最優秀賞
黒板 青栁 雄大
(新潟県立吉田特別支援学校高等部3年)
一人一人が書いて消しても
黒板に思い出は
しみこんでいく
今までの生徒や先生が書いた黒板は
教室の宝だ
落書きした字や絵も
すべてしみのこる
いっぱい思い出を書こう
黒板はきっと喜ぶ
黒板は思い出のけいじばん
どんなに見えなくても
しみこんでいく思い出
どんなに消しても
思い出はのこる
これからも思い出を
届けてあげる
黒板に

教室で勉強する生徒や、教える先生にとって、見つめる黒板は特別のものであろうとは、誰もが気づくこと。書いて消して、書いて消して、のくり返し。でも、それらは単に黒板から消えるのではなく、「しみこんでいく」のだ。消えたように表面は見えても、そこにしみこんで残っている。つまり「黒板は教室の宝」。そこまで作者は鋭く見抜いている。良いこと、嫌なこと、思い出をいっぱい黒板に書いてあげよう。それらは簡単に消えない。
奨励賞
雨の子守り 天野 優海
(大月市立大月東中学校1年)
小さい時、少しの音にびっくりして泣いた
外は晴れだったけど激しい雨が降ってきた
でもすぐにやんだ
なんでだろうって思っていたら
いつの間にか泣きやんでいた
小学生の時、学校生活の不安があった
そのときふと激しい雨が降ってきていた
でもすぐにやんだ
雨の音に気をとられていたら
不安もなくなった
中学生になってから勉強を楽しいと思った
でも難しくなってめんどくさいと思った
その時に雨が降った
今までの記憶に残っている、激しい夕立
でもすぐにやんだ
「なんで同じような事が重なるんだろう」
って思っていたら
勉強を頑張ろうって思った。
その時、私はふとあることに気づいた
気持ちが沈んだ時よく雨が降っているのは
「心を励まそうとしてくれてるからなんだ」
って
そう思った。
私の人生にはよく夕立が降っている
気持ちが沈んでいる時に。
夕立が私を励ましてくれているみたい
私は機嫌を悪くした子供で
夕立は私をなだめる親みたい
最も遠いものだけど
ちょっとだけ家族みたい。

いろいろな雨があって、さまざまな場面で降っている。場面場面での降り方もちがうし、気持ちもちがう。雨と時々の自分のあり方はちがっている。雨は降り方によって同情もし、激励をしたりもする。一定ではない。テーマは「雨の日の子守り」ではない。作者は雨に守られているのだ。雨と「私」との関係は、親と「私」との関係みたい。
ちかに ぐうんと 足を のばせ 袖山 青依
(見附市立名木野小学校2年)
ちかに ぐうんと 足を のばせ
みみずも
もぐらも
ふんじゃって
ながい ちかてつ
ぺっちゃんこ
うちゅうに 足を のばしちゃえ
うちゅうじんも
かせいも
けとばして
まるまる わくせい
ふっとんだ
もりに ぐうんと 足をのばせ
くまもきつねもぺっちゃんこ
こわこわ おおかみ うちゅうへ
けとばした

あちこちに「ぐうんと 足を のばせ」と、いきおいよく命令している。それは自分にたいしてであれ、他人にたいしてであれ、すごいことである。ちかのみみずであれ、ちかてつであれ、足で「ぺっちゃんこ」にしてしまう。それどころか、「うちゅう人」や「かせい」もけとばし、「わくせい」までけとばすのだ。このファイトは痛快!
自立に向けて一歩ずつ 川端 愛莉
(熊本県立盲学校高等部2年)
自立とは何だろう
自分のことを知ることだろうか
自分でできることを増やすことだろうか
自分だけで物事を解決することだろうか
それでもどうしようもなく
困ったり悩んだりするときはどうしよう
きっと自分のことを知ることも
できることを増やしていくことも
自立への一歩なのだろう
それでも周りの人の助けが必要なとき
自分の言葉で伝えたい
「手伝ってください。」
私はそんな自立を目指したい
私はこれから自分の見え方を理解して
白杖持って移動して
自分で視覚補助具を活用して
社会参加を目指したい
時には周りの人にお願いし
自立を目指して一歩ずつ
そして私も誰かの助けになれるように
自立を目指して一歩ずつ
私はそんな人を目指したい

