第13回矢沢宰賞

第13回矢沢宰賞

最優秀賞 ポプラ賞

机の中に   濱野 沙苗


ガランと空っぽの机の中に
そっとしまったものがある

授業中、問題が解けたときの
炭酸水がはじけるような
スカッとする気持ち
しまっておこう

あと五分で授業が終わるってときの
風船いっぱいにつまった空気みたいな
つーんとする気持ち
しまっておこう

休み時間、おしゃべり中の
太陽みたいなオレンジの
あまずっぱい気持ち
しまっておこう

こんなにつまって
ぎゅうぎゅうに重たくなった
この私の机を
誰にもつかわれたくない
っていう
誰にも触れられたくない
っていう…気持ち

そっと奥にしまっておこう
審査員
審査員

目には見えないあなたの気持ちが、まるで目に見えるように感じられます。
いろいろな気持ちが生まれて、あなたの心の引き出しにしまわれて、あなたは大人になっていきます。とてもすぐれた感性があります。

奨励賞 ポプラ賞

輝   内田 萌子


生きるって こういうものなんだね
やっと 気づいた人と ケンカしたり
笑いあったり
時には 泪(なみだ) も流したりしてね
大きな声を だして ふざけたり
時には 親にも 怒られたりするもの
見上げれば 空は凛と 澄んでいて
川は キラキラ 光っているの
木は 風で ゆれていたり・・・
するものだよね
悔いの ないように
ずっと 生きつづけたい
たとえ 命は 短くても
人生は
定められたわけじゃなく
変えられることが きっと 出来るよ
だって 生きてるからさぁ
未来を 信じていけば・・・
きっと 生きていけるよね
もう 私
つまづかないよ・・・
審査員
審査員

本当に、生きるってこういうものなんだね。
「だって、生きてるからさぁ」。私たちは生きるために生まれてきました。
あとは、どう生きるかということ…、つまずいたっていいんだよ。

兄   伊石 成司


兄から 小二の時に守ってもらった 。
泣きながら、自分をしかりなが ら
自分の同級生にどなってた 。

兄が
コンビニに行く時に
「何かいるか。」
と自分に言った。
「おまけつきのおかし。」
と言うと

「わかった。」
と、言ったが、嫌な顔して出ていった。
何分もすると
帰ってきた。
安いおまけつきのおかしだった。
安くても、うれしかった。

兄はアホ だ
中一の時、テストで、悪い点をとったの で
さんざん兄を笑った 。
自分が中一になった ら
それより下の悪い点をとった 。

兄はアホ だ
アホの兄が一番い い
アホの兄 が
大好きだ 。
審査員
審査員

兄が大好きなんだ。いいなあ、こんな弟思いのお兄さんがいて。
一生助け合っていくんだよ。大切なお兄さんだよ。

人間の不思議さ   岡崎 愛未


『意地張って死ぬ位なら一生懸命もがいてでも生きようや。』

絶望した人や、生きる気力を失った人が立直ると言うのは、だれかに、背を押されたということだ。

もしそいつが強ければ自分に背を押されたということだ。

 人って不思議な生き物だ。

 観察していておもしろくもあれば醜いのもある。

 それが人間だ。

 『孤独のまま生きる気力を失う位ならかっこ悪くあがいて、一生懸命生きて最後には丸くなって死のうや。』

 人間の不思議さ
審査員
審査員

『 』の中の言葉が誰かの言葉だとしても、私たち人間は自分で自分の背を押して生きていくということに気づいたあなた。本当に、人間は不思議な生き物だね。

蝶   佐野 愛実

二つ折りの四つ葉のクローバー

うれしそうに

 ふわっ

 ふわっ

と、まい上がる

春がきたことをしらせに
審査員
審査員

蝶が舞い上がったのは、あなたの心の中の空。みずみずしい感性に、思わず拍手。

強い翼   大川 友栄


鳩の群れが飛んでいる
僕も鳩のように
翼が欲しい
手術した足の痛み
リハビリの苦しみ
みんな忘れて
苦痛のない世界へ
飛んで行きたい

鳩たちに語りかけてみる
寒くないかい
鳩たちは
北に向かって
羽を大きく翻した
鷹や鷲のような
鋭いくちばしも
広い翼も持たない
か弱い鳩が
吹雪く風を切り
谷川岳の方に
消えて行った

