第16回矢沢宰賞

第16回矢沢宰賞

最優秀賞 ポプラ賞

冬景色   今津 翼


白い息が そっとこぼれる

ひんやりとした雪が 頬をぬらした


ぎゅっと握った手はあたたかくて

はなしてしまうのは惜しかった


何とも思われていないこと

私は知っている


だけどこの想いだけで

私は冬を乗り越えられる強さを得たよ


一緒に歩く帰り道

あのひとは嬉しそうに夢を語っていた


いつかどこかに行ってしまう

雪みたいな気がするのはどうしてだろう


傍にいられるだけで 嬉しすぎて

忘れているのかもしれない


人は出会い別れてゆく

まるで空から降る雪と それを吸収する

大地みたいに


胸がキュッと苦しくなる

どうか傍からはなれないで


握った手のあたたかさも

日だまりのような笑顔も


忘れたくない


忘れないようにしよう

四季の巡りも

今 私の傍を歩くこのひとのぬくもりも


この冬景色も

私の倖せも 全て
私は忘れないようにしよう
審査員
審査員

親しい友人であれ、先輩であれ、好きな人であれ、その人と手をかたく握りあっている熱い出会いのひとときの喜びが、雪の冬景色をあたたかいものにしています。
雪が消え、冬が去るように、やがて二人は別れてしまうかもしれませんが、手のぬくもりや幸福感は忘れられることはないでしょう。
自分を見つめるしっかりした心がすばらしい。

奨励賞 ポプラ賞

空   大西 真衣


空はいろいろな顔をもっている。
晴れている日はえがお。
くもっている日は少しさみしく雨の日はお日さまのなみだ。
夜になればたくさんの星を出していろいろな光を見せる。
いったいどこまで空はつながっているのかな?
きっと世界中に広がっていてみんな同じ物を見ているんだろうな。
国はちがっても同じ空を世界中の人が見てる。
それってすてきだね。
ことばはちがうけど、同じ所を見られる。
きっと空は世界の人をつなげているんだね。
審査員
審査員

空がもっているさまざまな顔について、自由に想像をふくらますだけでなく、想像力がさらに世界中にまで広がっているところに、楽しさも広がっています。
そう、国やことばはちがっていても、その世界を空がつなげているという着想はたいへんすてきです。

光の世界   瀬川 恵


涼やかな風が開け放した窓から流れ込み、白いカーテンと私の黒髪を静に揺らした。

微かにカサブランカの甘い香が漂い、遠くからピアノの優しい音色が聞こえてくる。

ベッドに寝そべり、目を閉じ深呼吸をする。

ふと目を開け壁を見ると、窓辺に置かれたプリズムの飾りが壁に小さな虹の子達を造り出していた。

机の上にあるガラスのフォットスタンドやペン立ても、小棚に置かれた白い薔薇を生けた花瓶や床に転がったビー玉からも、窓から射し込んだ光に反射して光の精霊が生まれた。

虹の子と光の精霊達で輝く部屋の中にいるだけで、私は穏やかな気持ちになれる。

光の世界にいるだけで心の中の闇はゆっくりと光に変わっていく。

怒りも憎しみも悲しみも、心の傷や痛みも全て光の中へ溶け出していくようだ。

この光の世界の中で過ごしている時間が、私にとって一番心が安らぎ落ち着ける時間。

たとえその時間が短かい時間であっても限られた時間であっても、ただ光に包まれている、それだけで心地良さを感じて幸せな気分になる。

木々のざわめきと燕と蝉の鳴き声を聞きながら、ゆっくりと目を閉じる。

(たまには光の中で寝るのも良いかもね)

そう思いながら私は、静かな眠りについた。

光の世界で眠れば、きっと素敵な夢を見る事ができるだろう。

この光の世界のように、美しい光に満ちたとても暖かく優しい夢を。
審査員
審査員

眠りにつく前の部屋をこまやかに、しかもカメラで追うようにていねいに描写することによって、部屋は光の世界そのものとなって満たされ、安らぎの時間をつくり出しています。
眠って見る夢の世界も、きっとすてきな光で輝いているにちがいありません。

彼等と光の声   小出 栞


闇に埋もれていた彼等の心が

光の声によって解かされたー

逃げ出すことすらしなかった鳥は

自分の力で 大きく羽ばたいて

光が眩しい世界へと飛び立っていた

彼等にはもう 籠なんていらない

だって彼等は・・・

大切なものを 知ることができたのだから

心に 鍵なんて必要ないんだ

籠を自らつくる必要もない

だって皆 愛することを

愛されることの暖かさの意味を

ちゃんと持っているのだから・・・

『どんな厚い壁だって壊していける

それは君の ほんの小さな勇気から

始まるんだ・・・』

この人を愛したいー

そう思った瞬間から君は

『人から愛されているんだよ』

優しく響いたその声は

眩しすぎる光の声だった
審査員
審査員

人も鳥もみな、心のどこかでいつも光を求めています。
愛によって籠や鍵から解放されて光に向かって思いきり飛び立った鳥は、愛されることのほんとうの意味を知ることでしょう。
愛の力の強さと大きさの前では、籠や鍵は無意味のものでしかありません。

