜん命を落とした人のぬくもりだけが残った。

泳ぐ鮪   坂本 梨紗(東京都)


止まるな鮪
止めるな泳ぎ

いつでもどこでも
進み続ける

大きな岩があったって
小さな魚に囲まれたって
どんなときでも
進み続ける

止まるな鮪
止めるな欲望
審査員
審査員

鮪は海洋で泳ぎをやめないと言われている。大きな岩があったり、小さな魚に囲まれることもあって大変だろうけれど、鮪は泳ぎつづける。人間もへこたれてはいられない。

輝けない僕   佐藤 拓弥(群馬県)


僕はイワシ
群れとはぐれたあの日から
輝けなくなったイワシ

ポワッ
スイッ
今はただ一人
海をさまよっている

何も考えずに
ポワッ
チャポッ
スイスイッ
ただよう中で不安になった

多くの出合いの中で
自分が落ちこぼれなのではないかと

しんしん
しんしん

僕の心は冷たい雪で満たされた

しんしん
しんしん

群れと再会した
僕の心は暗いままだ
仲間はそれに気づき
君は誰よりも輝いている
と言った

僕は嬉しくなり 笑った
キラキラと
輝くように

僕は 決意した
この輝きを忘れないことを

僕はイワシ
今日も昔も輝き続けるイワシ
審査員
審査員

群れからはぐれてしまって、ひとりぽっちのイワシ。落ちこぼれではないかと不安になる。群れと再会して「誰よりも輝いている」と言われ、輝き続けることに。人も同じこと。

風りん   清水 花穂(新潟県)


 風でゆれる風りん
風にのりながら、リーンリーンと音がなる
気持ちいいなあ昼ねをしながら、風りんの音を聞くことが。

 風でゆれる風りん
きれいだなあ、ひとりひとりのこせいがある、金魚の絵が。

 風でゆれる風りん
気持ちよさそうだなあ、まどにかざられて
風にふかれながら、しずかに音がなることが。

 空に風りんがかざられて風がふいたとたんリーンリーンと音がなればいいのになあ
審査員
審査員

風りんのリーンリーン鳴る音が心地よい。風りんも金魚の絵もきれい。風にゆれる風りんが気持ちよさそうに見える。さらに飛躍して「空に風りん」という想像がすばらしい。

人生   白石 真子(新潟県)


人とは何かのきっかけで出会う
いろんな人々がいて
それぞれ性格も違う
そして人生も違う

人はお互いに影響し合っている
時には衝突し感傷的になり
その一つ一つが
互いを成長させる

人はとても感情的な動物だ
喜び 怒り 哀しみ 楽しみ
さまざまな感情が心を揺りうごかして
人生をつくっていく

人生はジェットコースターだ
ひとりひとり 速さ かたちが違う
波があり 移り変わっていく
そして終点がある

私はよく人と衝突する
なぜだろうか
その葛藤が私の心を変化させ
ジェットコースターの道ができていくのだろう
審査員
審査員

「人生」と、大きくかまえたけれど、人はいろいろいて、その出会いこそが人の世であり、人生の違いもあるだろう。それを作者はわかっていて、ジェットコースターが登場。

不思議ながびょう   鈴木 大賀(茨城県)


がびょう

遠くから見た
「明るく光った!?」

光を反射し、かがやいている
まるで月のようだ
審査員
審査員

小さな光を、遠くからよく見つけました。遠くからでも、画鋲は光を反映して光って見える。その輝きを「まるで月のようだ」と、ロマンチックに比喩でとらえたこまやかさ。

ちいさなうちゅう   鈴木 佑奈(千葉県)


