第10回矢沢宰賞

第10回矢沢宰賞

最優秀賞 かいばみ賞

韓国地下鉄放火事件の悲劇   日沖 七瀬


突然、けむりがたちこめた。

まっ暗闇の中、必死にもがいていた

無数の命。

まっ暗闇の中、光を探していた

無数の命。

それぞれの思い出があった。

それぞれの家族があった。

それぞれのぬくもりがあった。

それぞれの好きな音楽があった。

それぞれの悩みもあった。

それぞれの希望があった。

それぞれの夢があった。

それぞれの探している何かがあった。

それぞれを愛してくれる人がいた。

それぞれに愛する人がいた。

それぞれの人生があった。

それぞれの未来が確かにそこにあった。
審査員
審査員

読むと、百数十名の命が奪われた悲劇が、目の前に再現されてきます。
テレビが映し出せなかった犠牲者たちの心の叫び。
今あなたの心によって、浮かびあがりました。

奨励賞 1席 かいばみ賞

お父さんが帰ってきた   萩原 洋平


お父さんに久しぶりに会えた

電話より 大きい声

うれしくてギュッと手をにぎった

大きな手

いつものお父さんの手


いっしょにごはんを食べた

「二十歳になったら一緒に酒飲もう」って言った

はやく二十歳になりたい

お父さん 仕事かわって

ずっと家にいればいい
審査員
審査員

お父さんが帰ってきたうれしさを、こんなに見事に伝えるなんて。
「電話より 大きい声」。そして生まれた日からあなたをいっぱい抱いてきた大きな手。
萩原君の心の目には、そんなお父さんの顔がよく見えている んだと思う。

奨励賞 2席 かいばみ賞

地面につもった雪から 屋根につもった雪への手紙   明地 美穂


ぼくがはじめて地面におりたとき

君は屋根の上にいた

「いっしょにとけて春になろうね」

やくそくしたのに

君はどこへいったの?

春はもうすぐそこだよ

いっしょに春にならないの?

目がさめたら君がいない

空にも聞いたよ

雲にも聞いたよ

ある日

ぼくはやっとわかった

君は春が来ないうちに

小さいしずくに

なったということ
審査員
審査員

地面につもった雪と、屋根につもった雪との約束。こんな世界を考えるなんて…。
明地さんの来年の詩が楽しみです。

奨励賞 3席 かいばみ賞

おじいちゃんへの手紙   中里 慧


おじいちゃん聞こえますか

今朝、おじいちゃんの所へ

チョビが行きました

ユウと2匹の散歩

大変だけど

お願いしますね

おじいちゃん

今何をしていますか

やっぱり天国でも植木を

いじっているのですか

おじいちゃんの庭も

だいぶ変ったけれど

今は、おばあちゃんの

花、花、花で

いっぱいです

だから窓から見える庭は

やさしい春のにおいで

いっぱいです
審査員
審査員

中里君の心の中にも、天国がある。その分、心の世界が広いのです。
その世界のおだやかなこと…。
私も窓から、おばあちゃんが花を咲かせる庭をながめ、おじいちゃんがいる空を見上げてしまう。

空   青木 茜


空は 海のようだ

白い 船が いくよ

気持ちいい 波に ゆられて

わたしたちの ところにも

波の しぶきが とんで くる
審査員
審査員

イメージが、とてもあざやか。読むと、本当に波のしぶきがとんできそう。
わたしたちとしたところが、とてもいい。

私の時間   肥田野 優希


この前までは暗かった夕方の空

なのに今は こんなに明るい


時間は確実に進んでいる

なのに私は 時間の中に残されたまま

どこにも行けずに 少しも動けずに


なぜだろう?

周りは確実に動いていて 進んでいて

なのに私は

どこにも行けずに 少しも動けずに

時間を感じることができずに

とり残されたまま

私だけが一人

とり残されたまま


毎日の中に 答えはあるんですか?

