第27回矢沢宰賞

第27回矢沢宰賞

最優秀賞

大好きな声   宮下 音奏


声の音、全部ちがう人の声。

ひくい声
高い声

ボクの声はどうだろう。

でっかくて、ちょっとだけひくい声。

ちょっとだけ好きなボクの声。

でもこの声、
もうちょっとすると変化する。

大人になっていくと変わるんだって。

男の人だけ変わるんだって。

どんな声になるのかな。

どんな声が好き?

歌う声、おこる声、泣く声、わらう声。

これだけは、きらいなおこられる声。

どれも全部ちがう音の声。

毎日料理しながら歌うママのごきげん声。

ギターひきながら歌うおねえちゃんの声。

茶わんあらいながら歌うパパの鼻歌。

負けずに歌うボクのでっかい声。

どれも全部ちがう声。

周りが聞いたら、
うるさいと言うだろう。

でも声が歌になると、家の中はにぎやかで楽しい。

声と声のハーモニー。

ボクの名前。音がつく。
「音奏」音を奏でると書いて、めろ

はずかしいけど、ステキでしょ?

きっとこの名前だから歌が好き。

みんなちがう声が好き。

声のトーンは、心の音
気持ちのバロメーター。

いろんな声をきかせてよ。
ボクの心にとどくように!

いっぱい、いっぱい 聞かせてよ。
審査員
審査員

他人の声や自分の声、さまざまな声がまわりにはたくさんある。歌う声、おこる声、泣く声……みんなちがう。
家のなかでも、ママやパパ、おねえちゃんの声にもそれぞれちがいがある。
そう、「全部ちがう声」でありながら、ハーモニーになっている。だからにぎやかであり、楽しい。
作者の名前もなんと「音奏」で、声や音楽と縁がふかい。「声のトーンは、心の音」ということに気がついている。
いろんな声をきくためには、自分の声をまず出すこと。

奨励賞

いっぱい さわって あるけたよ   鈴木 愛菜


てすり わかる

あいずのすず わかる
きょうしつだ

てすり わかる
いいにおい
ランチルーム

てすり わかる
かいだん のぼるよ
2かいに いけた

いっぱい さわって あるけたよ
審査員
審査員

さわってわかる、かいだんのぼる。てすりはありがたいし、うれしい。また、いいにおいでランチルームがわかる。
きょうのランチは何かなあ、ときっとそうぞうしているのかもしれないね。まちどおしい。てすりにさわりながらかいだんをのぼる。
するとべつの世界がそこにひらける。ムダなくかんけつに書けている。

素朴なあいさつ   鈴木 晃徳


「おはよう」

その一言で僕の一日が始まる

カーテンを開けると暑苦しい日差しが僕を目がけてやってくる

野菜はうれしい顔をして水をおいしそうに飲んでいる

木の葉は華麗なダンスを見せつけて、皆の心を弾ませる

全てのものに感情があるように
僕の心は満プクだ

「いただきます」

僕の腹から音が鳴る

大地の恩恵を受けて育った野菜

農家一人一人の手によってつくられた米

僕たち人間のため命を恵んでくれた動物たち

彼らの命は僕にとって大きな命なのである

そんなことを考えていると、僕は生きていることを感じる

全ての食べ物に感謝を込めて
僕のお腹は満プクだ

「おやすみ」

僕は深い眠りにつく

ここはどこだろう

今何をしているのだろう

考えれば考えるほど分らなくなってくる

死んだあとの世界はどうなっているだろうか

明日はどんな一日になっているだろう

そんなことだれにだって分かりはしない

今日も漆黒の月が僕を照らす
僕の頭は満プクだ
審査員
審査員

朝の「おはよう」にはじまって、夜の「おやすみ」まで、あいさつは素朴で、余分なことは言っていない。
野菜や木の葉など、それらが心をはずませて、朝の心は「満プク」する。
野菜や米、肉を食べ感謝して、昼のお腹も「満プク」。夜、眠りにつく前に明日のことを考えると、何と頭が「満プク」。ぐっすり眠れる。