鳩よ
足の傷の痛み
リハビリの辛さに
立ち向かう
強い翼を
僕も
持ちたい
審査員
審査員

か弱い鳩が、心がか弱くなりそうな君を励ます。君に翼はいらない。
か弱い生き物が懸命に生きている姿に自分を重ねているから。がんばれ。

佳作

三輪車   平澤 慶樹


物置きの中をそうじしていたら
昔よくあそんでいた
なつかしい三輪車がでてきた。
幼稚園の時のお気に入りの赤い三輪車
新しい自転車を買ってもらってから
捨てようと思っていたけど
そのままずっと忘れてた。
ハンドルもペダルもさびだらけで
クモの巣まではっていた。
ほこりをはらうとぼくの名前が
しっかりときざまれていた。
こんな小さな三輪車に
自分が乗っていたことが
とても不思議に思えた。
ぼくはもう一度乗ってみた。
キーコギーコ
昔の自分を思い出した。
自分は昔と変わったけど
車輪をこぐその音は
今も昔も変わらない。
審査員
審査員

最後の二行。変わっていくのは私たち人間だけ。
君が父親になり、おじいちゃんになった時、三輪車をこぐ小さな男の子がいるかも知れない。
その音は、今も昔も変わらない。

風   林田 望来


風がふきました

そうじの時間に

風が口ぶえふきました

木のはと

いっしょにあそびたいから


風さん

晴れててあったかいとき

いっしょにあそんであげるから
審査員
審査員

「風が口ぶえを吹きました」。何ていい表現でしょう。
風は、生きているんだ。

空   中村 樹奈


もし空に目があったら

わたしが見えるのに。

もし空に口があったら

わたしとしゃべれるのに。

もし空に耳があったら

わたしのこえがきこえるのに。
審査員
審査員

素敵な発想です。実は、あるのかも知れない。空はいつも、あなたの心を見ている。
風になって話しかけ、あなたの喜び、悲しみを聞いているのかも知れない。

おとうさん   松崎 怜美


よる、じょせつ車にのって
じょせつにいっている。
「ガガッ。ピーッ。」
とわたしがねているときに音がする。
と中、ねていられなくなる。
「おはよう。」
とおとうさんは、まい日いってくれる。
「おはよう。」
とわたしもかえす。
おかあさんよりもせがたかい。
びっくりしたよ。
学校からかえってくるといってくれる。
「おかえりなさい。」
わたしは、とてもうれしい。
きょうも、じょせつがんばってね。
おうえんしてるよ。
おおきくなったらわたしもしごとがん
ばるからね。
かえったらいっぱいやすんでね。
わたしも学校いくのがんばるからね。
審査員
審査員

「大きくなったら、私も仕事、がんばるからね」。子が、親の姿から学んだ言葉です。
「帰ったら、いっぱい休んでね」。読むと、涙が出てきます。

一瞬   吉田  彩


一瞬ってほんのわずかな時間だけど
すごく大きな時間でもある
今、赤ちゃんが生まれた
今、誰かが死んでしまった
今、とても美しいものを見た
今、ひどく悲しいものを見た
今、自分のベストをつくせた
今、自分のベストがつくせなかった
一瞬って不思議なもので
たかが一瞬って思っても
とても、とても
大きな時間なんだ
その大きな一瞬を
大切にしたい
大事な、一瞬を …
審査員
審査員