私の求めてる 答えはあるんですか?


この前までは暗かった 夕方の空

なのに今はこんなに明るい 夕方の空

答えのみつからない私を包んでいる

夕方の空
審査員
審査員

誰も私に、何もしてくれない。そう思う人は多い。誰かじゃない。
自分がしなければ、何も生まれて来ないんだ。そう気づく人は少ない。
その一歩手前の時間の中にいる、あなた。

佳作

こたつ   布施 樹


お父さんの足、

お母さんの足、

お兄ちゃんの足、

そしてぼくの足。

こたつの中で、

ぼくの足とお兄ちゃんの足が、

いちばんつめたい。
審査員
審査員

どんな思いを伝えたかったのか、よくわかる。
家族って、いいなあ。こたつは、いいなあ。

とんびのこと   逸見 菜穂


とんびって

きれいななきごえだね

でも

うるさすぎるときもあるね

ピューピューってきこえるよ

ハウスに入って

やさいをあらしてたべることもあるね

こわいなあ

とんびのとびかたってかっこいいね

はねをいっぱいひろげて

とぶんだね

さいしょは

はねをパタパタしてから

とぶんだね
審査員
審査員

よく観察しました。こわくなかった? 夢の中の空にも、とんびがとんだことでしょう。

アリ   花井 敏之


アリがえさを運んでいる

体より大きなえさを運んでいる

生きるために運んでいる

僕は四月からアリになる
審査員
審査員

男なんだなあ、こんな気持ちになるなんて。
アリとキリギリスの話もある。根気よく、働こう。

秋の音   中田 実希


落ち葉を踏む音

やきいもを売りにくるおじさんの声

さんまをやく音

いちぢくを鳥がつっつく音

稲刈りをする音

台風のニュース

風にゆれるススキの音

雨がコスモスにおちる音

運動会を知らせる花火の音

「シチューができたよ」という母の声
審査員
審査員

こんな秋の音があるなんて、知らなかった。
お母さんの声の中にも、秋がある。

お父さんへ   大西 恵梨佐


私は、お父さんの子に産まれてよかった

お父さんの子に産まれてなかったら

お父さんを知ることはなかった


タクシーに乗って一生懸命働いている姿を

私は家の窓から見ている
 

お父さん、頑張って!