弟の誕生日   伊藤 玲音


昨日、弟とけんかした

ちょっとふざけたつもりだった

いつものように

「ごめんね」ってあやまってみた

きっと、いつものように「いいよ」って

いってくれるはずだった

でも、「ダメ」としかめっつらで言うだけ

全然ゆるしてくれなかった

その日は口もきかなかった

すこしさびしかった

心が、ズキズキした

明日は、弟の誕生日なのにな

このまま気まずい雰囲気のまま

祝ってあげるのはいやだな

弟の誕生日は、

自分の誕生日よりも「おめでとう」って

うんと祝ってあげたいのにな

明日、何事もなかったかのように

祝ってあげたら

いつもの、あの笑顔で笑いながら、

「ありがとう」っていってくれるかな

いってくれるなら、

それはそれは最高の誕生日にしてあげよう
審査員
審査員

弟と喧嘩してあやまったのに「ダメ」と言われたら、口もききたくないよね。
でも「心がズキズキ」と痛むのは、お姉さんとしてもっとつらいことですね。
一言でもいい、「おめでとう」と祝ってあげたら、きっとゆるしてくれるでしょう。
姉弟喧嘩はいいなあ。

佳作

水って人の感情のようだ   岨  真人


雨は、そう「悲しみ」に近い感じだ。

まるで、空が泣いているように見える。

滝は、そう「怒り」に近い感じ。

まるで、怒りに押しつぶされるように感じる。

川は、そう「優しさ」に近い感じ。

まるで、優しく包み込むそんな風に感じる。

海は、そう「がまん」に近い感じ。

そう、あんなに大きいのだから

器が大きいと見える。

わき水は、そうすべての感情そんな感じ。

こんこんと色々な感情はこみ上げてくる。

そんな感じ。
審査員
審査員

雨や川や海やわき水、それぞれがもっているちがう表情を、よく観察して感情をもった人間であるかのように、みごとにとらえてみせました。
きみのその発見こそが何よりもこの詩の生命です。

声の力   若林 優恵


バレーボールはチームプレーだ

みんなで心を一つにしないと

ボールはつながらない

心を一つにするには声が必要だ

声を互いにかけ合うと心が一つになる

声にはすごい力があると思う

応援の声をきくと自信がもてる

声をかけ合い、自信をもてば勝利につながる

もちろん、技術も必要だ

しかし声をかけ合わないとチームの力は

発揮できない

声をかけ、

心を一つにすれば絶対勝てる
審査員
審査員

とくに団体スポーツは大きな声を出し、みんなの心が一つにまとまらないと力を発揮できません。選手も応援も声を出すことによって、元気や力がわいてきます。
技術だけじゃ勝てないね。

気になる   橋 夏楠


だれもいない

しずか

でも プールの水が

かすかにうごいてる

プールの中にだれかいるの?

目に見えないだれかが

泳いでいるの?

みんなでプールに入っているときは

プールの水のうごき 気にならない

だれもいないしずかなプールは

プールの水のうごき

気になる

気になる

気になってしょうがない
審査員
審査員

誰もいないプールをじっと見つめたことがないと、こういう詩はできません。
目に見えない誰かがほんとうに泳いでいるのかもしれないね。
ちょっとミステリーみたいで怖いし、すこし愉快。

バスケシューズ   棚村 香澄


先ぱいからもらった

バスケシューズ

新しいのもいいけれど

先ぱいからもらったシューズも

大好きだ

がんばったこと

悲しかったこと

うれしかったこと

楽しかったこと

みんなシューズに入ってる

先ぱい、うまかったけど

私もうまくなれるかなって思う

試合に出るといつもシューズに

元気をもらう

「よしがんばろう」
審査員
審査員

もらったお古のバスケシューズには、きっと先ぱいのプレーのすべてがこもっているでしょう。
元気をもらって、うんとがんばれるにちがいありません。
先ぱいと一緒にプレーするような喜び。

雲のように   岡  利樹


雲よ お前はいつも 自由に浮かんでいる

この 青い青い空に

風に吹かれて ゆっくりゆっくり

動いている

雲よ お前を見ていると 嫌なことを

忘れられる 前向きに 考えられる

悩んでいるときは なぐさめてくれる

不安なときは 大丈夫だと言ってくれる

お前は僕に 力をくれる

でも お前は泣くことがある

たくさんの涙を流す

お前は怒ることがある

叫び 大きな稲妻を落とす

そんなお前を見ていると

気持ちが暗く なってしまう

だから 空に静かに浮かぶ

お前のままでいてほしい

広い広い空で 形を変え 遊んでいる

風に吹かれて ゆっくりゆっくり

動いている これから どこへ行くんだ?