高等部になると「自立」ということまで考える。くりかえしそれを自問している。「自立」が意味するところはむずかしい。そう「自分のことを知ること」が一歩目。とはいえ、むずかしいことに変わりがない。「手伝ってください」と言うことはちがうようでいて、「自立」の大切な精神の一つであろう。自分を活用して「自立」を目指す。
ファッションショー 粕川 陽菜乃
(前橋市立箱田中学校1年)
チョークが走るかつかつと
色はなんでも似合うけど
やっぱり白が一番の色
書いた字がなんだか服みたい
きれいにきれいに書いた字と
大きく大きく書いた字と
小さく小さく書いた字で
小さなファッションショーをしている
またチョークが走るかつかつと
失敗する時あるけれど
やっぱし白が一番だ
お気に入りの白につつまれる
力強く書いた字と
少し弱めに書いた字と
少しぐちゃぐちゃ書いた字と
すべての字が合わさって
すべての想いが重なって
すべてがすべてがそろってできる
すてきなすてきなファッションショー

目の付け方がおもしろい。黒板に書かれた文字のきれいさ、さまざまな大きさが寄り集まってくりひろげる。それをファッションショーととらえたところがユニークに感じられる。チョークの文字が思い思いに踊っているみたい。黒板上の色やスタイルのちがったすべての文字や思いが、すてきなファッションショーを展開しているようだ。
入選 (50音順)
「星とこんぺいとう」 青木 咲幸
(前橋市立箱田中学校1年)
見てしまった
おいしそうな
浮かんでいる
こんぺいとうを
思わず食べたくなった
手をのばした
けれど
届かなかった
寂しい孤独な夜
空を見上げる
ポケットに入った
一つの星を掲げる
夜の光に当てたあと
のみこんだ
甘くて
優しい味
バリッガリッ
その星を
舌で転がしながら
噛んでいく
明るくて暗い夜の下で
数えきれないほどある
こんぺいとうを
ただ
静かに
眺めていた

夜空いっぱいの星。星たちを「こんぺいとう」になぞらえた、比喩は必ずしもユニークではないけれど、「孤独な夜」にその一つをポケットに入れ、夜の光に当ててかじる静かな夜。
旅行 石川 木の葉
(見附市立上北谷小学校5年)
朝四時出発
わくわくしているけどねむい…
目を開けたらまだ五時だった
お姉ちゃんと遊んだ
やっと六時
道の駅の前で朝ごはん
次の道の駅でご当地ちいかわ発見!
とてもうれしい
もう一つの道の駅でちいかわがあった!
これで二個目
ホテルに行ってゆっくり休んだ
夜ごはんがおいしかった
ベットがふかふかしていてよくはねる
お姉ちゃんとジャンプ
とても気持ちいい
二日目車で走っていたらオリンピックの
ジャンプ台があった とってもきゅうだった
帰る時が来てしまった…
帰るのはかなしかった
新潟の道の駅でささだんごちいかわがあった
とってもかわいい
家に帰った
やっぱり自分のふとんは気持ちいい

旅行前に早起きした。道の駅前で朝飯、ホテルで休み、「ちいかわ」をいくつも発見し、夜ご飯がおいしかった、お姉ちゃんと遊ぶ、たんたんと書かれている。自分のふとんがいい。
この広い地球で 伊藤 愛華
(新潟市立東新潟中学校1年)
世界は、言葉でつながっている。
日本語も。
中国語も。
ドイツ語も。
何百を越える世界中の言語で。
全て共通の意味をもつ言葉がある。
目の色が違っても、顔の形が違っても。
場所が違っても、文化が違っても。
日本とウルグアイのように、
遠く遠くはなれていても。
こんにちわやありがとうが、
世界中で飛び交っている。
それは、当たり前だ。だけど、
この当たり前がすばらしい。
数々の歴史で、
世界中の人々が交流したからこそ、
この当たり前ができている。
このとてつもなく広い地球で、
そんなことが起きている。
なんて、すばらしいことなのだろうか。

国や場所はちがっていても、世界は言葉でつながっている。この当然さがすばらしい。共通の意味もある。広い地球の世界中の人々の交流が、歴史上そのことをつくりあげてきた。
空 伊藤 百花
(見附市立名木野小学校6年)
空は、いつも自分の上
下になることは、ない
でもずっと身近にある。
空は、いつも違う。
でも、青空、雲空、夜空いっぱいある。
1秒、1分、1日いつ見ても同じ空はない。
空は、なくなることはない
でも、色は変わることは、ある。
青、赤、オレンジいろいろな色がある。
空は、ずっと雲がある。
ずっと違う形
空には、ずっと雲がある
空は、いつもきれいだな

空はいつも自分の上にあるけれど、その種類にもいろいろあって、色も同じではない。空にずっとある雲も、みんなそれぞれにちがう。だからこそ、空は「いつもきれい」なのだ。
変わった私 井上 陽向
(長崎県立希望が丘高等特別支援学校3年)
変わった私
あいさつを大きな声で
誰にでもできるようになった
変わった私
「ありがとう」
「おはよう」
「こんにちは」
私が言われてうれしい言葉を
周りの人にも 言えるようになった
変わった私
人見知りで
誰かに話しかけることができなかった
けれど
思いきって話しかけると
友達になれた
話す喜びを知った
変わる私
これからも
人との関わりを大切に
していきたいと思っている