そう叫びたくなった


お父さんに私の気持ち通じてるかな


お父さん、私を男手一つで育ててくれて

ありがとう

私も働いたら、お父さんのように頑張ります
審査員
審査員

自分の気持ちがあなたに通じていることを知って、お父さん、うれしいだろうな。
そしてまた、一生懸命、働く。

ぼくんちの父ちゃん   佐藤 晃典


父ちゃんは

漁業をしている

海から帰ってくると

大きなブリを持ってくる

「でっけーぞ」

これが父ちゃんの口ぐせだ


ぼくの知らない所では

消防団

大工

父ちゃんはかつやくしている


ぼくもこんな

父ちゃんに

なりたいな
審査員
審査員

父ちゃんと呼ばれると、父親はうれしい。
父ちゃんという言葉には、父ちゃんのこと、好きだよっていう、響きがある。

春の予感   太田 裕子


あなたは

どんなことで春を感じますか

日が長くなること

暖かい日差しになること

空が明るくなること

お店に春色が並ぶこと

春の高校野球が始まること

春を感じることは

人それぞれ違うけど

何かで春を感じています

私も

もうすぐ春を感じます

私にとって

少し特別な春の予感を

それは

全く知らないところに

飛び込むことです
審査員
審査員

不安よりも、世界があったかい方へ変わっていく予感がすると言うあなた。
変えるのはあなただけれど、支える人たちが、きっといる。

どうぶつ   石田 真裕


きりんさんはのっぽさんていわれて

ぞうさんはおでぶさんていわれて

ライオンさんはおこりんぼうっていわれて

かばさんは、はみがいてるっていわれて

おさるさんは手あらってるっていわれて

くじゃくさんはじまんしてるっていわれて

いろいろだな
審査員
審査員

声を出して読むと、名前を呼ばれた動物たちが、つぎつぎと私の方を見る。
おもしろい、動物たちの紹介。

おひさまと赤とんぼ   伊藤 彩香


おひさまと赤とんぼって

どこかににたいろがあるね

それは、あかいろ

いい色だね。

やさしくなるいろだね。

これからも、

いっしょにいれると

いいよね。
審査員
審査員

あかいろは、気持ちがやさしくなる色だ。確かに、そうだねえ。
だからみんな、おひさまが好きなんだねえ。

音   古木 知香子


電話の音は笑っている

川の音は子守歌

車の音はおこっている

かみなりの音はおこられた声

ほうちょうの音はリズムをとっている

風鈴の音はやさしい歌

バイクの音はストレス発散


私はいつも

音の世界を聴いている
審査員
審査員

いつも気持ちを張りつめて音の世界を聞いていないと、周囲のことが わからない。
いいえ、私はいつも、音 の世界を聴いている。耳を澄ます。周囲のことが、よく見えてくる。