今まで 世界中を 旅してきたんだろう

いろいろなものを 見てきたんだろう

僕は お前がうらやましい 僕も大空を飛んでみたい そして

いろいろなものを 見たい

たくさんのことを知りたい

雲よ 僕はお前のように 空を飛びたい
審査員
審査員

空を飛びたいという夢はだいじな空想です。
雲に呼びかけるスタイルで、大きくふくらんでくる空想は、自分の心をもふくらませてくれます。うれしいときもつらいときも雲を見あげよう。

友達   佐藤 寿哉


朝は、石みたいに固い

昼が近づくと元気になって

夜が近づくとねんどみたいにやわ

らかい

野球やテスト

負けたり、悪かったら四角形

勝ったり、良かったら円形

いつも元気でやわらかくて

円形だったら

君はもっとがんばれるよ
審査員
審査員

一日も時間によって固かったりやわらかだったりするし、勝ったり負けたりで四角形になったり円形にもなったり……楽しい想像です。
四角形でも円形でもがんばろうよ。

プールの水   松永 優芽


ああ、いたい、いたい

ああ、いたい、いたい

ちょっとやめてよう

みんながよってたかって

わたしをいじめる

たたいたり、けったり

あざやきずだらけ

ばんそうこうを

はろうとしても

すぐとれちゃう

薬をぬっても、

油がういちゃう

でも、夏は、

うれしい

毎日みんなが

遊びに来てくれるから
審査員
審査員

プールの水のきもちになって書いたところがおもしろいなあ。
いたかったり、きずだらけになっても、夏はみんながおおぜいあそびにきてくれるから、水もうれしいのです。

初めての中間試験   下山 匠


テスト開始

運命のチャイムが鳴った

ペンをすばやく走らせながら

完走をめざすマラソン選手に

なった気分

ヤバイ

覚えていない

さっきまでわかっていたのに

記憶が小鳥のように

飛んでいった

登り坂で足どりが重くなった気分

気が遠くなりながらも

ひたすらペンを走らせる

気がついたら最後の問題を

解き終えていた

先生に答案用紙を渡した

机の上に

黒くなった消しゴムが

ポツンと転がっていた
審査員
審査員

覚えていたはずなのに、テストが始まったとたんに、あわてたりあせってしまうことがあります。でも落ち着いて無事終了。
よかったね。黒くなった消しゴムありがとう。

おばあちゃん   佐藤ひかり


おばあちゃんは

家事全般の仕事をしている。

そしておばあちゃんは

家事全ての仕事をしているのに笑顔でいる。

おばあちゃんはもう年なのに。

仕事をしていてもおばあちゃんは、

私のように、弱音をはいたりはしない。

どうして、もう年なのに、弱音を

はかず、笑顔でいられるのだろう。

家族の笑顔を楽しみにしているのかな。

おばあちゃんが、

その笑顔を待っているのなら私は、

いつも笑顔で「ありがとう。」の言葉を届けよう。
審査員
審査員

おばあちゃんは、若いときから長年やってきた家事の大ベテランです。
家族の笑顔を何よりの楽しみにしています。
「ありがとう!」のことばと、ときにお手伝いもしよう。

雲と空とぼく   橘 雄一郎


雲がうごいた

いや

空がうごいたのかな

それとも

雲と空は同時にうごくの

ぼくはうごいていない

でも

目はうごいている

そうか

だから雲と空はうごいているのかな

いやちがう

やっぱり

雲も空もうごいているんだ

ぼくもうごきだそう
審査員
審査員

雲だけでなく、空もじつはうごいているのかもしれない。
じっと観察しているといろんなことがきっとわかってくるよ。
でも空や雲に見とれてばかりいないでうごき出そう。

くろ   安藤 駿


ぼくが いっても

ほえてくれない

くるまが とおると

ほえるくせに

おい、くろ

どうして ほえないの

ほえないと

おこるぞ、

くろ
審査員
審査員

あまりほえてばかりいる犬はいやだけど、「くろ」がちっともほえてくれないのは、きっとしゅんクンのことが好きなんだ。
でも、たまにはほえてほしいよね。わかるなあ。

十四歳の挑戦   中村 悦基


FAX番号をおした

ピポパポ、一回目は失敗した

ピポパポ、もう一度おした

成功した

先輩が、心配そうに見とった

上手にできるかなと、見とった

食堂で、ウエイターをした

「いらっしゃいませ。お茶にしますか。水にしますか。」

「ビール。」

おもしろい人がいるものだ

団子をこねた