暑い屋外プールで必死に泳いだ。三日間の合宿で泳ぎつづけ、「腕も足もパンパンで」もう泳げない。必死だった。ゴーグルの跡が日焼けで残って「逆パンダ」。おかしい思い出。
海 岡田 媛奈子
(十日町市立中条中学校1年)
そこにはたくさんの個性豊かな
生き物が暮らしている
きれいな色の生き物
墨を吐く生き物
中には凶暴な生き物もいるが
どの生き物を全て平等に美しい
その美しさを引き立てるのが海
海がきれいであればあるほど
生き物は美しくなる
逆に海が汚れていれば
生き物も美しくなれない
だから海は、これから何十年先も
美しくなければならない
そこは海の生き物が輝く
たった一つの家だから

海の中にはさまざまな生き物がいるけれど、平等にどれも美しい。「その美しさを引き立てるのが海」という着目が、この作品のポイント。美しさを汚すのは人間という認識がある。
学校 川上 直生
(見附市立南中学校1年)
とても苦しい
部活の練習 トレーニング 試合
全てきつい
やめたい にげたい くるしいな
なんでこんなことをしているのか
だけど順位が分かるの
とてもワクワク
やっぱり楽しい
速く早く走りたい
とてもつまらない
学校の授業 自主学習
他の娯楽に駆られてく
やめたい にげたい つまらない
だけど
将来の夢叶えたい
努力 努力 ひたすら努力
やっぱり止めない
もっともっと賢くなる

練習も試合もきつい。でも、その成果が出ればやはり楽しい、学校は「やめたいこと」「にげたいこと」がいっぱいある。だけど、夢を叶えたい努力を賢く重ねることに思い至る。
ぼやき 神戸 天飛
(個人応募)
役に立ちたい
それなのに嫌な顔をされるし
泥棒と呼ばれる
なんで誤解されるのか分からない
散々だ
困っていたら助けたい
不便があったら減らしたい
結構頑張ってると思うけどね
ちょっとは理解してくれてもいいのに
今までも役に立ってたよね?
感謝されたこともあるよ
褒められたい訳ではないけど
喜んでもらえたら嬉しくて心がゼイゼイする
あいつはみんなに好かれている
あいつを嫌いな人を聞いたことがない
その人気は世界レベルだと思う
あいつはみんなを幸せにする気紛れな天才
大体の事は叶えてくれる
だけどたまに人を不幸にする
それなのになぜみんなに好かれるのか
世の中は不公平だなぁ
じゃああいつになったらいいのかな?
別にあいつになりたい訳ではない
自分は自分
比べる必要はない
理由もいらない
条件もいらない
自分の事を好きならいい
ただそれだけでいい
私は税金、あいつはお金
そんなに違う?
本当は同じものなのにね

なんで誤解されるのかわからない、また理解されないこともある。「あいつ」はみんなに好かれているのに、人を不幸にすることもある。税金とお金。「自分は自分」ということ。
空のくも 菊地 寛菜
(見附市立葛巻小学校2年)
くもは、わたあめみたいだな。
たべたら、どんなあじがするかな。
あまいかな、しょっぱいかな。
くもの上にはなにがあるかな。
かみさまがいるのかな。
それとも、うちゅう人がいるのかな。
いつか、いってみたいな。

見かけで、くもを「わたあめ」のようにとらえ、そのあじも想像する。くもの上に何があるか、「かみさまがいるのかな」とはすばらしい想像力。さらに「うちゅう人」とはすごい!
線香花火 菊地 璃奈
(前橋市立箱田中学校1年)
ある日の夏の日家族みんなでやった手持ち花火大会
いつも最後にやるのは線香花火だ
ゆらゆらとゆれる火がリレーのように手持ち花火の先端に受けつがれていく
次に走る人が走りだしたようにどんどん火が手持ち花火にわたってゆく
パチパチと音がしたしゅんかん
彼岸花のように花を咲かせた
手持ち花火にはいろいろな種類がある
バチバチと稲妻のようなかっこいい花火
長持ちする花火
色が変わる花火
ただ線香花火はちょっと違う気がする
火をつける方向が決められていたり
色だって変化しない
線香花火はうっとうしいほど静かだ
線香花火をしている時はゆっくりと時間が過ぎていく気もする
線香花火はあんなに光っているけれど火の育て方によってすぐに落ちてしまったり、長続きしたりする
まるで人の人生や恋愛を表しているように感じる
だから線香花火の火種が落ちてしまうと切なく感じるのだろう
線香花火は色が変わったりはしない
だが、人の人生や恋愛を表しているかのような少し特別な花火である