「空へ」   福壽 真希


きれいな青空でいて下さい。

太陽がまぶしい晴れでいて下さい。

雲ですずしくして下さい。

かさをさしたいから、雨を降らせて下さい。

雪だるまを作りたいから、寒いけど雪を降らせて下さい。

雷がこわいけど見たいから時々、落として下さい。

台風の大雨でかさをさすから、取らないで下さい。
審査員
審査員

ちょっと勝手な空へのお願い。でも時々だけど、きいてくれる空

木の気持ち   高橋 麻弥


木を見上げていたら

木の気持ちがわかった


いい風だな。

天気が晴でよかったな。

今日は、いい気分だな。

と思っているんだ


わたしの感だから

本当は、どう思ったのかな。

しりたいな。
審査員
審査員

 多分、あたっています。風にひるがえる葉っぱたちを見ていると、私もそう思う。

できなくても   三本 志織


先生が教えてくれた。


お母さんも言っていた。


何かできないことがあっても、

いつかは、できる。


信じていれば、何でもできる。


今はなみだが出ていても、

いつかは、笑えるようになる。
審査員
審査員

先生もお母さんも、そう信じて生きてきたのです。
大切なあなたに、うそを教えるはずがありません。
お母さんと先生は、今だって涙と笑顔の両方をもって生きています。

里ばあちゃんに聞こえる   島崎 敬悟


天国まで

聞こえるよ

里ばあちゃんがいるところまで

ずっーと上まで

きっと聞いてくれている

太鼓の音

僕がたたいた太鼓の音

里ばあちゃんに聞こえるくらいの

大きな音

里ばあちゃんが

よくがんばったって

言ってくれている

やっとるなあって

おもっとる

ドンドン ドコドン
審査員
審査員

太鼓の音って、腹と胸の両方に響くよね。
島崎君の胸の奥に広がる天国で、里ばあちゃんが聞いている…。

心の天気   石沢 杏茄


わたしがイライラしているときは

わたしの心は、かみなりだろな。


わたしがなやむと

わたしの心は、きっとくもりだろ。


わたしがないたら

わたしの心もないて

どしゃぶりの雨だろな。


そしてそのあと、

わたしがわらうと、

雲と雲の間に、にじがかかり、

わたしの心も晴れだろな。


晴れたら、心は言うだろな

きみのえ顔は、雨上がりのお日様さって。
審査員
審査員

自分の体の中に心というものがある。その心と一緒に生きているんだ。
もう気がついているなんて、すごい。

入選

とこやさん   青木 高志


チョキッ、チョキッ

かみの毛を切ったよ

切った後はとてもさっぱり


家に帰ると、

「いい男になったなー」

と家の人に言われる

いつもそれが楽しみ
雲の町   石本 莉沙


空にうかんでいる

あのふわふわしている雲

あの雲はまるで

一つの町のようだ

たくさんの雲があつまって

町のようになっている

もしもあの雲の町にいけるのなら

家をたてて

毎日たのしくのんびりとくらしたいな。
大すきなお父さん   加賀谷 祐子


きのう、お父さんから 電話が きたよ。

お父さんが いないと さびしいですよ。

だから 早く かえってきてください。

9月10日に

お父さんが かえってきますよ。

とっても うれしいですよ。

むつは 雨が ふっていますよ。

お父さんは いっしょうけんめい

仕事を がんばって いますよ。


私とお父さんは なかよしですよ。

たまに くちけんかも ありますよ。


お父さんは だれにもまけないように

仕事を がんばって いますよ。

これからも 仕事を がんばってね。


私も学校でべんきょうを がんばりますよ。
雪ゆきとけろ   小川 藍


雪ゆきとけろ下には、

 小さなふきのとう、

重い重いとないている、

 かわいそうだと、

太陽が、

雪をとかして、

くれるんだ、

雪くん雪くんとけてくれ、

ふきのとうが出てこれない


雪ゆきとけろ、下には、

丸いキャベツくん、

つめたいつめたいとないている、

とかしてくれるよ太陽が、

とかして水にしてくれる、

キャベツは、ニコニコわらってる。
自転車   角谷 峻吾


自転車 大好き


とおくに行けるから好き

つかれないから好き

だって歩くよりはやいもん


こんど海に行ってみよう

なんか なつかしい感じがする


たのむぜあいぼう
こうちゃん   金丸 若菜


こうちゃんと遊んだ

たたかいをした

キック、パンチ

おふとんで遊ぶ

ロボットで遊ぶ

本を読む

こうちゃんって呼ぶと、

こうちゃんは歩いてくる

そして、「お姉ちゃん」と言う

こうちゃんと遊ぶと、

わーっと声が出ちゃう

こうちゃんと遊ぶのは楽しい
天気あめ   北澤 紀子


天気あめ

天気あめ

きつねの よめいり

はじまるぞ


天気あめ

天気あめ

今日は 晴れだと思ったら

あめが シトシト 降ってきた

今日は かさなし 最悪だ


天気あめ

天気あめ

今日は 天気で友達と

遊ぶ約束してたのに

あめがボツボツ ふってきた