手でこねようとしたら、いきおいよく

下に落ちた

失敗した

もう一度、こねた

ボニョボニョ、ころころところがした

今度は、下に落ちなかった

団子を串にさす人

団子を入れる袋の枚数を数える人

いろんな人がいて、

それぞれにできることをして、

助け合っていた

はたらくって、いいなあ

人間って、いいなあ
審査員
審査員

何ごとにも成功や失敗はつきものだから、慢心してもいけないし落胆してもいけない。世の中にはさまざまな人が働いていて、いろいろなことがあるからおもしろいのです。

信号   北村 蓮


かれらは三人兄弟 三人はいつ

も一緒でいつも同じかっこうをし

ている 長男の赤はいげんがあっ

てみんなを立ち止まらせる

次男の黄はやさしいお兄さんで

そのまま進む人もいれば立ち止ま

る人もいる

末っ子の青はまだまだお子さま

なので立ち止まる人はだれもいな

い それでもかれはみんなの人気者

かれらは三人兄弟 いつでもど

こでも仲良し三人兄弟
審査員
審査員

信号の三色を三人兄弟ととらえた、その着眼に「なるほどなあ」と感心させられました。三人の赤・黄・青の性格も的確で、北村君独自の見方が生きたおもしろい詩です。

いいにおいのホットケーキ   佐藤 鮎


パリパリパリ

コンコンコン

パチャパチャパチャ

サーサーサー

ホットケーキミックスが

どんどんはいるジュージュージュー

くるっポン!

くるっポン!

ホットケーキの

できあがり!

フワフワしてる!

あまくておいしい

においだね
審査員
審査員

ホットケーキをつくる作業をことばで説明するのではなく、音をならべて描写したところに感心させられました。
リズム感があって、できあがったケーキもきっとおいしいね。

入選

てんてんてん   赤星 樹


てんま

てんまばし

てんのうじ

てんがちゃや

てんじんばしすじ6ちょうめ


てんのつくえきはおもしろい
審査員
審査員

「てん」のつくこれら五つの駅は、いずれも大阪にほんとうにある駅のなまえです。そこに目をつけてならべた遊びごころに感心し、くりかえし楽しませてもらいました。

宿題   今井 愛実


宿題は、

人間に きらわれているけど

悪いことをしていない。

宿題は、

べつに 子供をきらいだから

いっているわけじゃない。

人間が宿題と仲良くすれば、

宿題はきっとみんなと喜ぶでしょう。
審査員
審査員

そうです。宿題はみんなにきらわれるけど、宿題そのものが悪いわけじゃありません。かわいそうに。
きらっていると宿題はできないし、仲良くすればきっとよくできるよ。

たんぽぽ   小田 有紗


たんぽぽは黄色い花をさかせます。

黄色いけれど白くなる

フワフワフワリととんでいく。

ついたところはどこの国?

フワフワフワリととんできて

日本についたよ。

ついたよついたよ

やっとついた!

「あっあそこに仲まがいるよ。」

「そうだねそうだね。」

たんぽぽたちはフワフワフワリ

また、黄色い花をさかせました。
審査員
審査員

たんぽぽはどこからどこへとんでいくのでしょう? 
よその国から日本へとんできたととらえたところがすばらしいなあ。
やさしい心がたんぽぽをいきいきさせています。

恋心   川口 花香


好きな人ができると胸がドキドキする

好きな人と話をすると胸がもっとドキドキして本当にきんちょうしてしまう

わたしは、かれを見ると心の中から声が聞こえてくる

そう「好き!」っていう言葉が聞こえてくるんだ

心の中でドキドキする

胸をおさえてみると、ドキドキが早くなっていく

やっぱり人間はふしぎだ

好きな人が出来ると、心の中がドキドキする

ふしぎだなぁ
審査員
審査員

胸がドキドキするような恋ってすばらしいなあ。
好きな人ができるということはすごいことなんだ。
詩のなかでたくさん使われている「ドキドキ」が伝わってくるようです。

たいよう   菊池 麻衣


毎日みんなを明るく

てらしてあげるよ。

ぼくが出てくるまえに

ゆきだるまにかさをさしてあげて。
審査員
審査員

みんなを照らしてくれる太陽は何よりもうれしいけれど、ゆきだるまがとけてしまったら困るから、「かさをさしてあげて」とお願いする。
なんてやさしい気持ちでしょう!

音楽   小菅はなえ


音楽といえば

歌楽

器

雨の音

水そうのブクブク

水たまりの中に入って

とびはねた時の音

水道のジャーッ!