あなたの発見です。そう。だから一瞬、一日を大切にして生活しようね。

心の天気   吉田 隆史


今日は雨、明日はくもり。
毎日雨やくもりばかり
晴れが少ない
ぼくの心も雨もよう。
くもりのようにどんよりしていて
雨のようにシトシトしている。

昔はずっと晴れていた。
昔の心にもどりたい。
少しずつ大人になっていくぼく
不安がたくさんあるから、
晴れないのかもしれない。

明日の心が晴れるように
てるてるぼうずをつるした。
審査員
審査員

お父さん、お母さんが君の太陽になっていた時、君の心はずっと晴れていた。
こんどは君が家族をあたためる太陽になる日まで、心の天気はさまざまに変わる。

ラブレター   廣瀬 朱希安


ぼくは、いなくじら保育園にいたころ、

しずかちゃんから、

はじめて、ラブレターをもらったよ。

「わたしは、ときやすくんのことがすきです。」

って書いてあったよ。

ラブレターってドキドキするもんだね。

何だかとってもうれしくなったよ。
審査員
審査員

いいなあ。私は一回ももらったことがない。
すきですって言われるうれしさを、君はいつ誰に、わたすんだろう。

魔法の笑顔   高田 彩奈


私の周りを見渡せば
たくさんの大切な笑顔達 …
前を見れば仲間の笑顔が
後を見れば家族の笑顔が

私の心の奥にある
甘酸ぱい思い出達 …
辛い事 悲しい事
楽しい事 幸せな事

楽しい事や幸せな事は
笑顔に包まれている
辛い事や悲しい事は
泪で包まれている

だけど…一人じゃないよ
いつだってたくさんの
魔法の笑顔に包まれているから
審査員
審査員

私たちが、人のために笑顔になれる大切さとむつかしさが、伝わってきます。
あなたの笑顔に救われる人がいます。

ぼくにきいてね   長谷川 弘貴


ぼくはねえ
きょう、五時間目まであるの
さとこはねえ
きょう、四時間でおかえり
ママはねえ、きょう、火よう日だから
帰りがちょっとおそい
パパはねえ、
きょう、よるでかけて
朝、帰ってくるよ
みんなのよていは
ぜんぶしってるよ
ぼくにきいてね
審査員
審査員

大切にされ、信頼しあっている家族が見えます。君は、幸せだなあ…。

ひまわりと私   大野 美穂


ひまわりになりたい
大きく背伸びして太陽をながめている
ひまわりになりたい
雨にだって風にだって負けない
ひまわりになりたい。

わたしはひまわりより小さいけど
ずっと太陽は見ていられないけど
少しでも太陽に近づきたいから
私も明るい方を向いて生きてやる

今はまだひまわりじゃないけど
いつかぜったい大きな花を咲かせてやる
ひまわりみたいに大きくなってみせる
審査員
審査員

 あなたはもう、一本のひまわり。すぐ近くに家族がみなひまわりになって、お日さまをみています。ひとり一人の高さは違うけれど。

鳥   山田 大起


鳥は飛びます
空高く
けど
魚は飛びません

鳥は飛びます
空高く
けど
犬は飛びません

鳥は飛びます
空高く
だから
人も飛びます

高く飛びます
希望と言う名の鳥につかまり
だから
飛ぶのです
希望に向かって
審査員
審査員

がんばれ、そうすればきっといつか。人間だけなんだね。
少し先に、いつもほほえんで立っている希望を見る生き物は。

命   玉木 維乃


 みんな人間や、
動物にしか、命はないと思ってる。
でも、命はそこらじゅうに、
  いっぱいあるんだよ。
たとえば森。
耳をすまして聞いてみて、
ほら、きこえる。
  きこえる。
 木が、がさがさゆれる音。
ひゅーひゅーざわざわ
 風の音。
すべてが生きている、
 あかしなんだから。
審査員
審査員

 あなたの発見です。私もそう思います。私たちはたくさんの命の中で生きています。
お互いが支えあって。

アルバム   高橋 萌子


アルバムを見ていると

たくさんの思い出がつまっている

その一枚一枚を見ていると

なんだかその時を思い出す

あぁなんだか

タイムスリップしているみたい

本当にタイムスリップしたら

どんな感じなんだろう

行ってみたいな一つ一つの思い出の中へ
審査員
審査員

私も、昔の小学校の教室のいすに、59歳になった40人が全員腰かける姿を想像しました。
でも、もう何人もこの世にいないんです。
アルバムは、楽しいことも悲しいことも残して、ふえていきます。

きれいかなぁ~   藤川 彩夏


私は、チューリップ

いつもいつも水くれしてもらうよ。

「大きくなれ.大きくなれ.」

「あっ大きくなった.やった.」

と言われたよ。

もっともっと大切に水くれしてね.