家族で楽しむ手持ち花火の最後をかざる線香花火にまつわるあれこれ。そのちがい。最後に、ゆっくりと静かな線香花火。特別な線香花火に感じるさまざまな思いを最後に述べる。
笑顔の秘密 北口 緋希
(神戸市立盲学校中学部1年)
私の家は幸せさ
いつでも私のこと考えて
わがままでもきいてくれるお母さん
それと めんどくさがりの私です。
私の家の合言葉。
前向きになれる合言葉
どーってことないさ。
明日がんばればいいさ
どーってことないさ。
私の家は平凡さ。
わたしのやりすぎな冗談に
つきあってくれるじいちゃん。
それを見て
つっこんでくれるばあちゃん。
落ち込んでいても
いやなことがあっても
家族がいれば しあわせさ。
どーってことないさ。
どーってことないね。
合言葉をいえば、私は幸せ。
みんなを笑顔にできたらな。
私の幸せをおすそ分け。

いきなり「私の家は幸せさ」ときた。この「楽天性」はいい。「前向き」という合言葉もいい。もちろん、家族ではぶつかり合うこともあるだろうが、前向きであることが救いだ。
思い出 北原 穏空
(愛知県立春日井高等支援学校高等部1年)
記憶の引き出しは いろいろしまえる
楽しい記憶 うれしい記憶 悲しい記憶
いろいろな思い出の記憶
たくさんの引き出しからたくさんの思い出
いろいろな思い出 しまったり出したり
いままでの思い出
これからもたくさんの思い出
引き出しにしまえる
すきな時に思い出せる
楽しい思い出だけ思いだそう
ワクワク ドキドキ ウキウキ
これからも楽しい思い出が増えるように
その先はきっといいことがまっている
きっとそれは自分をささえてくれる
思い出はすてき

いろいろな記憶が入っている記憶の引き出し。そこには思い出の記憶がいっぱい詰まっている。楽しい思い出だけを引き出したい。いやな思い出なんかごめんだが、そうもいかない。
今 思うこと 黒木 俐玖
(熊本県立盲学校高等部3年)
人の気持ちは複雑で 理解するのは難しい
自分の気持ちはどうなのか・・・
これもよくは分からない
空気を読めと 人は言う
私の苦手なことのひとつ
雰囲気だけで 分かるものなのか・・・
一見楽しそうに見える人も
心から楽しんでいるのかは 分からない
一見怒っているように見える人も
実際はそうでないこともある
何かを伝えたいけれど
伝え方が分からないだけなのかもしれない
自分の気持ちはどうだろう
悲しいのか 嬉しいのか
楽しいのか 悔しいのか
やっぱり はっきりしない時もある
そもそもたったひと言で
表すことなどできるのか・・・
人の気持ちは複雑で 理解するのは難しい
どうせ難しいことならば
せめて 自分について考えてみよう
今 私はどんな気持ちなのかな・・・
そして 相手に伝えよう
上手く伝わらなくたっていいじゃないか
まずは 声に出すことから始めよう
そして 語り合おう
今までみえなかったものが
何かみえてくるかもしれないから

他人の気持ちはよくわからない。自分の気持ちもよくはわからない。表面と内実は必ずしも一致していない。実際よくわからないから悩むのだ。まずは自分を伝えてみるということ。
僕の宝物 小菅 唯人
(前橋市立箱田中学校1年)
ドカンドカン
僕の家にはライオンがいる
体が大きくて
みんなを笑わせるのが得意な
愉快な父さんだ
パカンパカン
僕の家にはシマウマがいる
料理が上手でおっちょこちょい
みんなをやさしい心で包み込む
やさしい母さんだ
ピチャピチャ
僕の家にはマグロがいる
運動が好きで
勉強が苦て
明るく元気な僕だ
チョコチョコ
僕の家はスズメがいる
小さくておしゃべり
マグロのあとをおいかける
おてんばな妹だ
これが僕の大切な家族

お父さんをライオンにたとえ、お母さんをシマウマにたとえる。そのほか僕はマグロ、妹はスズメ。それぞれの特徴をとらえている。にぎやかで楽しそうな家族。大切な家族は宝物。
たべもの ごみかわ かえで
(見附市立名木野小学校1年)
あつあつの ふろふきだいこん
ぷるんぷるんの とまと
とろとろの おもち
もこもこさといも
こしこしこうめ
かりかり らっきょう
しゃきしゃき りんご
つるつる はむ
ぱりぱりたくあん
ぬるり わかめ
ぽりぽりきゅうり
くるんくるん こんにゃく
ぷよぷよ とうふ
しゃきしゃき はくさい
がすがす なし
ぴんぴんした たい
ほかほか ごはん