飲んでいる時の音、ゴックン

水をためておいて

せんをぬいたとき

ブクブク、ジュジュジュジュって

すいこまれる音

考えていくと楽しいな
審査員
審査員

音楽はさまざまな「音」として、私たちのまわりでたくさん活動しています。
はなえさんはそこにじっと耳をすませ、それらの「音」を楽しんでいます。
それが本当の音楽。

勇気   小林 晃


僕はいろんなことで勇気をもらっている。

友達からのアドバイス。

多くの人々の支え。

好きなことからももらっている。

僕はそうして、今、歩んでいく。


僕は鉄道ファン。

休みの日に考えるのはもっぱら電車のこと。

ときには一人で旅をする。

知らない場所に行き、

知らない人と話しをする。

そして、勇気をもらう。


僕は蒸気機関車と同じ。

走るのも遅いし、他の人に追い越されてしまう。

だけど、追い越されても、

〝ゆっくりとあせらずに?歩んでいく。

いろんなことからもらう勇気を、

燃料にして。
審査員
審査員

人は誰でも一人で生きているわけじゃありません。
人から勇気をもらったり、また人に勇気をあげたりしています。
勇気を燃料にしてあせらずマイペースで旅を楽しもう。

ぼくのたからもの   小林 翔


ぼくのたからものは

おばあちゃん


しゅくだいを

やさしく教えてくれる


ぼくにあうように

ベストをつくってくれる

ジャンパーのかけるところを

なおしてくれる


大すきなカレーを

つくってくれる


おばあちゃんは

ぼくのたからもの
審査員
審査員

何でもできてやさしいおばあちゃん。
だれだってじぶんのたからものにしたくなるよ。
たからものはいつまでも大切にしよう。
たまにはおばあちゃんに何かしてあげよう。

あったまる声   佐藤 知幸


「おはよう」

「こんにちわー」

「こんばんわー」

「ありがとう」

「がんばろうよ!!」

「君ならできるよ!!」

「いってらっしゃい」

「いってきま~す」

「一緒に遊ぼうよ」

「いいよ~」


それぞれみんな心が

温まる


心が温まると

みんな

気持ちが楽になる声
審査員
審査員

ふだんの私たちのなにげない挨拶の声を、簡潔にとりあげたところに注目しました。言うまでもなく声に出す挨拶は大切で、人々のお互いの心を温めなごませてくれます。

カレンダー   品田 恵


今日は今日でおしまい

明日が待っているから

昨日には戻れない

明日が待っているから

明後日には行けない

明日が待っているから


明日が残念がらないように

今日を生きたい
審査員
審査員

昨日・今日・明日、順々に日がめぐるのは当たり前だけれど、あえてそのことをテンポよく組みかえてみせました。
その日々を生きているもののようにとらえたおもしろさ。

ちょうちょ   島 真恋


ねえ、

君は、

どうして羽があるの

わたしはないのに


ねえ、

君は、

どうして手がないの

わたしはあるのに


ねえ、

君は、

どうして一人で飛んでるの

わたしは友達といるのに


ねえ、

君は、

どうしてしゃべれないの

わたしはしゃべれるのに


そうか。

君は君。わたしはわたし。
審査員
審査員

ちょうちょとわたしをくらべて、あるもの・ないもの、できること・できないこと。不思議といえば不思議です。
それぞれちがっているから、かえって仲良くなれるんだ。

おしえて   菅谷 理美


おひさまおひさま

ひかる玉どこ


ほしさんほしさん

ちょうちょうを

つかまえて下さい


ありさんありさん

ネックレスはどこ


ちょうちょう

わたしにとびかたを

おしえて下さい


はちさんはちさん

わたしに

はちみつを下さい


みずさんみずさん

わたし のどがかわいたから

のませて下さい
審査員
審査員

おひさまからみずさんにいたるまで、すなおに心のままにつぎつぎとお願いごとをしています。このすなおな心にこたえて、それぞれていねいにおしえてあげてください。

かさぶた   武田 義大


かさぶたを取る

すると何度も何度も

出てくる


かさぶたをさわる

すると ざらざらしている

かさぶたをなでる

すると 動いて喜んでいる

そんな かさぶたを見ていると

かさぶたが ぼくのことを

守ってくれているように思えてくる


そして 最後に

かさぶたは ぼくの体を

治してくれる
審査員
審査員

かさぶたはからだを守って治してくれます。
あわててかさぶたを取ったりいじめたりすると、なかなか治りません。
かさぶたに対する友だちのような親しさがうれしいな。

ザリガニ   土田 豊裕


ザリガニのはさみが つよい。

たちあがるところが かっこいい。

人がたってピースしている。

かっこいい。

はさみの力が つよい。

つっつくと おこる。

口から あわが出てる。

ひっくりかえると じぶんで おきる。

水草を はさみで つかむ。

ぼくは とっても ザリガニがすき。

水よう日に ザリガニとり