「大きくなれ.」

と言ってね。
審査員
審査員

このチューリップは彩夏ちゃんのこと。みんな彩夏ちゃんのこと、大切にしているよ。
これからもずっと…。

このチューリップは彩夏ちゃんのこと。みんな彩夏ちゃんのこと、大切にしているよ。
これからもずっと…。

金魚   高井  彩


お店の中のガラスの箱で
毎日ゆらゆら 泳いでいるの
隣りには仲間 暗くなってもずっと一緒で
私の隣りのガラスの箱にも
模様の素敵な 友達がいるの

毎日一緒に居たけれど
何故だか皆が 居なくなる
どんどんどんどん居なくなる
どんどんどんどん居なくなって
それが別れって分かったの

ゆらゆらゆらゆら 心がゆれて
ゆれる度に 悲しくなるの
それでも毎日
ゆらゆらゆらゆら 私は泳ぐ
審査員
審査員

金魚の心にあなたの心が重なって、あなたの悲しみがわかる。
その悲しみが深いほど、喜びも深くなる。いつか気がつきます。

入選

桜   飯塚 茜


桜の花びらが
どんなに小さくても
その花びらが集まれば
とても大きな桜となる

桜の花びらが
どんなによごれているのがまじっ
ていても
その花びらが集まれば
とてもきれいな桜となる

花びら一枚は小さいけど
桜の木になると
とても大きく美しい
花となる

桜も人も同じ
審査員
審査員

人の心も桜と同じ。さまざまな小さな心の花びらでできています。
あなたは大きくなる桜の木。私は年老いた桜の木。

おはらい   石月 尚宏


一月三日に おはらいがあった

かんぬしさんが
うちにきた
かんぬしさんが 
のりとを読んだ
長かったから 足がしびれた
足をくずしたかったけど
がまん がまん
かみさまの前だから
がまん がまん
ばちがあたるとわるいから
がまん がまん
でも
心の中で
早く終われと思っていた
かみさまは
ぼくの心の中まで
見ていたのかな
見えていたら
たいへんだな
審査員
審査員

多分、見ていたと思うよ。でもにっこり笑っていたと思う。君の心がかわいくて。

紫陽花を描いた   伊藤 有紀恵


私は紫陽花の花が好きです。
小さな星がいっぱいの花だから
色々な色があるから
優しい色
同系色の星をいっぱい並べた

お花が咲き始めたよ
審査員
審査員

二行目を読んで、小さな星がいっぱいのあじさいの花は、あなたの心の姿だと思いました。
とっても、きれい。

弟のねがお   伊藤 玲音


わたしの弟は、いつも元気
いろいろなひょうじょうをする。
ないたり、おこったり、わらったり。
その中で、わたしが一番気にいっているところがある。
それは、ねがお。
弟のねがおはとってもかわいいんだ。
弟のねがおを見ていると、
なんだかわたしもねむくなってくる。
なんだかしあわせな気ぶんになるんだ。
今日も弟のねがおを見ながら、
昼ねでもしようかな。
審査員
審査員