ふろふきだいこんからはじめて、たべもののとくちょうを、そのありようやたべるときの音であらわしている。よくそのたべもののとくちょうが、自分なりにくふうされている。
自然に溢れる涙 近藤 里咲
(見附市立西中学校1年)
涙の雫が頬を伝い
心の奥深く、痛みが広がる
言葉にできない想いが
静かに、静かに溢れ出す
夜空に星が眩しいように
心の中の悲しみ
一瞬の美しさを持って
暗闇に光を灯す
泣くことは弱さではなく
心の声を解き放つこと
悲しみを抱きしめて
新たな明日を迎えるために
涙は流れ、心は癒され
過去の傷が少しずつ癒される
泣いた分だけ、強くなれる
明日を迎えるため
涙は流れ、心は癒され
過去の傷が少しずつ癒される
明日への希望を胸に抱いて・・・

悲しいから涙がこぼれる、というのは単純すぎる、と作者は言いたいのだ。うれしい涙も美しい涙もある。「泣いた分だけ、強くなれる」ことが大切。涙をこぼすことを否定しない。
雨の日の教室から 齋藤 姫衣
(鶴岡市立櫛引中学校1年)
雨の日に教室から見える月山
山のてっぺんだけをだし雲におおわれている
まるで白い布団から顔をだして
授業をのぞいているようだ
まるで白い洋服を着こなしているようだ

「月山」は山形県の山岳。雨の日にも月山は授業をのぞいているのだ、「白い布団から顔をだすようにして」。やさしそうでも、きびしい表情でのぞいていることを忘れないでね。
「自然」 佐久間 煌
(鶴岡市立櫛引中学校1年)
木々がゆらゆらと踊っている
風と草の音色に合わせて踊る
森に入るといつも思う
木々は踊り子 草と風は楽器
そして私は森の指揮者

木々が「踊っている」というのは愉快。ただゆれているというのは、人間の勝手な見方でもある。自然はそうやって、踊ったり音色に合わせたりしている、と作者はよく見ている。
瞳を開けば 佐藤 拓実
(川崎市立西中原中学校3年)
瞳を開けば何かが始まる
私達の楽しい学校生活が
私達の明るい一日が
朝の眩しい光が目に差し込んで
何かが始まる
瞳を開けば何かが見える
あなた達の明るい顔が
あなた達の楽しむ様子が
昼の太陽が私達を照らすことで
何かが見える
瞳を開けば何かが終わる
私達の楽しい部活が
今日の学校生活が
夕日が私達を優しく包むことで
何かが終わる
私達の人生は
瞳を開いたその一瞬の積み重ね
一コマ一コマ
アニメのように
ずっと変わって動いている
毎日同じ一日の繰り返し
そんなことがあるのだろうか
全く同じ一コマなどない
今見ているその一コマは
この世にたった一つしかないもの
一瞬の一コマを大切にしよう
その一コマに新しい世界が広がる
私達それぞれ別の世界が広がる
だから
瞳を開ければ世界が広がる

瞳を開くことで、たしかに「何かが始ま」り「終わる」のだ。見えたり終わったりが展開する。開かないことには何も始まらない。その積みかさね。一コマ一コマこそ大切なのだ。
卓球 白石 結楠
(春日部市立大沼中学校1年)
赤い面と黒い面
人によっては青や緑も
ラバーにだってその人の個性が出る
選手は様々な技をくり広げる
技にだってその人の個性が出る
狩りのようにピンポン玉を逃さない
背が高いか低いかなんて関係ない
運動が得意か苦手かなんて関係ない
それぞれ自分の個性を活かして戦うスポーツ
やればやるほど奥が深いスポーツ
負ければ負けるほど強くなるスポーツ
喜びや悲しみを感じられるスポーツ
感動し躍動できるスポーツ
今日もどこかでピンポン玉がはずんでいる
光のような速度で

ラケットのラバーの色にも技にも、その人の個性が出る。個性を出して相手と真剣に戦う。奥の深いスポーツであり、感動し躍動できるスポーツ。今日もはずんでいるピンポン玉。
星の世界 杉本 愛莉
(新潟市立新潟東中学校1年)
星だって人間のように世界がある。
星の世界は空の上。
それはみんなの国の空の上
その空はとてもきれいで
人が上を向くと星たちはかがやく
星たちだって学校に行く
人々は朝に学校がはじまるけど星たちの学校は夜にはじまる
授業だってちがう
人は数学や国語は学ぶ
星はきれいにひかる方法は学ぶ
星だって人間のように世界がある