すごくたのしかった。

みんなで とりにいった。

川に とりにいった。

たのしかった。

わなをかけて きた。

たのしかった。
審査員
審査員

ザリガニをこまかくていねいに観察しているところに感心しました。
それはザリガニが大好きだからでしょう。
おこって立ちあがると、かいじゅうみたいでかっこいいよね。

青いりんご   内藤 しおみ


りんごはなんで赤いんだろう

それは照れているから


なんで照れているのかなぁ

それは甘い恋をしているから


だからりんごは恋をしないと赤くなれないし、甘くもなれない

なので青いりんごは恋がしたい

そして甘い一人前のりんごになりたい


だから青いりんごは恋の修行中
審査員
審査員

りんごはなぜ赤いのか、という素朴な疑問がこの詩の入口になっています。
そこが大事なところです。
りんごは恋をしないと甘くなれないという、これは一大発見でしょう。

すもう   中屋  匠


日馬富士 きのうまけたね。

きょう、がんばってね。

がっこうおわったら

テレビで すもう見るよ。

がんばれ。

ぼくが、おうえんしているよ。

四れんぱいだけど

ふつうのすもうで

よってあいてを見て

そして、かったら

ぼく「わーい」って さけびたい。
審査員
審査員

匠クンはすもうが好きなんだね。
モンゴル出身の日馬富士(はるまふじ)は小柄だけど、けいこ熱心だし強いね。
だから人気があるんだ。おすもうさんにまけずがんばろう。

生命   林田 望来


「生命」

それは 神様からもらった

大切な 大切なたった一つの宝物

一人ひとりが

「楽しい」こと

「生きる」意味を

見つけられるようにくれた

大切なチャンス

この星に生きる全ての人々に

「自分」って何か

「何のために生きてくのか」

知るために与えられた

大切な試練


もしも生まれ変われても

今の「わたし」にはなれないから

「今日」という日を

「明日」という未来を

精いっぱい生きて

少しずつ、

答えを出していこう
審査員
審査員

たった一つの、たった一回かぎりの生命、その大切さにたいする正直な気持ちが書かれています。
生きるということは、「自分とは何か」を問いつづけることかもしれない。

いもうと   原田 關世


いもうとは

おひるねをすることがおおいです

いもうとは

いつも

わたしの

てを

にぎってくれる

とても

あたたかい
審査員
審査員

おひるねのとき、いつも手をにぎってくれるいもうと、とてもかわいいんでしょう。仲の良いきょうだいだろうと想像できます。
ときにはけんかもしていつまでも仲良くね。

おもしろいおと   東原 千優


キュー

ボーン

スパーン

バタバタ

ぼちゃん

がちゃん

にょきにょき

びちゃびちゃ

ぶーぶー


おとをきいたらわたしはわらう。

わらいすぎるとわらいがとまらない。

なみだがでる。

おもしろいおとがすき。

うれしくてわらいがとまらなくなる。
審査員
審査員

ここに書かれた音はいったい何だろう? 
想像してみるのも楽しいし、人によってちがう答えが出てくるでしょう。
さあ、もっともっといろいろな音をきいてみましょう。

青春花   樋口 彩


部活という名の鉢植えに

バレーという名の種をまき

汗という名の肥をやって

仲間という名の光をあびたら

勝利という名の花が咲く
審査員
審査員

たった五行の詩で、バレーの部活の勝利までをうたった表現力に注目させられました。そのなかで汗という「肥」と、仲間という「光」の大切さもきちんととらえています。

仲間   広川 勇輝


「ピー。」

ホイッスルの音が

コート一面に響き渡り、

ボールと一緒に走りだす。

緑色の芝の上を走りだす。

ゴール目指して走りだす。


ひとつのボールが

みんなをつなぐ。

みんなの心が

ひとつになる。

仲間のパスを信じて、

走り続ける。


そして、みんなでつないだボールが

ゴールにすいこまれる。
審査員
審査員

サッカーの試合でしょうか。芝生の上を一つのボールを追いかける仲間たちが、懸命に走る、走る……。
仲間が心を一つにつなぐことで、ボールをゴールへ追いこむようす。

生きること   藤井 友美


「死にたい」

何回も思った

生きていても つまらないし

悲しい気持ちになってしまうから

だから私は何回も死のうとした

部屋からとびおりようとした

刃もので自分を傷つけようとした

死んだら おじいちゃんやおばあちゃんに

逢えると思ったから


だけど私は死ぬことが出来なかった

死ぬ勇気が無い人間だって分かった

そんな自分が

むかつくような

悲しいような

複雑な気持ちになったんだ

次の日 また死のうとした

けれど その日たまたまテレビで

生きたくても 生きれない子達が映った

私は何不自由なく生きている

それなのに自分の命を

この世に一つしかない自分の命を

無いものにしてしまおうとしていた

私は何て愚かなんだろう?

私は何て馬鹿なんだろう?