おとなそだて   横田 惇平


ぼくはままにききました。
「ねぇ、ぼくんちなんでペットをかっていないの?」

するとままはいいました。
「ペットのおせわまでできないよ。
こそだてだけでせいいっぱいだもん。」

そしてぼくはいいました。
「ぼくがペットのおせわするよ。
ぼくだってままのおとなそだてしてるもん。」

ままはわらっていいました。
「そうだね。おとなそだてってたいへんだよね。」

あーー、ふくろうとかペット
かいたいなー。

あーー、なんでぼくはおとなそだて
しなくちゃなんだ。

ぼくはまいにちいそがしい。
審査員
審査員

「おとなそだて」という言葉は造語でしょうけれど、おもしろい。ママはペットどころではない、「子そだて」でたいへんなのだ。
だとしたら、ぼくはママの「おとなそだて」をしていることになる? そう言えるかもしれないね(笑)。
これもたいへん。最後の一行「ぼくはまいにちいそがしい」に盛大な拍手を!

僕の高校生活   川本 侑矢


入学式、いよいよ高校生

最初、友達ができなかった
勇気が出なかったからだ

今では声をかける勇気が出るようになった

学校の授業、最初慣れなかった

今ではだんだんと慣れ分るようになった

校内実習、僕が好きな「木にさわること」ができた
うれしかった

実習の反省会では、
振り返りと
これから目指すことの発表

先生からは評価とアドバイス
寄宿舎での生活

洗たく物を入れてスイッチを押す
待っている間、お菓子を食べる

最初、難しかった
これもだんだんと慣れてきた

寄宿舎での勉強
字をキレイに書く練習

その日の日記
字をキレイに書くのは難しかった

今では、キレイに書くのは簡単
寄宿舎では、お風呂や脱衣所で、先パイや友人、先生と話す それが楽しい

大変なこともたくさんある高校生活

うれしかったり楽しかったりする高校生活
審査員
審査員

高校生活のはじめは、勉強も寄宿舎も慣れないことだらけでしょう。誰もがそうなのだ。
ところが、日がたって慣れてくるにしたがって、勇気も声も出るようになる。実習もそう。発表もできるようになる。
日記の文字がきれいに書けるようになったのはうれしい。「木にさわること」をもっと書いてほしかった。

木   平田 りの


この木だけ
ずっと前から生きている

一本だけ
だれよりも長く生きている

だからきっと
物知りなんだろう

私の知らないことを
知っているんだろう

でもその分
苦しいことも大変なことも
あっただろう

この木を見るとそう思う
だからわたしは
この木がずっと生きていてほしい

そしてたくさんの人に
生きることの素晴らしさを
教えてあげてほしい。
審査員
審査員

一本だけでずっと立って生きている木を、じいっと見つづけている詩だ。いろんなことが想像されるだろう。
事実もあるだろうけれど、心を豊かにしてじいっと見つめ、かつ自由に想像したらいい。
木は黙っているけれど、「物知りなんだろう」し、大変なこともあったと思われる。生きることはすばらしいのだ。

入選 (50音順)

夏の声   飯塚 大河


夏の声がする。僕達がまっていた夏の声だ。

夏が楽しみな僕は、夏の声を聴いている。

小鳥の鳴き声がする。
涼しげなそよ風を感じさせる小鳥のさえずりだ。
眠い目をこすりながら、ラジオの声で踊っている。

セミの声がする。
夏の暑さを感じるセミの声だ。
青々とした緑の中に、セミの声が響いている。

少年達の声がする。
虫取りをしてはしゃいでいる無邪気な声だ。
麦わら帽子で半分陰るその顔に、無垢な顔が煌きらめいた。

ひぐらしの声がする。
夏の終わりを告げる声だ。
夕日が静かに眠るとき、寂寥せきりょうの声を聴いている。
審査員
審査員

夏の声はいろいろある。小鳥、セミ、少年達、ひぐらし……その他にも周囲に夏の声があふれて、にぎやかに心もはずんでくる。
それらにまじって、自分の声がどうからんでくるか。