私の心は小さな宇宙だ
どんな形をしているのだろうか
どんな色をしているのだろうか

宇宙は丸い形をしていると思うから、
私の心も丸いだろう

しかしまだ、完全な丸ではない
たのしいこと、
かなしいこと、
うれしいこと、
つらいこと。
交互にやってくる日常が、
私の心の形を変える。

ときには四角形
ときには水のようにベチャベチャと
ときには太陽に焦がれてまっさらになって
ときには見えない何かに押しつぶされる。

目まぐるしく変化する時間そのものが、
私を大きく、つよく、未来へ導いてくれる、
ような気がする。

心は見えない
心は聞こえない
心は、さわれない

だけど、なによりもつよく、やさしく
そして、あたたかく。

ねがいは、いつか朝をこえて、
私の宇宙へとやってくるでしょう。
審査員
審査員

心が「小さな宇宙だ」ということは知っているが、どんな形や色をしているのか、わからない。まだ完璧ではないだろう。見えないし、聞こえないし、さわれないが、いつか…。

ママずるい   髙橋 京雅(新潟県)


ママずるい
ママ料理うまくていいな

ああママずるい
ずるいずるい

ママずるい
ママ姉妹で仕事してていいな

ああママずるい
ずるいずるい

ママずるい
ママ運動神経高くていいな

もうママずるい
ずるいずるいずるすぎる

ママずるい
ママ仕事返りに腹が減ったら弁当用のからあげ取って食べていいな

ああもうママずるすぎる
ずるいずるいずるすぎる
審査員
審査員

題名がおもしろい。この「ずるい」は逆説なのだろう。なぜなら、すぐ後ろの行に「ママ……いいな」とくり返し羨んでいるのだから。おしまいの「ずるすぎる」のくり返しも。

アメリカ研修   田中 桃華(熊本県)


いよいよ出発の日
出国審査を終えて
いざ アメリカへ

異国の地で待っている 様々な出会い
期待と緊張で 早まる鼓動・・・

中学校に上がって最初の英語の授業
「英語が話せると世界が変わるよ」

先生の一言で私は目覚めた
英語の歌や文章の暗記
ユーチューブにある様々な情報収集
英語の授業も楽しくなった

昨年応募した海外研修
まさか合格するなんて・・・

いくつかの国内研修を終え
この夏 海外研修のスタートだ

憧れていたアメリカ
待ちに待ったこの日がやっと来たのだ

想像以上に広大な土地
予想を超えたボリューミーな食事

固定されたホテルのシャワーに
手が届かない私・・・3661098 

予想外の数々の出来事
これも旅のお約束か

訪れたオハイオ州立盲学校
誰もが堂々と「私は・・・」
話し出す

日本とは違う人の個性
優しさ満開 ホームステイ先のホスト夫妻

様々な人との出会い
今までの自分を変えてくれた

これからの私
この経験を生かして
積極的に自分らしく生きていこう
審査員
審査員

アメリカ研修の緊張感や意気込みが伝わってくるようです。個性のちがう人との出会いや予想外のこともあって、大変な苦労も多いのでしょう。それらの経験を生かして行こう。

おおきく そだって   たなむら りほ(新潟県)


あめのつぶつぶ すいかにはいれ
ぴちゃん ぴちゃん ぴちゃん
あかーくなれ あまーくなれ

あめのつぶつぶ すももにはいれ
ぽとん ぽとん ぽとん
きいろくなれ あまーくなれ

あめのつぶつぶ にんじんにはいれ
しと しと しと
おれんじになれ あまーくなれ

あめのつぶつぶ めろんにはいれ
ぼてん ぼてん ぼてん
きみどりいろになれ あまーくなれ
審査員
審査員

くだものにふる雨に「あまーくなれ」と、おうえんしている様子がいかにもかわいい。「ぴちゃん ぴちゃん」などの擬音も工夫されていていいなぁ。あまーくなるよ、きっと。

僕の旅   登坂 南々帆(群馬県)