私の目から自然と涙が

こぼれていた


私はもう死ぬことなんて考えない

私は生きられない子の分も

生きるんだ

それが今

私に出来ること

やらなくてはいけないこと

生きることなのです
審査員
審査員

とてもつらいことがあって、死にたいと思ったのでしょうが、「死ぬ勇気」なんてもってはいけません。
いろんなことがあっても、生きるってすばらしいことに気づこう。

ゆめ   本間 佳斗


ぼくのゆめは大工さん。

お父さんがやっているから。


ぼくのゆめはバスケのせん手。

お兄ちゃんがやっているから。


ぼくはどっちもなりたい。

そのためには、

べん強がんばる。

バスケの練習がんばる。

大きくなったらぜったいなるぞ。

ゆめをかなえるぞ。


あなたのゆめは何ですか。
審査員
審査員

お父さんやお兄さんがやっていることと同じゆめをもてるなんて、とてもすばらしいことです。そのためにはお父さんたち以上に、勉強もスポーツもがんばらなくちゃね。

心配せんでええねん   矢追 海斗


おれをそんなに心配せんでええねん

おれ大丈夫やから

おれ地理とか得意やから

どんなに遠くに行っても

家に帰れる人やから

おれ体力自信あるんやから

ケガとか風邪とか

ならんでー


子供のおれでも

一人でゆっくり歩きたい時も

あるんやから

早よ帰ってこいや!なんて

言わんといてよー


そのうちには帰るんやから

心配せんでええネン
審査員
審査員

家族が心配してくれるのはわかっているし、うれしいけれど、自分を信用してほしいという気持ちも大きい。
そこに海斗君の成長が感じられます。大阪弁が生きています。

心の形   矢沢 理紗子


心の形

なんの形?

ハートの形?

丸い形?

四角の形?


心の形

どんな時に

どんなになるの?

うれしい時

悲しい時

びっくりした時

それぞれ

どんな形になるの?

心の形
審査員
審査員

とってもいい問いかけです。心はハート型とはかぎりません。
ほんとうは誰にもはっきりわからないかもしれません。
そのときの人の気持ちのあり方でちがってくるのかも。

すきなこと   山谷 萌


わたしはほんをよむのが

だいすき

すらすらよめると

うれしいからです。

1ねんせいになって

たくさんよみました。

「おもすびころりん」が

いちばんおもしろいです。

おむすびが

かけだしていったから

おもしろかったです。

これからも

たくさんほんをよみたいな。
審査員
審査員

ほんがだいすきなことはすばらしいことです。
ほんにはじぶんがしらなかったことがらやせかいのことが、たくさんつまっているんだから。わくわくするおはなしもいっぱい。

星   山谷 英里


星ははずかしがり屋さん。

みんなが空見上げるお昼ごろ、

太陽の光にかくれてる。


夜、太陽がしずむと

月といっしょにこんばんは。

でもまっくらな空に、

がんばって光ってる。

星はがんばり屋の

はずかしがり屋さん。
審査員
審査員

はずかしがり屋さんの星のはずかしそうなようすが、目に見えるようです。
だから星は暗い夜にしか出ないんだね。
英里さんもがんばり屋のはずかしがり屋さんなのかな?

かわいい   吉田 千夏


学校から帰ってきたというのに

「いっしょに遊ぼ」という妹


何をしようかと考えているというのに

「つまんない」と言い出して

お人形と遊んでる


「じゃあいっしょに遊ばないよ」というと

いじけて怒りだしてなぐりかかってきた

それを両腕でうけながら

「かわいいな」

「力も強くなったな」と思い、

頭をなでてやった


これからもいっぱい遊んでやろう
審査員
審査員

遊びに応じてくれないからと怒った妹に対して、とりあわずに「かわいいな」と頭をなでてなったのは、いかにもお姉さんらしく頼もしいね。姉妹喧嘩もときにはいい。

笑顔   渡部 光恵


笑顔は人を楽しい気持ちにさせる

幸せにする

いつも笑顔でいれば、その人の周りには人がたくさんいるよ

私の身の周りにも笑顔の人はたくさんいる

笑顔でいるっていうこと忘れちゃいけないんだ

笑顔は〝まほう?みたいだね

いつも笑っていられるような自分になれるといいな

あなたも一緒に笑顔で毎日を過ごしてみませんか?

きっと今までの生活が変わってくると思いますよ
審査員
審査員

悲しいこともあるけれど、うれしいときや楽しいときは、笑顔を絶やさずにいたいものです。笑顔の魔法は笑顔を生んで、周囲の人たちをどんどん楽しくさせてくれるよ。

自転車   渡邊 雄也


僕は車や電車より自転車が好き

遅いけど速く感じるから好き

ペダルをこぐのが疲れるけど好き

自転車って車よりもハンサムだと思う

自転車は小さいから細い道でもすいすい

なのにどうしてみんな車を選ぶの?