大切な君へ   砂金 美羽


僕が産まれた時、君はもうこの家にいたね

気が付けば、いつもそばにいた

ピンクのじゅうたんの様な道
セミの抜け殻がいっぱいの道
落ち葉でかくれんぼした道
ふわふわの雪を食べながら歩く道
いつも先を行く君、ついていく僕

いつしか、君の瞳に景色がなくなった

僕より歩くのがゆっくりになった
そして、あの日空へと旅立った

まだあたたかい君にしがみつき
何度も何度も名前を呼んだ

抜け殻になった僕
ある日、君のいた小屋とサッカーボールを見つめていたら、優しい鳴き声が聞こえた気がした
大切な君へ、これから僕が、誰かを守って、癒せる君みたいな大きな存在になるから
審査員
審査員

自分が生まれる前から、家で飼われていた犬だろうか? いつも道で遊んでいたのに、やがて弱って旅立ってしまった。
住んでいた小屋とサッカーボールに、そのまぼろしを追う。

日付   市岡 杏


明日の予定を書いていたはずの手は、
気づくといつも止まっていて

私の視線はカレンダーにあった

足を止めようとは思わない

生じた遅れと損失を埋めるため
遠くで働く彼らに応えるため
息が切れても走り続けなければならない

誰を責めるつもりもない
恵まれた今をけなすほど
「もしも」と過去を嘆くほど
私ももう幼くはない
はずだったのだが

その日付は
私の心の金庫の暗証番号だったらしい
どうにかしまいこみ 忘れたつもりでいた

「流すはずだった汗」
「踏むはずだった土」
「撮るはずだった写真」

銅の心は融けて溶銑となり
思考をものみこみながら
瞳のふちからこぼれ落ち
手帳に灰色の染みをつくった

楽しげに囲む金色ボールペン
無情に掻き消す二重黒線

ああ どうか
このひとかけらの主張
激情の結晶にだけは
正直でいさせてください
審査員
審査員

心も思考も生長する。書きこむはずだった明日の日付は「私の心の金庫の暗証番号」だった。
そのへんに、生長する作者の内的葛藤やためらいがあるのだろう。悩んでいる内省。

小さな宇宙   伊藤 采穂


あなたの体に宇宙がある

わたしの体に宇宙がある

すっごくすっごく小さな宇宙

みんなそれぞれ違う宇宙

友達とはしゃいだ昼休み

家族で見たハシビロコウ

とってもとってもいい思い出

小さな宇宙につまってる

笑って 泣いて 驚いて
憎んで 怒って 考えて

いっぱいいっぱい働いている

小さな宇宙は休みがない

宇宙はいつか消えるけど

つぎの宇宙につないでく

どっさりどっさり宝をのこす

宇宙は宇宙へかえってく

小さな宇宙は未知の世界

新たな可能性で溢れてる

たっぷりたっぷり時間をかけ

自分のホシを見つけ出す
審査員
審査員

誰の内部にも宇宙があるという発見。それは小さくてそれぞれに違うけれど、それをどんな宇宙に育てるかは、その持ち主しだい。どの宇宙も、おおくの可能性にあふれている。

聞こえる   井原 功陽


ピュンピュン
ば車の音

プクプク
水の音

ちゅるちゅる
パスタを食べる音

ピカピカ
きれいな空

ザワザワ
海の音

あぁイタリアに行きたい
審査員
審査員

馬車の音をはじめ海の音まで、世界はさまざまな音にあふれていることを、端的にサラリととらえている。それらからなぜかイタリアを想像して、「イタリアに行きたい」と思う。

この気持ち   上中 ひなた


僕の心に大きく静かな
雷おちた

つややかなかみに
すいこまれるようなひとみ
かわいらしい声
少しおとなびた背中

名前もしらない君に
この名前のない気持ち
君にもこの気持ちを理解してほしい

でもつたえるのははずかしい

もやもやする

でもここちいい

これは病なのだろうか

でもなおしたくはない

もしあの子も同じ気持ちだったなら
この気持ちに名前がほしい

この名前のない気持ちに
審査員
審査員

誰かをおもっている気持ちを、無駄なく書いている。第二連からは「女性」だとわかる。
名づけようがなくて複雑な気持ち、すなわち「名前のない気持ち」のことは、理解できる。

LINE   宇佐 亮


LINEで送ってくれた4枚の写真

僕の心の中に君の世界が広がる

空に向かう女の子は 未来に向かって飛びたとうとしてるのかな?