星にも世界があり、その下に人はいるのだけれど、学校もある。星たちの学校は夜にはじまる。人とちがって、星たちは「きれいにひかる方法」を学ぶ。そのちがいが興味深い。
太陽は人をみている 鈴木 詩歩梨
(見附市立名木野小学校6年)
太陽は人を見ている
人があそんでいても
太陽は空でわくわくしながら
見ている
太陽は人をみている
人が勉強していても
太陽は空でしずかに
見ている
太陽は人をみている
人がねていても
太陽は空でにこにこ
見ている
太陽は人をみている
人がころんでいても
太陽は空で泣きながら
見ている
太陽は人をみている
いつも人から
わくわくやはらはらをもらって
太陽は空で元気になって
見ている

人があそんでいても勉強していても、いつも太陽は人を空から見ている。つまり人はどうやっていても、元気な太陽につねに見られているのだ。無関係ではないことを認識しよう。
兄ずるい 髙橋 京雅
(見附市立名木野小学校6年)
兄ずるい
兄中学通ってずるい
中学だから自由登校だし
部活もある 兄いいな
兄ずるい
兄スマホ持ってずるい
スマホで友達と連絡するし
動画も見るし、兄いいな
ああ兄ずるいずるすぎる
兄友達沢山いてずるい
男子はもちろんいるけど
女子が沢山いる、兄いいな

兄さんは、当たり前のことをやっているだけで、「ずるい」ことをやっているわけではない。それを弟である作者は知らぬわけではない。「いいな」に変わる兄への羨望まる出し。
あいさつ 髙橋 優衣
(川越市立山田中学校1年)
おはようから始まる朝。それは、朝が始まる合図ともいえる。そのあいさつがあることで、朝のスタートがきれる。おはようがなかったら、朝のスタートは始まらない。人は皆そのあいさつから走り、おやすみで1日のおわり、ゴールともいえる。おはようはまるで徒競走や長距離走のようだ。今日も新しい一日のスタートのあいさつが鳴りひびいている

「おはよう」は朝の挨拶であり、一日のスタートを意味する大切な挨拶。すべてはそこから始まる。一日の終わりを意味する「おやすみ」はゴールである。挨拶は人間関係のけじめ。
手紙 冨沢 明希
(十日町市立中条中学校1年)
手紙は人と人が
つながり合える
一つの方法だ
人は読んでいると
書いた人の気持ちが
だんだんと
伝わってくる
悲しい気持ちで書いたか
嬉しい気持ちで書いたか
気持ちだけでなく
書いた人の表情も見えてくる
ほんの小さな一つの手紙でも
だんだんと
気持ちが伝わってくる
そして手紙は手書きだからこそ
伝わる気持ちがある
いつもどこかで手紙は
人と人をつないでいる

人と人をつなぐ手紙。そのかたちがどんどん変わってくる現今。書く人の気持ちも表情もわかるのが手紙。そのことに思いいたっている第二連が重要。手書きだから伝わる気持ち。
「争いと平和」 中村 隼輔
(長崎県立諫早東特別支援学校中学部3年)
なぜ、人間は争うのだろうか。
争って何んの価値があるのだろうか。
政治の争いや戦争をしているうちに色んな政策ができると言うのに、どうしてそこまで一つのことに集中してしまうのだろうか。
僕は、戦争や政治の争いをテレビの前でしか見たことがないけど本当にみんな戦争に行きたいのか、本当に恐ろしい兵器にお金を使っていいのか。
僕なら環境を良くするために木を植えたり、家のない人のために家を建てたりみんなが嬉しくなるようなことにお金を使いたい。
みんなが何のために生まれてきたのか、戦うために生まれてきたのではなく誰もが色んな人と楽しく遊んだり喋ったり幸せな人生を過ごせるように生まれてきているのに。
みんながみんな色々な才能を持って生まれてきているのに。
その才能を使わずに兵器や人の悪口をいって蹴落としているのを見てなぜ、そこまでして勝ちたいのか傷つけたいのかを知りたい。
そして、みんなにはそれを乗りこえる力やそれに勝つ力でもし負けてもくじけずに前に進むことができる事を私は知っている。

争いと平和、それは人類始まって以来の大テーマである。いろいろな意見があろうけれど、作者は正面から向き合っている。事情もちがって簡単でないけれど、問いつづけなければ。
クラスメイト 中村 周音
(春日部市立大沼中学校1年)
私のクラスメイトは色とりどりだ
ひまわりのように明るい
すずらんのように可愛らしい
たんぽぽのように強くて憧れる
バラのようにかっこいい
シロツメクサのように大人しい
しょうぶのようにクール
一人一人個性があって鮮やかだ
みんな違ってみんないい
たくさん集まって一つの花束になる
そして一つのクラスを作ってゆく
色とりどりのクラスメイトに出会えて私は幸せで暖かい気持ちだ
この色鮮やかなクラスがずっと続いていきますように