僕は旅をする
気ままに のんびり ゆらゆらと

僕の旅は相棒といっしょ
あいつは気分屋で でも 頼りになって
いつも僕を引っ張ってくれる

僕らはいろんな場所に行く
変わっていく景色を眺めながら
相棒は時々急に止まる

何かと思って振り返れば
周りの空気に 身をゆだね
ごろごろしている姿が そこにある

そんな時はそばに行き
僕も並んでごろごろする

太陽の光がキラキラと
まぶしく 優しく 僕らを包みこむ

そしたら僕らは笑い合う
相棒は時々怒っている

それはもう ものすごく
あいつが怒鳴ると 呼応するように
ガッシャーーン
と近くで音がする

僕はいつも怖くなって泣いてしまう
でも 音は鳴り響く
それでも僕らは歩き出す

僕は今日も旅をする
相棒−風がいる限り
この旅はずっと続くだろう

今日はどんな旅になるのだろう
隣の相棒と歩きながら
僕は
雲は
今日も心を弾ませる

僕は空の旅をする
審査員
審査員

詩を読んでいて、僕と旅する「相棒」とはいったい何だろうと、誰しもが考える。作者は最後になって、それをさりげなく明かす。うまい。「心を弾ませ」「僕は空の旅」をする。

みかたをかえて   富田  楓(群馬県)


私達は全てが見えているわけじゃない
映画を見ているときには
全員が同じ方向を見て
席の高さが違って
一目で全てが見えているようにとらえがち

授業中のときには
体をゆらゆらと動かし
黒板を見ようとする人がいて
目をキョロキョロとさせ
周りを見ている人がいる

全員が同じ方向を見ているわけじゃない
席の高さは同じで
一目で全てが見えているわけじゃない

この教室でも
この世界でも
そんなことは五万とあって

だから
体をゆらゆらと動かし
視点をキョロキョロとかえてみよう

私達は全てが見えてるわけじゃないから
審査員
審査員

映画では席の高さがちがい、授業で席は同じ高さでも視点を動かす。一目ですべてが見えているわけではない。体をゆらし、キョロキョロ視点を変えたりする。見方もそうだ。

私の夏   中林 夏野(群馬県)


セット ダーン

走り出し 絶好調
いける いかないと
総体を走り抜ける

ふとよぎるのは
スタート前の出来事

最後の大会 先輩にとっては
心臓がドタドタドタと
かけぬける様に動く

足が動かなくなる
ピト 生温かい物がほっぺたに付く

手 笑っている先輩の
悔しい 何で笑っているの

やってやる 無理に笑顔をつくり出し
スタート場所に立つ

息を整え 足を設置
失格は許されない

緊張なんてしない 笑顔でいく

セット ダーン

走り出し 絶好調
いけ いけ いけ いけ
ゴールに先輩がいる

走り抜けろ
ゴールを通り過ぎてタイマーが止まる

先輩 やったよ
泣きながら
小さく さけぶ

私の夏はまだ始まったばかり
審査員
審査員

「セット ダーン」。総体の大会にのぞんだ先輩と私。緊張感とスピード感がまじり合っている。悔しさ。笑顔。「いけ いけ」。ゴール。その場の雰囲気がわかるような作品。

宝物   野上 圭一朗(新潟県)


宝物は自分だけの物です
自分だけのひみつなのです

だれにも教えずに
かくしておくのです

宝物は自分だけの物です
世界に一つだけの物なのです。

みんなそれぞれちがいます。
一人一人ちがう個性をもった
自分だけの宝物なのです。

宝物は自分だけのものです
とても大切な物なのです
よごさずになくさずに

とっても大切に
自分の宝物も
自分の家族も
審査員
審査員

宝物は自分だけの大切なもの。宝物は他人にはかくしておく。だけど、みんなちがう個性をそれぞれがもっている。宝物は「自分の家族」同様に、とても大切なものでもある。

「たんじょうび」   長谷川 結優(新潟県)