今日は 遊べず 残念だ


天気あめ

天気あめ

早く あがれ 天気あめ

きつねの よめいり

おわったぞ
生きることは守ること   倉内 景子


私自身が生きていることが

不思議でたまらない


自分がなんでここにいるのか

自分がなんで生まれてきたのか

自分がなんで今を生きなくてはならないのか


おおきな夢をもっていても

今の私じゃかなえられないから


現実をみるのが怖くて

逃げたくなっているから


この間友達を泣かせた

私のせいで泣かせた


自分が嫌い

自分が消えてしまいたかった

人を傷付ける

自分が消えてしまいたかった


でも、友達は笑顔を私にくれた


守るべきものがあるから

人は強くなれる


私は

笑顔をくれた友達と


いつか必ず叶う私の夢を


いつまでも守っていきたい


私の時間が止まる日まで

いつまでも守っていきたい
時間   小林 夏樹


朝が来て

やっとで起きて

ご飯食べ

ちこくしそうで

学校に着く


授業中友達としゃべって

おこられて


家に着き

やっとで宿題をして

夜が来る


布団に入って

また朝が来る


時間はいつも

同じように流れるけれど


私のやること

私の気持ちは

毎日ちがう


少しずつ、少しずつ…


そして今日もまた

新しい一日が始まった
ツバメ   佐藤 達也


「ピイピイ」と小鳥が鳴いている

私も最初は、泣いていた

小鳥が飛ぶ練習をするように

私も歩く練習をしていた

小鳥が 親鳥と一緒に飛ぶように

私も親の後を追っていた

小鳥が一人で飛ぶように

私も一人で歩けるようになった

泣くことも少なくなった

小鳥が一人で飛んで行くように

私も一人で社会という

大きな空へはばたく

小鳥がいつか親鳥になるように

私もいつかは親になるのだ

さあ、はばたこう

自由のある空へ

飛んでゆこう
「おかあさん」   神 大


いつもべんきょうをおしえてくれてありがとう。

あのね、

おかあさん、毎日そうじがんばってね。

おかあさん、いつもたんぼでつかれてもさいごまでやるね。

おかあさん、いつもやさしくしてくれてありがとう。

おかあさん毎日りょうりをつくってくれてありがとう。

あのね、おかあさん、

さらをあらうよ。
すずらん   清田 成未


すずらん。

きれいなおとで。

リンリンリン。

そらをとぶように。

ふわふわふわ。

耳をすませば。

リンリンリン。

すずらんのねいろ。

リンリン ふわふわ。
いいおねえちゃんになるよ   関森 鈴華


おばあちゃんが

なくなった。

顔を見たら

まっ白だった。

わたしは、

こんらんしてしまった。

なみだが出そうだった。

かなしかった。


「いいおねえちゃんになるね。」

と言ってくれた

おばあちゃん。

わたし、

いいおねえちゃんになるからね。
植物と僕   高森 聡


やさしくつつみこむ朝の日ざし

ザーザーと雪どけ水が流れていく

蛇口全開の水道から流れていく

雪がとけたところに

小さな小さなちっちゃな芽がでてきた

冷たい雪のコートが

かぶさっていた芽がでてきた

これからどんどん大きくなる

森の先ぱいが見守るなか

どんどんどんどん育っていく

ぼくたちのように育っていく



人と植物はちがっている

でも同じ心をもって生きている

地球で生まれた僕たちは

けして特別なものではない

いっしょに生まれたものたちと

一生けん命生きるべきなんだ
雲の不思ぎなあせとなみだ   滝沢 悠樹


雲はねお日さまをかくしてるんじゃなくて

日なたぼっこをしてるんだ。

雲が黒くなるのは

日やけをしたからなんだ。

雨は雲のあせ

雲のあせはたくさんふる。

冬になったら

太陽があんまりでないから

あせはだせないけど、

寒くてなみだがでるんだ。

冬は寒いからかたまって

雪になるんだ。

不思ぎな雲のあせとなみだ
ひまわり   中川 理穂


君はわらって

泣いて

おこる

ということを

知らないね

ふりむいても

くれない

すうっと立って

せがのびて

「だいじょうぶ」

と聞いても

知らんぷり

君をずっと

見ていたら

不思議だな

人みたいだね
わたしはわたし   中島 夏実


わたしはわたし

おじいちゃんたちは

わたしのことを

いいこと言う

でも

わたしは

そんなに

いいこじゃ

ないと思う

そのわけは

たまに

わがままを

言うから

こんどは

ほんとに

いいこな

わたしに

なりたいな

と

思った

だけど

やっぱり

たまに

わがまま

いいたくなった

やっぱり

わたしはわたし
風の町の曲がり角   中野 恵


風の町の曲がり角

「ヒューヒュー」って歌っている。

風の町の曲がり角

「フワッフワッ」って

かみの毛が踊っている

風の町の曲がり角

「スリスリスリ」と右手と左手が

こすっている

風の町の曲がり角

「やっと会えたね。私毎日ずーっと

待っていたの。