クラスメイトにもとりどりあって、花のように一人一人のちがう個性が合わさって、「一つの花束」「一つのクラス」をつくるということ。色鮮やかな一つの花束になることが肝腎。
ちゅうとはんぱ 野田 惺
(大阪府立中央聴覚支援学校高等部1年)
小3のときに難聴が分かった
今思えば大変だった
耳からの情報を必死に追う日々
家につけば充電が切れたみたいに動けなかった
ざわざわした中での会話は聞えなくて
「もう一回言って」の壁は高い
めんどくさいと思われるのが怖くて
分かったフリをするのが癖になってた
中2でろう学校に転校した
何一つ聞きのがすことがなく
授業は完璧に分かる
デジベルを言うと
「あなたは軽くていいわね」
少し距離を取られる
口話でずっと育ってきた私
コミュニケーションは手話が中心の
ろう学校では当たり前に手話を求められる
プレッシャーで押し潰されそうになった
ろう学校でも聴者の中でも中途半端な私
どの枠にも入りきれないコドク感
行き場のないこの気持ち
広い世界の中で私だけ?
こんな気持ちは私だけ?
「これから私はどう生きていこう?」
漠然とした不安で息が詰まりそうになった
「置かれたところで咲いてみる」
そう思えたとき
自分がどれだけ恵まれていたか気付いた
中途半端のおかげでたくさんの人に
出会って、支えられて
苦労のかたちは違うけど
みんな何かを抱えてる
あの日の涙もどん底も
私が歩いてきたしるし
だから
この気持ちもこのままで
わたしのままで

小3のとき、難聴であることがわかって苦労した。中2のときにろう学校に転校して「授業が完璧に分かる」ようになったけれど、中途半端な孤独感。不安。苦労は別でも、頑張れ私!
扉 橋壁 奈歩
(栃木県立盲学校高等部1年)
鍵をかけてた 心の扉
一人 振り回されて
心は 行ったり来たり 波のよう
まわりは みんな 優秀で
わたしには 価値がないって 傷ついて
気づけば 自分を 見失ってた
だけど 夢に出会ったとき
なぜか 扉が 勝手に開いたんだ
あれやりたい これやりたい
まずは 何から始めようか
理想に 近づこうとしてる
私って まじ最高
さあ 扉 壊しちゃおう
優しいだけの 自分じゃなくていいから
もう 鍵を掛けなくて いいんだよ

心の扉に鍵をかける必要はないことに、傷ついて自分を失っていたときに気がついた。「扉を壊せ」「鍵を 掛けなくて いいんだ」とわかる。鍵を掛けることで自分を閉ざすことも。
日常 濵田 茉祐
(成田市立中台中学校3年)
眠たい登校
わからない勉強
疲れる部活
ゆううつな気持ちで起きる朝
重い足取りで歩く通学路
でも、それでも、帰り道には太陽のように輝く笑顔がある
学校が終わったから?
家に帰ってゆっくりできるから?
いや違う、きっと苦しく思える日常にちょっとした楽しみがあったから
友達とお腹の底から笑う休み時間
メラメラ燃える給食ジャンケン
くだらないおふざけ
でもその楽しさも私はすぐに忘れてしまう
そしてまた
ゆううつな気持ちで朝起きてしまう
こんな日常も幸せなのだろうか
そう思うと私はいつもより少しだけ軽い足取りで歩いていた

ゆううつな朝。学校へ行くと帰るとでは、気持ちがちがうのは仕方ないか。逆の場合もある。学校では縛られることも多いけど、友だちに会って楽しいこともある。また朝起きてしまう。
空 山田 優花
(十日町市立中条中学校1年)
空はいつも私たちを見ている
青く晴々とした明るい笑みをうかべたり
雲だらけの薄暗い表情をしていたり
まっくらな顔で大粒の涙を流したり
そんな人間らしい一面もあれば
星のドレスを身にまとっていたり
月のバッジを付けている事もある
いろいろな表情や
いろいろな姿をした君がいるけれど
今日の君は
どんな顔?どんな姿?

空はいろいろな表情でみんなを見ている。「星のドレス」や「月のバッジ」と捉えたのはおもしろい。そう感じることもある。自分たちもいろいろだけれど、空もいろいろなのだ。
スリーポイントシュート 山中 ルーカス
(前橋市立箱田中学校1年)
試合の中
ボールが回ってきた
誰も邪魔してこない
敵の動きがゆっくりだ
気づいた
これはゾーンに入っている
そしてボールをしっかり持った
そして左手を添える
全身に力を入れ
スリーポイントラインに立った
誰も追いつけない
誰も止められない
誰も邪魔出来ない
そしてボールを放った
その動きは
クジラが海面上に躍り上がったように
宙を舞う
会場が静かになった
宙を舞ったボールを見つめる
パサットンットントン
微かな音が鳴り響く
その先を見た
リングのネットが揺れていた
ビーッパチパチパチ
試合終了のブザーと共に
拍手が鳴り響いていた
仲間たちと観客が喜ぶ
そして
気づいた
試合に勝った