生まれた特別な日
年に一度の特別な日
世界中のみんなは、きっと楽しみにしているのかな。

あまくて、大きなデコレーションケーキ
ケーキの上にのっているハッピーバースデーの文字。

みんなケーキを見てワクワクドキドキ
毎年1つずつ増えていくろうそく
ろうそくをふくときドキドキがとまらない

そして火がふぅっときえる
きえたしゅんかん

「おたんじょうびおめでとう」

の言葉

このしゅんかんは、うれしいな。

虫も動物もみんなたんじょうびがある
動物は、どうやってお祝いするのかな
ふしぎだな

動物のお祝い見てみたいな
いつもとはちがうごはんを食べるのかな

動物たちもうれしい気持ちがあるのかな
私は、みんなを笑顔にするたんじょうびが好き。

「みんなおたんじょうびおめでとう!!」
審査員
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自分の誕生日だけでなく。友だちのも動物のもうれしいのだ。デコレーションケーキにロウソクの火など。ドキドキしてうれしい。動物や虫たちはどうやるのか、不思議だな。

夢   林  亜美(埼玉県)


夢っておもしろい
自分の創造だけで
こーんなに楽しい話から
あーんなに怖い話まで
つくっているのだから

それなのに忘れてしまう
朝まで覚えていたのに
夢の中での大切な思い出だったのに…

夢って不思議
私が眠っている間に
こーんなにワクワクする話から
あーんなにドキドキする話まで
つくっているのだから

それなのにもどかしくなるのは
言葉にすると
この感情が全く伝わらないからだ

だけど、
共感してくれる人を見つけたとき
こんなに小さな事なのに
なんだかすっきりするし
ちょっぴりうれしい気持ちになるのは
きっと全世界共通なのだろう
審査員
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夢は楽しかったり、怖かったりするのに、忘れてしまう。不思議だ。言葉にしても伝わらない。だから、共感してくれる人を見つけたらすっきりする。「夢って不思議」と実感。

おれはボール   増渕 志音(奈良県)


おれはボール。

ただのボールじゃないバスケットボールだ。

おれはいつも大変だ、ドリブルはされるし投げられるしたまに転がる。

こんなことをされているのに人間は感謝の一つもしてくれない。

でもたまにおれが感動することがある。
それは真上に投げられる時だ、その時だけはおれはまるで世界中を見ているような気分になる。

飛んでる時にブザーがひびく。
なぜ真上に投げるのかは知らないがその時は人間が喜んでいる。

それにつられて自分も喜ぶ。
審査員
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日本でも、バスケット熱が高まって来た。しかし「人間は感謝の一つもしてくれない」と、ボールが不満を言っている。真上に投げられる時だけ、世界中を見おろしている気分。

命のともしび   松村 拓実(埼玉県)


「おはよう」で始まり、「おやすみ」で終わる何気の無い一日。

そんな一日が生きてる内ずっと綴り返されている。

そして必ず明日が生まれる。

明日は一体、どこから来ているのだろう。

果たして僕には明日が来るのだろうか。

そんな事を考えながら一日が終わった・・・僕は自病があり、病室のベッドで、過ごしていた。

外で遊びたい、学校に行きたい、そう思っていた。
けどそんなの叶わなかった。

日を重ねるにつれ、自病の悪化。辛(つら)い、苦しい。そ
んな言葉しか思えなくなっていた。

そんな毎日と戦っていたけどかすかな希望に賭けよう。
白い天上が目に映った時は、涙があふれるくらいうれしかった。
審査員
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自病ゆえ病室のベッドで過ごす日々。矢沢宰もそういう時期が長かった。でも、くじけることなく、あんな素晴らしい詩を書き、たくさんの本を読んだ。「希望に賭けよう」。

消しゴム   丸山 琉生(埼玉県)


私は消しゴム
けずられるのはきらいだけど
まちがえた文字を消すのが私の仕事
でも私は本当はけずられたくない

なぜなら
小さくなってしまうから

私は消しゴム
けずられるのは本当はきらい

でもなんだか
役に立っている
ような気がしてとても
心がポカポカする、人に使ってもらえる

人の役に立っている
そんなかんじがして
私は心がポカポカする

私は消しゴム、けずられるのは本当は好き
なのかもしれない

でも小さくなるのはやだ、だけど
人の役に立っているとなんだかポカポカする

けれどもやっぱりけずられるのはきらい。
審査員
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消しゴムの「役に立っている/小さくなる」という「私の仕事」と、同時に「けずられる/小さくなる」という悩み。消しゴムの定めというか、矛盾した悩みをとらえている。