北風さん、どうぞよろしくね。」
おとなの話   信田 珠里


おとうさんと

おとうさんのしりあいの

話はながい


話がおわるまで子どもは

ほったらかし

おとうさんは

「あっちいきなさい」


わたしと

おとうと

すごくひま


話がおわれば

いっぱいあそんでくれる

お父さん でも、

おとなの話はやっぱりながい
もしもわたしがゆめだったら   藤川 京香


もしも

わたしがゆめだったら

いろんな人に

すてきなゆめを

見せたいな


もしも

わたしがゆめだったら

その子のしょうらいのゆめを

見せたいな
友達   星野 文紀


友達は、大切です

一人でできないことでも

友達がいれば

何でもできます

文化祭や

学芸会

一人では、できなくても

友達がいれば

何でもできます


友達は

とても大きな存在です
「生まれた理由」   堀江 恵里菜


私は生まれた

どんな理由で生まれた

生きるため?

私は生まれた

私は生まれたことをこう思う・・・

きっとお母さんやお父さんに会うために

生まれたんだ

生まれたことをこうかいしない

一億人の中でも、地球の中でも

たった一人として……

地球に神様に選ばれたのだから

私がきっと生まれたのは

この地球にいて

新しい時代を作るために生きているんだ
ドライヤー   本間 ふみ


ドライヤーいつもわたしのかみに、何

かを言いかけるようだけど、何を言っているかわからない。

でもいつかきいてみたい。

ドライヤーの声。
白い国   本間 舞


くもの中はまっ白い国

いってみたいなあ


小さいころ

くもの国に行ってみたかった

心の中で何回も

(くもさん私をつれていって)おねがいした


ずっと見ていたら

天しがくもの上でシャワーをあびているように思った


天しがすむ白い国

いってみたいな
もしも、とこやさんだったら   本間 弓賀


もしも

わたしが

とこやさんだったら

おきゃくさんのすきなかみがたを

やってあげたいと思います。

お金はやすくして

かみをきれいにします

どうしてお金をやすくするかというと

お金をやすくすると

おきゃくさんがいっぱいくるからです

お金をやすくしても

かみをきれいにします
「水」   丸山 裕史


水は、

いろいろな場所へ行ける。

水は、

切っても、切っても

切れない。

水は、

いつでも、やりなおしができる。

切られても、

すてられても、

海水になっても、

人間に飲まれても、

いつでもやりなおしができる。

水は、

いつも、

海の波で、

いろいろな所へ、行けて、

うらやましい。
僕は僕であるように   三田 晃久


青空に指で描いて問いかけた

"僕はどうして耳に障害を持ったの?"


答えてくれるはずもなく

なぞった跡には ただ白い雲


夜空に指で描いて問いかける

"僕はどうして聴こえなくなったの?"


答えてくれるわけもなく

星は静かに瞬いていた


"僕は耳に障害がある"


だけど とてもやさしい人がいたから

「人それぞれ個性を持っているから」と

教えてくれた人がいたから


僕は僕のままでいられた

僕は僕でいることができた

そのままの僕でもみんなと変らないんだ


だから

一人ぼっちで泣いてる君に言おう


君は君のままでいい

僕は僕であるように

自信を持って生きればいいと…
命   森住 由香里


命は何にも変えられないものだ

だから生きることに意味がある

今は自分で命をそまつにしてしまう人もいる

一人が死んでしまうことで多くの人が悲しんでしまうのだ

やなこと、苦しいこと、逃げずにたたかう

だって生きたくっても生きられない人もいるのだから

どんなことがあっても頑張って生きていくべきだ
心の弱かった僕   山本 勇基


僕はとっても心が弱かった

でも、お父さん、お母さん、先生、

友達がいたから

ここまで成長することができました

まだまだ弱い心ですが、

星のようにいつまでも輝き

太陽のように笑顔

そして

納豆のようにねばり強く

タンポポのように根強く

生きていきたい
でんぐりがえし   渡邉 玲音


おとうとのなるせは、

でんぐりがえしがとくい。

さいしょはまわらなかったのに、

なんかいもやってたら、

一人でできるようになった。


たったったったとはしっていって、

ふとんの上ででんぐりがえしをする。

ママ、パパ、わたしのまえで、

でんぐりがえしをみせてくれる。


たまによこにまがる。

たまにふとんのないところでやって、

あたまをおさえていたがっている。

わたしは、あたまをおさえているなる

せが

おかしいので、わらってしまう。

第10回矢沢宰賞の審査を終えて

 私は幼稚園の園医をしています。今年も園の遊戯室で、小さな胸に聴診器を当てました。この世に生まれてたった3年の体。これからの長い一生を思うと、どの子にも幸せを祈らずにはおれません。 4歳、5歳になった体には、もうたくましさが芽生えています。