さびしい寝顔の人がいます。でも、仲のよい家族の寝顔は、みんな幸せそうです。

通学路   江田 理香


六年間歩いた道
友達と笑いながら歩いた道

泣いて歩いた事もある
けんかして歩いた事もある

入学したばかりのころは長く感じた道だけど
もうじき卒業の今はそんな事を感
じないくらい友達との話が楽しい

私の事を何でも知っている道
だからこそ忘れたくない
大人になっても
審査員
審査員

道は、人生にもたとえられます。忘れたくない通学路から、あなたの一生がのびています。

大かぞく   大城 裕也


ぼくのかぞくは、十人かぞく
一番上は、高校三年生
ぼくは、高校一年生
弟は、中学一年生
他は、小学生と赤ちゃん
みんな、やんちゃぼうず

いたずらずきの弟
ぼくのノートをきったり
大ごえをだしたり、・・・
一方、妹はおとなしく
弟のめんどうをみる

ぼくは、おてつだいをする
せんたく
おうちの中のそうじ
外のゴミとり
それから弟のめんどうをみる

ぼくの一日がおわる
審査員
審査員

落ち葉のように降りつもる、あなたの一日。それがあなたの家族という名の樹の根元に落ちます。みんなを大きく育てていく。

病院の夜   大原 知己


こわいで~
病室のドアが風でゆれるで~
こわいよ~

しーんとしてて
自分だけおきてて

しずかすぎ
ねてたとき
横にだれかがねてる気配がする

ふり返ってみたら
だれもいない

こわいで~
審査員
審査員

本当に、こわいね。そこにいられる君は、強いねェ。

太陽   大星 詠


近すぎても死んじゃうし

遠すぎても死んじゃう

人間が生きていけるような

ちょうどいい位置にある太陽

なんでわざわざそんな位置にあるんだろう

動いてもだれにも文句など言えないのに

もしかしたら・・・・

もしかしたら私たちは

「生きている」のではなく

太陽に「生かしてもらっている」

のかもしれない
審査員
審査員

よく気がつきました。私たちは太陽に、生かしてもらっているのです。

すきなもの   小田嶋光一


むらさき色がすき
まざった色だから

ためいきがすき
ためいきをすると力がぬけるから

ふつうがすき
なんでもやりやすいから

ふつうでいろいろやってみたい
審査員
審査員

誰もあなたをしかりません。あなたの言うことは、本当のことだから。

自分の心と命   亀井  旭


僕はしりたい
自分の心と命はいったいどうなっているのだろう
命ってなんだろう
心ってなんだろう
いったいなんのために心と命はあるのか
自分もなぜ心と命があるのか
みんなもなぜ命があるのか
僕は知りたい
審査員
審査員

命って、親から子へと伝えられていくもの。心って、自分と人の命を大切にする気持ち。
「人生とは何か、一人で考えなさい。
そのためにお前に一回きりの命を与えます」と、誰かがあなたにも、私にも、問題を出したのです。

二月の雨   北爪 皓


冷たい北風がふき
落ち葉はヒューヒューとまっている
空気はかわいて手はかさかさ

二月なのに
雨がふってきた
ポツポツ
パチャパチャ
サーサーと

雨のシャワーだ
かれ木は黒く生き生きと
落ち葉はぬれてやわらかく

雨が止んだ
大きく息をすいこんでみた
しめった空気は気持ちがいい

冬を終わらせる
二月の雨

あたたかい春はもうすぐだ
審査員
審査員

二月の雨に、敏感に春の姿を見ています。
だから、しめった空気は気持ちがいい、と言いました。

本当の幸せ   木村 かおり


ずっと君と一緒にいたい。
いつかは遠く離れていってしまう
かもしれないけれど。

本当の幸せって何だろう。
私にとっての幸せ。それはね。
大切な人と一緒にいられること。
大切な家族がいること。
好きなことにいっしょうけんめい
になれること。心から笑える時も、つらいって思うこともたくさんあるけど、
今、生きていることを心から幸せって思える人になりたい。

ずっと君と一緒にいたい。
いつかは遠く離れていってしまうかもしれないけど、
それでもいい。
君と一緒にいられることを
心から幸せって思える人になりたい。
審査員
審査員

人を愛するということ。できた家族を大切にするということ。
幾つになっても、私たちからこの気持ちはなくなりません。

ガラスのむこうで   栗原 素延


ガラスのむこうで
すやすや寝ている
ちいさな
ちいさな
手があった
ちいさな
ちいさな
足があった
自然に泣けてきた
うれしかった
審査員
審査員

保育器のケースの中にいる赤ちゃん、大丈夫、健康に育つよ。優しいあなたがいて、よかった。

死より生きる事   桑江 幸美


私には、
いつも私をかわいがってくれる父、
母、姉、弟がいます
今、お父さんは病気です
腸の病気で、早く治ってほしいです
今、家族にあやまりたい事が
たくさんあります
危ない事をしました
家族に言ってなかったけど
小、中学生の
皆からいじめられていました
誰もいない時にカッターで
手首を傷つけようとしました
自分の心も傷つけようとした
一回だけ自殺しようとしました
ある日、友達に
「命は大切だから、やめて」と言われ目が覚めました
その時、
私はやっと気づきました
だから、家族にあやまりたいです
死より生きることが大事だと気づきました
お父さんは病気とたたかっています
頑張って健康になってほしいです
前みたいに笑える家族にするのが
大事だとわかりました
審査員
審査員

私たちは、生きるために生まれてきました。あとはどう生きるかということ。
家族が支えあうことの大切さに、あなたは気がつきました。

大人の一歩   後藤 智


一生懸命やり続けると成長する
できないことをやり続けると成長する
慣れないことをやり続けると成長する
やりたいことを我慢していくと成長する
先生や親に怒られて、自分が素直に聞けると成長する
人と助け合うと成長する
人の気持ちを考えると成長する
前向きだと成長する