夏に恋する   諸遊  樹(埼玉県)


雨の季節が終わって、暑い夏が来た。
今ならなんでもできる気がした。

「ああ夏よ、僕をつれていってくれよ。」

浮かれる僕を見て太陽が笑った。
何もかも輝いて見えた。

海に行った。
夏が僕を連れていった。
波の音と夏の空気が僕達をつつんだ。
この時間がいつまでも続けばいいのになんて、無責任なことを思ったりもした。

夏は半分を過ぎていた。
僕の思いとは裏腹に時間はあっという間に過ぎた。

「ああ夏よ、まだ終わらないでくれよ。」

焦せる僕を見て太陽が笑った。
二度と戻らない時間に怒りさえ覚えた。

昨日は笑っていた太陽が今日は顔を見せなかった。
代わりに空はたくさんの雨を降らした。
まるで僕の心を表しているかのような冷たい雨だった。

夏はもう終わろうとしていた。
秋は目の前まで来ていた。

「ああ夏よ、僕をおいて行かないでくれよ。」

何もできない僕を見て太陽が笑った。
一人ぼっちの部屋にセミの声だけが響いた。

あんなに輝いて見えた夏は思い出と引き換えに行ってしまった。
今さら考えても、もう手遅れだった。

夏が帰ってくることはない。
明日からはまた今までの日常が戻る。

代わり映えのしない一日の無限サイクル。
僕はこれからもうまくやっていけるのだろうか。

前を向いて、後ろを振り返らないで進めるのだろうか。
夏を忘れられるのだろうか。

二ケ月後、僕は散りゆく葉っぱを見つめていた。
夏がくれた、最後の贈り物だった。

初めて僕は葉に心を動かされた。
また一つ季節が移り変わる瞬間を見た。

枯れた葉を見つめながら、僕の頭の中はやっぱり夏に支配されていた。
審査員
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よほど夏が好きなのでしょう。自分は浮かれ、気持ちは「夏よ、終わるな」と叫びつづけ、夏に置いて行かれたくない。雨は夏が好きな作者の心を表している。季節は移り変る。

雨   八木 悠仁(群馬県)


雨
きみは いろいろな
顔をもっているね

雨
今日は どんな顔
晴れているのに
ないているね
なにか 良いことあったかな

雨
今日は どんな顔
一日バシャバシャ
ないているね
なにか かなしいことあったかな

雨
今日は どんな顔
ゴロゴロいいながら
ないているね
なにか 怒っているのかな

雨
今日は どんな顔
一日シトシト
ないているね
今日は 農家の人達に
よろこんでもらえるように
ないているのかな

雨
きみは たくさんの
顔をみせてくれるね
みんなや自然や動物達を
よろこばせようと思って
こまらせるほどの
顔をみせてるときもあるね

雨……
審査員
審査員

人間のように、雨もいろいろな顔をもっているんだね。だから「今日は どんな顔」とくり返し雨に尋ねている。見る人によって変ることがある。第五連などは大人っぽいね。

夏祭りの色   山㟢 紗良(群馬県)


朝顔の柄の浴衣を着た私
カラフルな花火の柄の浴衣を着た友は
共にカランコロンカランコロンと
快い音を出しながら屋台へと歩く

金魚すくい 君とすくった数を競って真剣勝負 二匹差で君に負けたけど三匹すくえた 金魚の朱色はまるで炎が燃え盛るように赤く水も朱色に染まったかのようだった

かき氷
「何味にしよっか?」と言う君
「そうだなぁ…ブルーハワイにするよ!」
と答える私

かき氷を食べると全身がひんやりとして
食べ進めると舌が青みがかっていることに
気付いた

君はいちごの味のかき氷を頼んだからやっぱり舌は赤かった
私と君はお互いの舌を見て笑い合った

チョコバナナ カラフルなデコレーションに引きつけられてチョコバナナを買った君は
「やっぱり夏祭りといったらこれだよね!」
とそう言って美味しそうに頬張った

「楽しかったね また来年も行こうね!」
と君に言うと はじけるような笑顔で
「うん!来年行こうね!」
と約束をした 私は楽しみで楽しみでしかたがない 親友と行く来年の夏祭りが