 小さな目から涙が落ちたら、母親は訳をきいて拭いてやるでしょう。どんな時でもはっとする言葉が生まれていたら、書きとめておきましょう。小さな子はすぐに忘れてしまうのです。初めて見た、この世界での大切なことを。

 矢沢宰賞に応募する作品は、6歳以上の学童、生徒によって書かれています。今回の特徴は高等部の皆さんの応募が多く、父親について書かれた作品が多いということでした。父親の愛情に気がついて書かれた作品には、しみじみとした味わいと奥行きがありました。
 亡くなった祖父にあてた作品には、天国にまで会いに行きたいという思いが溢れていました。親子三代の家族の中で、表面に出ない大人たちの愛情が、子どもに惜しみなく注がれているのでした。

 この詩賞に応募する皆さんは、自分の中に生まれた感動や発見、驚きや不安、喜びといった気持ちを言葉で表現しなければなりません。それも自分自身の言葉で。でも、少なくとも今回入選した皆さんにはその力があります。日頃から、自分の気持ちを書きとめておく習慣をつけましょう。読む人の心に訴え、心を清めてくれるあなたの言葉は、生涯あなたと共にあって、あなたを支えてくれます。読む人の心の中に、いつまでも残ります。

  • 審査員 月岡 一治
    上越市出身。国立療養所西新潟病院内科医長。第6回新潟日報文学賞受賞。出版物に「少年-父と子のうた」「夏のうた」(東京花神社)がある。

年ごとの入賞作品のご紹介

最優秀賞受賞者タイトル
第1回(平成6年)山本 妙本当のこと 
第2回(平成7年)山本 妙災害
第3回(平成8年)高橋 美智子小さな翼をこの空へ
第4回(平成9年)野尻 由依大すきなふくばあ
第5回(平成10年)佐藤 夏希お日さまの一日
第6回(平成11年)除村美智代大きなもの
第7回(平成12年)徳田 健ありがとう
第8回(平成13年)井上 朝子おくりもの 
第9回(平成14年)藪田 みゆき今日は一生に一回だけ 
第10回(平成15年)日沖 七瀬韓国地下鉄放火事件の悲劇
第11回(平成16年)佐藤 ななせ抱きしめる
第12回(平成17年)髙島 健祐えんぴつとけしゴム
第13回(平成18年)濱野 沙苗机の中に
第14回(平成19年)田村 美咲おーい!たいようくーん
第15回(平成20年)高橋 菜美空唄
第16回(平成21年)今津 翼冬景色
第17回(平成22年)西田 麻里命に感謝
第18回(平成23年)山谷 圭祐
第19回(平成24年)坂井 真唯クレヨン
第20回(平成25年宮嶋和佳奈広い海
第21回(平成26年)金田一 晴華心樹
第22回(平成27年)安藤 絵美拝啓 お母さん
第23回(平成28年)宮下 月希大好きな音
第24回(平成29年)宮下 月希心のトビラ
第25回(平成30年)阿部 圭佑ものさし
第26回(令和元年)上田 士稀何かのかけら
第27回(令和2年)宮下 音奏大好きな声
第28回(令和3年)横田 惇平ふくきたる夏休み
第29回(令和4年)野田 惺やっと言えた
第30回(令和5年)舘野 絢香気持ちをカタチに 思いを届ける