これが大人の一歩になる
審査員
審査員

自分らしい一生を送るために必要なことを、今全て身につけました。
あとは実行するだけ。がんばれ。

大空   齋藤 都


もう少しでとどきそうで
全然とどかない
この青い空
どうしてとどかないのかなあと思って
いつもこの大空に
手をのばしている
雲って軽いのかな
空って本当にきれいかなって・・・
でも
いつかとどくかもしれない
この小さくて
大きな夢を持っている手が

あの大きいようで小さい
遠いようで近い空に
審査員
審査員

あなたは空を呼吸して生きています。だからあなたの胸の中にも空があるのです。
空ってきれいで、夢を持たせてくれるでしょ?

辛いと幸せ   佐藤 麻伊


ねえねえ知ってた?
辛いって字に一をたすと
幸せって字になるんだよ
辛いと幸せは常にとなり合わせ
雨の後は晴
冬の後は春・・・

幸は永遠と信じ

辛は今だけと信じてみる

なんかちょっとだけ
笑顔になれたよ
私・・・
審査員
審査員

辛いと幸せは、あなたの一生にどちらが多いか。
辛いことの方が多いと思うのは、人は小さな幸せに気づかないことが多いから…。

あの頃に戻りたいなんて・・・   只野 佑太郎


あの頃に戻りたい
そんな時がある

それは不可能だ
辛いことがあっても
前へしか進めない
過去を振り返る
そして同じ失敗を
くりかえさないようにする
それは良いことだ
しかし不可能なことを
考えてはいけない
前へ進める
足がある
可能性がある
少しずつでも前へ進む
昨日の自分の位置よりも前に立つように
理想の自分に少しでも
近付くように
審査員
審査員

私の心はいつだって、さまざまな昔に戻ります。でも、体は戻ることができません。
この体の命は一回きり。

音   田中 茉未


私は音が大好き。
走っているみたいなリズムが好き。
ダカダカダカ。ドウドウドウドウ
ドウドウ。
ザッザッザッ。
スタッカートの切れる音が好き。
次の音が楽しみ。

次の曲にかわる瞬間が好き。
また、ダカダカダカ。ドウドウド
ウドウドウドウ。
ザッザッザッと始まる。
シューッ。モーターがかかったみたいに曲が盛り上がる。
嬉しくなる。
盛り上がれば盛り上がるほど、私は嬉しくなる。
審査員
審査員

曲と音は作曲者、演奏家の心の表現です。人は人を励まし、楽しませ、いやします。
そうしないではいられないのです、人間は。

本当の自分   徳田 貴昭


私たち人は本当の自分を出そうとしない
恥ずかしいのかも知れない
でもそれはべつに悪い事ではない
本当の自分を出したら気持ちいい
だから自分に正直になったらいい
そうすると本当の自分が出せる
すると楽しくなる

一生懸命になるといい
勉強でも
運動でも
そうすると本当の自分が出せる
すると楽しくなる

もっと自分に正直に一生懸命生きていこう
そうすると人生が楽しくなる
審査員
審査員

その通りです。でもできる人と、できない人がいます。正直な人は、できます。

はるがきた   長野  駿


みつけたよ みつけたよ
ちっちゃくて きいろい ふきのとう

みつけたよ みつけたよ
ちっちゃくて きいろいたんぽぽ

みつけたよ みつけたよ
あったかくて きもちいいお日さま
審査員
審査員

しゅんちゃん、春が来てよかったね。うれしい気持ちがよくわかる。

雪が降っているよ   長谷川 雅人


雪が降っているよ、雪が降っているよ
雪ってね小人なんだよ
ゆっくり降って、ゆっくり降って ……
だけれど
こんなに小さい雪だけど
風にも負けない
すごい小人なんだよ
だから
どんどん、どんどん
積もって、積もって、積もって
みんなで、大きくなるんだよ
雪が降っているよ、雪が降ってるよ ……
審査員
審査員

「雪が降っているよ…」。幾度もくり返しつぶやくと、雪の世界が見えてきます。
私の心の中にも、積もります。素敵な世界があるなあ。

好きってどんなこと   林 大志


人をすきになるって
どんなこと?
人に恋心を抱くって
どんなこと?
昔のようにただ単に
好きっていう
わけではない。
今、ぼくにも
好きになりかけている
人がいる。
その人の声を聞くと
胸がどきっとする。
その人のことで
頭がいっぱいになる。
早く本当の
好きっていう気持ちを味わってみたい。
審査員
審査員