階段で立ち止まる女の子は また頭を上げることはあるのかな?

君は何を伝えようとしているの

夢・希望それとも迷い?

君が写真を撮る姿さえ見たことない僕

だからこれは独断と偏見なのさ

タンポポの綿毛を持つ手は 風を待っているのかな

赤い実を取ろうとして止まった君の手は 心の中で彷徨っているのかな

夢と現実のはざまで揺れる君へ

ちょっとだけでいいからこっちにカメラを向けて
ギターを背負う僕がいるでしょ

僕だって階段の途中で立ち止まることもある

僕の手が空をさまようときもある

だけど君の写真に勇気づけられて
空に向かい風を待って
一歩踏み出そうとしてるのさ

君を縛っている社会の常識や固定概念をぶち破って
綿毛となって一緒に自由に飛ぼうよと歌っているのさ

君の写真に写りたい

君の心に僕は映りたいんだ

シャッターボタンを押してよ

LINE送ってね
審査員
審査員

LINEで送られてきた写真で「僕の世界」だけでなく「君の世界」も広がってゆく。
直接どうこうではなくて、写真によって、両者とも前向きで健康的であることがよくわかる。

「相撲」   岸川 太一


けい古場のドアをあけたら
先輩たちのすがたが見えた

まわしをはめたら 気合が入った

じく足に体重をかけて
しこをふむ

体幹トレーニングをする

さぁ 準備はできた

今から ぶつかりげいこだ!
いつも 取り組みになると
県一位のライバルと
練習をしていた

今日は俺が勝ってやる!
全心でぶつかっていくぞ!

今日は負けた やっぱりあいつは強い
次からはあいつに負けないよう
人一倍努力してやる

大会でみてろよ

たおすからな!!
審査員
審査員

相撲部に入ったからには強くなりたいよねえ。がんばって稽古しているが、強いライバルがいてなかなか勝てない。でも努力して大会で「たおすからな!!」。その気合いだよ。

鉄道好き   北畑 蓮


一日中 ずっと 乗っていられる
乗り鉄

一日中 時刻表 見ていられる
時刻表鉄

一日中 写真を 撮っていられる
撮り鉄

一日中 鉄道を 見ていられる
見鉄

一日中 駅弁を 食べていられる
駅弁鉄

一日中 鉄道模型を 集めていられる
収集鉄

一日中 車両について 話していられる
車両鉄

一日中 駅そばを 食べていられる
駅そば鉄

それぞれの 鉄道ファンがいる


僕は 全部 当てはまる オール鉄だ
審査員
審査員

鉄道好きなんだねえ。いろいろある中でも「撮り鉄」や「駅弁鉄」なんて現実にはないだろうけれど、あったら愉快だね。
その想像力には感心するばかりだよ、「オール鉄」くん。

木   桑原 悠馬


私たちの周りにある木いったいどんなことを考えているのかな

みんなが笑うといっしょに笑う
みんなが泣くと木も泣く

そうしてみんなの中にいつもいっしょにいる

みんなが笑うといっしょに笑う
みんなが泣くといっしょに泣く

木って不思議
木ってったった一人のともだちみたい

私たちの周りにある木

でも私たちがねているときのようにしずかだ。

木って不思議
木ってたった一人のともだちみたい

いったいどんなことを考えているのかな
審査員
審査員

わたしたちのまわりにありながら、みんなに見すごされている木に目をとめて、木のあり方や感情まで、あれこれと考えている。木だって別物じゃなくて、みんなのなかまなのだ。

はしる はやみかがやき   齊藤 鉄平


はしる はしる
いつまでも

はしる はしる
どこまでも

たとえ背中が
おもくても

たとえ足が
いたくても

せんろの上しか
はしれない

せんろの外には
でられない

それでも はしる

じぶんがじぶんで
あるかぎり
審査員
審査員

とにかくはしる。はしっているのは「せんろ」のうえだから、電車か。「おもくて」も「いたくて」も、はしりつづけるのが電車の使命。同じようなことは人間にたいしてもいえる。