バスケットの試合の動きがスムーズにとらえられている。しかもリアルなスピード感を持って、晴々と描写されている。最後に試合に勝ったのだから、そうなのだ。おめでとう!
第31回矢沢宰賞の審査を終えて
今年の夏の猛暑は、みなさんも経験されたことでしょう。「異常気象」のせいでしょうか。
それにもかかわらず、みなさんからたくさんの詩の応募があったことはうれしい限りです。暑さにめげず元気だったり、悩んでいたりしても、若者らしく前向きです。それが大切なことだと思います。コロナ禍のために三年連続で授賞式「矢沢宰 生命の詩の集い」は中止になりましたけれど、昨年から再開されています。うれしいですね。
世の中には「常識」とか「通念」というものがあります。それももちろん大事ですが、それにばかりとらわれていては、自分の世界を固くちっぽけなものにしてしまいます。周囲にいろいろな言葉が溢れていますが、自分の言葉や捉え方をもつことが最も重要です。この賞はそのためにもあるのです。
会場で入選者のみなさんと初めてお会いして、その作品を思い浮かべるときが、選者である私にはとてもスリリングな瞬間なのです。「この人があの詩を書いたのか!」と。今年も授賞式に、私は体調が悪くて出席できませんけれど、作品に付した選評をくりかえし読んでください。何度も読み返して、選評はみなさんが詩を書くときのエネルギーに負けていないつもりです。自分の時間は少しずつ増えてくるでしょう。時間を作って詩作にも挑みましょう。
すべての作品に目を通して、最終的にご覧のようにしぼりました。入選の喜びをふくらませ、また選にもれた悔しさを倍のエネルギーにして、今回だけでなく詩を愛して書きつづけましょう。
- 審査員 八木 忠栄
1941年見附市生まれ。日大芸術学部卒。
「現代詩手帳」編集長、銀座セゾン劇場総支配人を歴任。
現在、個人誌「いちばん寒い場所」主宰。日本現代詩人会理事。青山女子短大講師。
詩集「きんにくの唄」「八木忠栄詩集」「雲の縁側」(現代詩花椿賞)他多数、エッセイ集「詩人漂流ノート」「落語新時代」他、句集「雪やまず」「身体論」(吟遊俳句賞)。
年ごとの入賞作品のご紹介
回 | 最優秀賞受賞者 | タイトル |
---|---|---|
第1回(平成6年) | 山本 妙 | 本当のこと |
第2回(平成7年) | 山本 妙 | 災害 |
第3回(平成8年) | 高橋 美智子 | 小さな翼をこの空へ |
第4回(平成9年) | 野尻 由依 | 大すきなふくばあ |
第5回(平成10年) | 佐藤 夏希 | お日さまの一日 |
第6回(平成11年) | 除村美智代 | 大きなもの |
第7回(平成12年) | 徳田 健 | ありがとう |
第8回(平成13年) | 井上 朝子 | おくりもの |
第9回(平成14年) | 藪田 みゆき | 今日は一生に一回だけ |
第10回(平成15年) | 日沖 七瀬 | 韓国地下鉄放火事件の悲劇 |
第11回(平成16年) | 佐藤 ななせ | 抱きしめる |
第12回(平成17年) | 髙島 健祐 | えんぴつとけしゴム |
第13回(平成18年) | 濱野 沙苗 | 机の中に |
第14回(平成19年) | 田村 美咲 | おーい!たいようくーん |
第15回(平成20年) | 高橋 菜美 | 空唄 |
第16回(平成21年) | 今津 翼 | 冬景色 |
第17回(平成22年) | 西田 麻里 | 命に感謝 |
第18回(平成23年) | 山谷 圭祐 | 木 |
第19回(平成24年) | 坂井 真唯 | クレヨン |
第20回(平成25年) | 宮嶋和佳奈 | 広い海 |
第21回(平成26年) | 金田一 晴華 | 心樹 |
第22回(平成27年) | 安藤 絵美 | 拝啓 お母さん |
第23回(平成28年) | 宮下 月希 | 大好きな音 |
第24回(平成29年) | 宮下 月希 | 心のトビラ |
第25回(平成30年) | 阿部 圭佑 | ものさし |
第26回(令和元年) | 上田 士稀 | 何かのかけら |
第27回(令和2年) | 宮下 音奏 | 大好きな声 |
第28回(令和3年) | 横田 惇平 | ふくきたる夏休み |
第29回(令和4年) | 野田 惺 | やっと言えた |
第30回(令和5年) | 舘野 絢香 | 気持ちをカタチに 思いを届ける |
第31回(令和6年) | 青栁 雄大 | 黒板 |