お父さん、お母さんはどんな気持ちで読むことでしょう。
好きは、相手を幸せにしたいと強く思う気持ちの、始まりなのです。

冬の夜の月   肥田野 優希


冬の夜の月は
悲し気に 泣いているように見た
ならば 今静かに降っている
真っ白なこの雪は
月が誰にも分からないように
静かに流した 涙なのかもしれない

さみしそうに 一人きりで
誰にも分からないように
ただ静かに、涙を流す、月を見つめる

孤独な空に 想いがあふれて
ただ静かに、涙を流す。月が見つめる

静かに降る雪はやまない
審査員
審査員

言葉のない世界で、一人、涙を流すことがあります。あなたの心の割れ目からしみ出てくる悲しみを感じます。月だけがじっと、そのあなたを見守っています。

自分へのちょうせん   福原 麻以


スポーツでも 勉強でも
人に勝ちたい 気持ちがある。

でも まって。
人とあらそうということだけじゃなくて
自分とたたかうことも
ひつようじゃない?

だって その方が
やりとげた たっせい感が大きい

人とあらそう気持ちを
へらしてみる

その気持ちの方が いいんじゃない?
審査員
審査員

これもあなたの発見。すばらしい。あなたは人の気持ちがわかり、自分を育てることを知っている。とてもよい作品です。

春風   松岡 智也


春の風を

さがして

あるくんだ

春の風を

みつけるんだ
審査員
審査員

誰もが待っている春。季節の春、幸せという名の春。でも自分がさがして見つけなければならないんだね。

おこられた   松本 りな


「どうして、もどってこなかったの。」
ママが
「もお。」
って、おこった。
「ちゃんとかえってきてよ。」
って、ゆった。

りなは、だまってた。

すべりだい、つうってのったの。
ぶらんこも、のったの。
あそびたかったんだもん。
審査員
審査員

外遊びが大好きなりなちゃん。学校でいつまでも遊んでいました。
心配するお母さんに答えたものです。なんてかわいらしい答え。

救い   水谷 優子


私は逃れたい
溺れそうな悲しみから
黒い大蛇に締め付けられ、喉を食
い千切られる苦しみから
全体に絡みつく鎖から・・・

できぬならば
私を、その悲しみたちと共に湖に
沈めてください
二度と浮かばぬように
できぬならば
私を、地獄の業火に葬ってくださ い
この身が残らぬように

でも・・・
私は
本当は・・・

誰かに救われたい
審査員
審査員

私はあなたの気持ちに、言葉を失いました。
そして今以上のことが出来ないでいる、周囲の人々の悲しさを、思いました。

キミはキミしかいないんだ   八木 麻衣子


決めたゴールへ行くときに
走ってもいい
歩いてもいい。
人 それぞれ速さはちがうのだから。
人より速く速くって、すっ飛ばすんじゃ
いつか転んじゃうんだ。
自分の速さでいいんだよ。
人と較べるのは、大間違いさ。
力も違えば体も違う。
キミはキミしかいないから、
自分をなくしちゃいけないんだ。
人の真似をどんなにしたって、
キミはその人にはなれないんだよ。
でも、それと同時に
人がキミの真似をどんなにしたって、
人はキミにはなれないんだ。
みんながみんな違うから、
自分のペースでゴールに着けばいいんだよ。
審査員
審査員

自分に言い聞かせる言葉の重さ。あなたはしっかりと自分の方法で、大人へと歩き始めました。

みんなができるように   矢島 結衣


何でもできる
遊べる
食べられる
話せる
だけどこれができない人もいる
わたしたちには ふつうのことが
病気の人には むずかしい
かわいそうだな かわいそうだな
遊びたいだろうな
食べたいだろうな
話したいだろうな
病気の人は がんばってる
やりたいことができるように
わたしたちは 何をしてあげられるかな
少しでいいから 助けてあげたい
みんなができるように
審査員
審査員