金魚の色
かき氷の色
チョコバナナの色

来年も夏祭りの色を見つけたい
私はそう決意した

私は快い音を出しながら家へと帰った
審査員
審査員

朝顔の柄の浴衣を着て、花火の柄の浴衣の友と祭の屋台へ。朱色の金魚をすくったり、かき氷やチョコバナナを食べたり。浴衣の柄みたいに違うけれど、「夏祭りの色」は一緒。

不安   吉田 祐太(長崎県)


現場実習でよい評価を得られるか不安
漢字検定に合格できるか不安
みんなの前でダンスを上手に踊れるか不安

でも

不安って悪いことかな
僕は不安に助けられた
不安があるから
現場実習も漢字検定もダンスも
必死で頑張った

そして

現場実習でよい評価が得られた
漢字検定に合格できた
みんなの前でダンスを上手に踊ることができた

不安があるからこそ
この成果を得られた

不安は
成長の源だ

だから

今日も不安を感じつつ
僕の目標を目指していく
審査員
審査員

さまざまな不安がある(誰にも当然)。不安だからよけい頑張ることができた。そして成果を得られた。つまり「不安は成功の源だ」という貴重なこと、自ら学ぶことができた。

いろいろな橋   渡邉 風羽(新潟県)


橋にはいろんな橋がある。

川をまたぐ橋。
島と島をむすぶ橋。
谷をこえるための橋。

橋もいろんな形がある。

ジグザグしたさんかくの橋。
ぽっこりとした丸い橋。
何本もの糸がある橋。

まるでいろんな人みたいに橋にもこせいがあるね。
でもね、ふだんは見えないけれど一番たいせつな橋がある。

人と人の心をむすぶ、心の橋。
審査員
審査員

形態も役目もいろいろとちがう橋が、私たちのまわりにはたくさんある。それを渡るちがう人もたくさんいる。それを考えると楽しいけど、見えない「心の橋」こそが大切な橋。

空   渡部 陽菜(千葉県)


空と人間には似ているところがある。
それは天気と心情。

雲一つなく、青色が広がっているとき、
心が安らいでいるような。

いくつかのわた雲が見えるとき、
いくつかの思い出を思い出しているような。

白くモクモクと立ち昇る姿が見えるとき、
気分や調子が上がっているような。

空全体を覆う程の雲が広がっているとき、
様々な考えをもっているような。

灰色く染まった雲が広がっているとき、
不安なことがあるような。

黒く決まった雲が広がっているとき、
怒りに満ちているような。

雲っておもしろい、
周囲が見えなくなる程に豪雨のとき、
悲しみに満ちているような。

そよ風がふいているとき、
心地がよいような、
強風がふいているとき、
何かを遠ざけようとしているような。

濃い霧が周囲をぼんやりとさせているとき、
モヤモヤして上の空になっているような。

こんこんと雪が降っているとき、
冷静になっているような。

言葉を失ってしまう程の落雷のとき、
感情が荒れ、周りが見えていないような

天気っておもしろい、
人の考え方や感性と同じように
多種多様のところが。

受けとり方によって様々な
想像をすることができるところが。

空っておもしろい。
審査員
審査員

雲のさまざまな状態をよく観察して、その心情を繊細に的確に読みとっている。

空には見上げている人の心情が反映している。だから雲も、それを擁している空もおもしろい。

第30回矢沢宰賞の審査を終えて

 新型コロナは日本だけでなく、世界中の人々が重い影響を受けました。さまざまな行動や催しものに厳しい制限が加えられて、思うように動けなかった点も多々あったことでしょう。みなさんも少なからず、その影響を受けたことと思います。その後コロナ禍は減って、私たちに対する行動の制限はゆるくなりつつありますが、まだ油断はできません。