自転車の方がいいのに

どうしてみんな車ばっかり

未来のことを考えると自転車がいちばんだ

ああ大好きな自転車

一生の友になるだろう
審査員
審査員

エコカーが取りざたされる時代ですが、あくまでも好きな自転車にこだわって、「車よりハンサムだ」という独自な発見に大きな拍手を送ります。
私も自転車が大好きです。

第16回矢沢宰賞の審査を終えて

 月岡一治さんのあとを受けて、矢沢宰賞の選考をお引き受けしたのは今年のはじめでした。その後、全国の若いみなさんからどんな作品が寄せられるのか、それらをどこまで読みこむことができるか、そう考えると不安でいっぱいになりました。しかし、それにも増して新たな期待がふくらんできました。

 このたび、実行委員会から送られてきたたくさんの作品は、私の期待を大きく超えるものでした。誰のものであれ、人の詩を読むときはいつも新鮮ですがすがしい緊張を覚えます。まして児童・生徒のみなさんの作品ですから、とりわけ新鮮な気持ちで満たされました。

 「将来の未知の時間がたっぷり約束されているみなさんのことばの一粒一粒は、自分の呼吸を裏切ることなく輝いています。ことばの一粒一粒をゆさぶり起こし、ていねいに磨く行為こそが詩作です」ということを、私は選考以前に確認していました。

 みなさんから寄せられた作品のどの一編をとっても、ことばは鮮やかな発想に裏づけられ、曇りない輝きを放っていました。このことは選にもれた作品にも同様に言えることを、ここではっきりと申しあげておきます。作品に優劣をつけることには躊躇せざるを得ませんが、

 この場合は仕方がありません。選考するという原理は、すぐれた作品を持ち上げることが目的であって、及ばない作品を落としたりはずしたりすることではないと私は考えています。

 個々の選評は作品に付してありますから、それらをお読みください。地元見附市の応募数が多いのは当然だと思います。でも、選考にあたり私は地域や学校を無視して、あくまでも作品本位に徹しました。ちょっと大人びた作品、無邪気な作品、多彩な発想や表情│自分自身のことばが発する輝きが忘れられません。もし、矢沢宰さんがこれらの作品をお読みになったら、きっと讃嘆の声をあげられたにちがいありません。

 みなさん、すてきな作品をほんとうにありがとう!

  • 審査員 八木 忠栄
    1941年見附市生まれ。日大芸術学部卒。
    「現代詩手帳」編集長、銀座セゾン劇場総支配人を歴任。
    現在、個人誌「いちばん寒い場所」主宰。日本現代詩人会理事。青山女子短大講師。
    詩集「きんにくの唄」「八木忠栄詩集」「雲の縁側」(現代詩花椿賞)他多数、エッセイ集「詩人漂流ノート」「落語新時代」他、句集「雪やまず」「身体論」(吟遊俳句賞)。

年ごとの入賞作品のご紹介

最優秀賞受賞者タイトル
第1回(平成6年)山本 妙本当のこと 
第2回(平成7年)山本 妙災害
第3回(平成8年)高橋 美智子小さな翼をこの空へ
第4回(平成9年)野尻 由依大すきなふくばあ
第5回(平成10年)佐藤 夏希お日さまの一日
第6回(平成11年)除村美智代大きなもの
第7回(平成12年)徳田 健ありがとう
第8回(平成13年)井上 朝子おくりもの 
第9回(平成14年)藪田 みゆき今日は一生に一回だけ 
第10回(平成15年)日沖 七瀬韓国地下鉄放火事件の悲劇
第11回(平成16年)佐藤 ななせ抱きしめる
第12回(平成17年)髙島 健祐えんぴつとけしゴム
第13回(平成18年)濱野 沙苗机の中に
第14回(平成19年)田村 美咲おーい!たいようくーん
第15回(平成20年)高橋 菜美空唄
第16回(平成21年)今津 翼冬景色
第17回(平成22年)西田 麻里命に感謝
第18回(平成23年)山谷 圭祐
第19回(平成24年)坂井 真唯クレヨン
第20回(平成25年宮嶋和佳奈広い海
第21回(平成26年)金田一 晴華心樹
第22回(平成27年)安藤 絵美拝啓 お母さん
第23回(平成28年)宮下 月希大好きな音
第24回(平成29年)宮下 月希心のトビラ
第25回(平成30年)阿部 圭佑ものさし
第26回(令和元年)上田 士稀何かのかけら
第27回(令和2年)宮下 音奏大好きな声
第28回(令和3年)横田 惇平ふくきたる夏休み
第29回(令和4年)野田 惺やっと言えた
第30回(令和5年)舘野 絢香気持ちをカタチに 思いを届ける