勉強机   佐藤 かほる


今日も私は学校に行く

かいだんをのぼって
教室につく

そしてすわる

そうすると机がだきしめてくれる

ずーとだきしめてくれる

大きなせなかで
お母さんみたいに
見守ってくれる

美しいせなかで
いつまでも
見守ってくれる

これからも
えいえんに
見守ってくれる

今日も学校がおわる
私の勉強机はそっとだきよせた

今日もありがとう
私の勉強机
審査員
審査員

そうか、教室の机は「だきしめてくれる」んだ。お母さんのように、机は見守ってくれるんだ。
教室でただ勉強するのではなくて、そこまで感じる。勉強机にささげる愛と感謝。

花   佐藤 楓花


花はきれいだ

でも花は水をあげないと
かれる花もある
かれない花もある

花はきれいだ

でもきれいではない
花もあるかもしれない

その花には個性があった
きれいではなかったと思う

その人と同じ考えを持った人が
その花をぬこうとした

でもちがう考えを持った人が
それをとめた

だからその花は今を生きている

花と同じように
人それぞれなのだから
まわりを気にせず
自分らしく生きていれば
いいと思う
審査員
審査員

花だからきれいだとはかぎらない。花にもいろいろ個性があって一律ではない。

だから花はすばらしいのだ。

同じように人にも個性にちがいがある。周囲を気にしなくてもいい。

風のバス 羽風たんぼぼ   佐藤 彩夏


とうめいな風のバス

今日のお客は
たんぽぽの綿毛

あっちこっちへ
乗せて行き
どこかの駅で
降ろして消える

明日のお客は
だれだろう
審査員
審査員

おもしろいバスの発想です。これは一般に人が乗るのとちがうバスで、作者の発見なのでしょう。楽しそうです。「たんぽぽの綿毛」だけじゃなく、どんなお客を乗せるのかな?

こんなふうに生きるには   島香 春菜


自分の意志で人生を生きるにはどうしたらいいのかな

笑うこと
楽しむこと
泣くこと
怒ること
さびしがること

それらの感情を感じることができたら
自分の意志で人生を生きられるのかな

だけどその感情を感じることができなかったら
どうなるのかな

人生を楽しく生きるためには
どうしたらいいのかな

おしゃべりすること
本を読むこと
テレビを見ること
運動をすること
ゲームをすること

それらの他にも楽しみを見つけられたら
人生を楽しく生きられるのかな

だけど楽しみを一つでも見つけられなかったら
楽しく生きられないのかな

人生を平和に生きるためには
どうしたらいいのかな

傷をつくらない
ケンカをしない
暴力をしない
仲間はずれにしない
イジメをしない

それらを守れば
人生を平和に生きられるのかな

だけどそれらのことを守る以外にも
平和に暮らせる方法はあるのかな

私は心の片隅でこんなことを考えている
審査員
審査員

人生を楽しく生きるには、いろんな感情を感じたり、楽しみを見つけたりすることが大切らしい。「……かな」「……かな」と疑問を呈しながら、作者は平和に生きる方法をさぐる。

わたしを信じて   菅野 莉子


私は真面目

怒る時は本気で怒り
笑う時は本気で笑う
泣く時も、悩む時も

真面目なのはいい事なのに
人はそれを「気分屋」と言った

わたしは真面目に生きているだけ

私は素直
聞かれたことは誤摩化せないし
思ったこともすぐ言っちゃう

素直なのはいい事でしょう?

やっぱり人は言った「馬鹿だ」と

わたしは自分に嘘をつけないだけ

私はわたしでいたいだけ

周りにどう思われようと
心を曲げずに痛いだけ

私はわたしが好きだから

駄目なところも好きだから

私がわたしを好きでなきゃ

生きてなんか居られない

痛い、居たい、いたいだけ

わたしらしくいたいだけ
私はわたしのままで

これからだって
審査員
審査員

怒る時も笑う時も泣く時も本気なのだ、真面目だから。だれが何と言おうと、真面目で素直なことは大切なことだ。よほどの信念か自信がなくては、それはじつはたいへんなこと。