平成6年から、毎年実施されてきた「矢沢宰賞」は休むことなく実現しましたけれど、その授賞式「矢沢宰 生命の詩の集い」は残念ながら、昨年まで3年連続で開催できませんでした。今年は節目の30回目で、開催です。

「だれにもまねのできない、あなただけの心のつぶやき、心のたかまり、それをあなたの言葉で書いてみませんか。」と詩の募集にありました。その通りなのです。各学校から多くの詩のご応募をいただきました。学校での生活や夏休みの日々に汗している姿が、詩の上手下手に関係なく伝わってきます。周囲には言葉が増えているけれど、「あなたの言葉」ということを深く考えてみてください。

毎年、会場で入選者のみなさんと初めてお会いして、作品と作者の顔が一致するときは、選者である私にとって、スリリングな瞬間です。今年の「生命の詩の集い」に、私は体調が悪くて出席できませんが、作品に付した選評を読んでください。選評はみなさんが詩を書くときのエネルギーに負けていないつもりです。自由な時間は、今後少しずつ増えてくるでしょう。勉強や遊びに負けず、詩作にも挑みましょう。

作品のすべてに目を通して、最終的に40編にしぼりました。選評は作品それぞれに付してあります。入選の喜びをふくらませ、選にもれた悔しさを倍のエネルギーにして、詩を愛し、今後も書きつづけてください。

  • 審査員 八木 忠栄
    1941年見附市生まれ。日大芸術学部卒。
    「現代詩手帳」編集長、銀座セゾン劇場総支配人を歴任。
    現在、個人誌「いちばん寒い場所」主宰。日本現代詩人会理事。青山女子短大講師。
    詩集「きんにくの唄」「八木忠栄詩集」「雲の縁側」(現代詩花椿賞)他多数、エッセイ集「詩人漂流ノート」「落語新時代」他、句集「雪やまず」「身体論」(吟遊俳句賞)。

年ごとの入賞作品のご紹介

最優秀賞受賞者タイトル
第1回(平成6年)山本 妙本当のこと 
第2回(平成7年)山本 妙災害
第3回(平成8年)高橋 美智子小さな翼をこの空へ
第4回(平成9年)野尻 由依大すきなふくばあ
第5回(平成10年)佐藤 夏希お日さまの一日
第6回(平成11年)除村美智代大きなもの
第7回(平成12年)徳田 健ありがとう
第8回(平成13年)井上 朝子おくりもの 
第9回(平成14年)藪田 みゆき今日は一生に一回だけ 
第10回(平成15年)日沖 七瀬韓国地下鉄放火事件の悲劇
第11回(平成16年)佐藤 ななせ抱きしめる
第12回(平成17年)髙島 健祐えんぴつとけしゴム
第13回(平成18年)濱野 沙苗机の中に
第14回(平成19年)田村 美咲おーい!たいようくーん
第15回(平成20年)高橋 菜美空唄
第16回(平成21年)今津 翼冬景色
第17回(平成22年)西田 麻里命に感謝
第18回(平成23年)山谷 圭祐
第19回(平成24年)坂井 真唯クレヨン
第20回(平成25年宮嶋和佳奈広い海
第21回(平成26年)金田一 晴華心樹
第22回(平成27年)安藤 絵美拝啓 お母さん
第23回(平成28年)宮下 月希大好きな音
第24回(平成29年)宮下 月希心のトビラ
第25回(平成30年)阿部 圭佑ものさし
第26回(令和元年)上田 士稀何かのかけら
第27回(令和2年)宮下 音奏大好きな声
第28回(令和3年)横田 惇平ふくきたる夏休み
第29回(令和4年)野田 惺やっと言えた
第30回(令和5年)舘野 絢香気持ちをカタチに 思いを届ける