小さなことから始めて下さい。できればそれを、続けて下さい。
人を思いやる心を大切にして下さい。

木のように   渡部 真子


木はいつも同じ場所にいる
私達を見守っているように
そんな木は私達と同じように
生きている

私達よりすごく長生きで
とても強い
台風がきて頑張っていた
私はそんな君を応援した
がんばれ、がんばれって
そんな君のように
私も強くなりたい
審査員
審査員

厳しい天候の年は年輪がうすいのです。夜、風の声をかりて木が泣くこともあるでしょう。
でも、見上げるあなたを励ます。木は、強いなあ…。
あなたはしっかりと自分の方法で、大人へと歩き始めました。

第13回矢沢宰賞の審査を終えて

 今年度は中学生の作品に心を引きつけられました。そして内容的にはどう考えて生きていけばいいのかを悩み、けなげに自分を励ましている作品が目立ちました。
 
 両親も、学校の先生方も、とても同級生にも、答えられない深い問いかけなのでした。詩の形をとって私に尋ねてくるので、私は自分の考えを選評にして書きました。
私が逃げたら、子供たちの心の迷いは更に深まってしまいますもの。御両親、先生方はどうか参考程度になさってお読み下さい。

 もう一つの内容の傾向は、子どもたちがしきりに「ありがとう」と、家族や友だちに感謝の気持ちを持ち、言葉にしていることでした。私は心がなごみました。そ
して逆に、今の子供たちは大切にされることが少なく、大事にされることに餓えているのかと、不安になりました。私の勘違いであってくれればと思います。

 今年度から入賞者全員に、記念のメダルが贈呈されることになりました。一生大切にして下さいね。私にもっと力があれば、もっと早くから小さな詩人たちの首に、
おめでとうと祝福してかけてあげられたのに。申し訳ない気持ちで一杯です。見附市長さんには心から感謝申し上げます。

 佳作と入選作品との間には、ほとんど差がありません。今年度は入選の皆さんにも選評を添えさせて頂きました。もし私の選が今年で最後になることがあれば、つ
ぎの選者にも入賞者全員への選評をお願いしたい気持ちでおります。

 私は、人目にはつかないけれど、我が子や教え子にできる限りの愛情を注いでおられる御両親、祖父母、教諭の皆様と、見上げて大切にされる幸せをかみしめてい
る子供たちの姿を見ることが、何よりもうれしく思う人間です。互いの心を伝えあって、手を取りあって生きていこうではありませんか。

  • 審査員 月岡 一治
    上越市出身。国立療養所西新潟病院内科医長。第6回新潟日報文学賞受賞。出版物に「少年-父と子のうた」「夏のうた」(東京花神社)がある。

年ごとの入賞作品のご紹介

最優秀賞受賞者タイトル
第1回(平成6年)山本 妙本当のこと 
第2回(平成7年)山本 妙災害
第3回(平成8年)高橋 美智子小さな翼をこの空へ
第4回(平成9年)野尻 由依大すきなふくばあ
第5回(平成10年)佐藤 夏希お日さまの一日
第6回(平成11年)除村美智代大きなもの
第7回(平成12年)徳田 健ありがとう
第8回(平成13年)井上 朝子おくりもの 
第9回(平成14年)藪田 みゆき今日は一生に一回だけ 
第10回(平成15年)日沖 七瀬韓国地下鉄放火事件の悲劇
第11回(平成16年)佐藤 ななせ抱きしめる
第12回(平成17年)髙島 健祐えんぴつとけしゴム
第13回(平成18年)濱野 沙苗机の中に
第14回(平成19年)田村 美咲おーい!たいようくーん
第15回(平成20年)高橋 菜美空唄
第16回(平成21年)今津 翼冬景色
第17回(平成22年)西田 麻里命に感謝
第18回(平成23年)山谷 圭祐
第19回(平成24年)坂井 真唯クレヨン
第20回(平成25年宮嶋和佳奈広い海
第21回(平成26年)金田一 晴華心樹
第22回(平成27年)安藤 絵美拝啓 お母さん
第23回(平成28年)宮下 月希大好きな音
第24回(平成29年)宮下 月希心のトビラ
第25回(平成30年)阿部 圭佑ものさし
第26回(令和元年)上田 士稀何かのかけら
第27回(令和2年)宮下 音奏大好きな声
第28回(令和3年)横田 惇平ふくきたる夏休み
第29回(令和4年)野田 惺やっと言えた
第30回(令和5年)舘野 絢香気持ちをカタチに 思いを届ける