母の声   鈴木 人輝


「起きなさい」母の声だ

たぶん三回目か四回目の母の起こす声だ

僕の体が揺れる 母が僕をゆすったからだ

しぶしぶ僕は体を起こす

「いつまでねてるの」

今朝はこのバージョンだ

他には
「早くねないからでしょ」
「もう起こさないよ」
などのバージョンもある

ねぼけたまま階段を降りる

台所には母が朝食の準備をしている

チラッと僕を見る
「昨日用意した物大丈夫なの?」

コクンとうなずく僕

毎朝の母とのやり取りだ

そして母の
「いってらっしゃい」
の声で背中を押され玄関を出る

テクテク通学路歩いているとふと思う

僕の一日は母の声から始まっているんだなー

明日も明後日も明々後日も
審査員
審査員

起床する時から学校へ出かけるまで、いちいち母の声に後押しされている。
さまざまなバージョンがある、どこやらその声に甘えていることも自覚している。

でも、甘えてしまう。

日常   髙濵 彩佑生


いつもの「おはよう」

いつもの道

いつもの電車

いつものバス

いつもの学校

いつもの教室

いつもの朝の会

いつもの授業

いつもの給食

いつもの休み時間

いつもの帰りの会

いつもの部活

いつもの「また明日」


いつもの日常が恋しい。
審査員
審査員

朝、起きるから学校へ行き、帰宅するまで、「いつもの」日常をくりかえす。平凡な日常のようだが、そのくりかえしができることの幸せを、作者はひそかに感じているのだろう。

音楽は心理学者   滝澤 可奈子


誰かが楽器を鳴らすと

それに合わせて
誰かが楽器を鳴らす

一人
もう一人と
楽器を鳴らしていくと
いつの間にか
皆が息をそろえて
ハーモニーをつくりあげている

だって音楽がつなげてくれたから

外に出れば
遠くまで響きわたる音色が聞こえ

中に入れば
心の底に刻み込まれる音色が聞こえる

気付いたら
私は音楽に囲まれている

時には
音のない音楽が聞こえる

音楽は幸せをつくるだけではない
様々な事を教えてくれる

楽器を鳴らすと
時に
悲しい音や
明るい音が出る

そう
楽器たちは
私たちの感情を
教えてくれているのだ

あたかも
私の心情を複製したように
審査員
審査員

楽器同士が共鳴しあって音楽をつなげ、作ってゆく。内でも外でも、わたしたちは「音楽に囲まれている」のだ。音楽はさまざまな音を発して、私たちの感情を「複製」してくれる。

「かみ」   遠山 俊佐


ぼくはかみを切ってもらう


太陽がまぶしい庭でバリカン片手に
「ジョリ、ジョリ、ジョリ、ジョリ」
音がする

ボサボサ頭じゃなくなって、かみがどんどん落ちてくる

糸のようにサラリと

雪のようにパラリと

雨のようにパチャリと

気持ち良いな、すずしいな、かみを切って
良かったな

かみを切ってくれてありがとう

でもすぐに
かみはどんどんのびてしまう

少しずつ、ゆっくりと
耳にかかるように
おでこがかくれるように

また切らなきゃだめかなぁ

今日もたのんでみようかな
審査員
審査員

伸びたかみ(髪)をジョリジョリ切ってもらう気持ちよさ。雪のように雨のように落ちてくる気持ちよさが、伝わってくる。かみはどんどん伸びる。また切ってもらおうとたのむ。

ひまわり   冨樫 歩夢


初めて見た時
私の中に小さな雷が落ちた

まっすぐ上へと伸びている姿

しっかり上を見ている姿

とても大きく自信に溢れる姿

それはまるで私の理想の姿

大きな憧れを抱いた

その大きな存在感に

その大きな立ち姿に

ただの一輪の花なのに

ただの黄色い花なのに

そんなただの花が
私はとてもかっこいいと思った

小さな太陽だと思った

輝いていて

大きくて

すべてを照らしているようで

すべてを見守っているようで

すべてを知っているようで

そんなすべてがすごいと思う

だから追いかけたくなる

かっこいい姿を

美しい姿を

理想の姿を

まだまだ追いつけないけれど

手が届くように

努力して

手を伸ばし

いつかは手が届くように


小さいけれど大きいその姿に
審査員
審査員

まっすぐしっかり、上に向かって伸びてゆくひまわりをよく観察している。
「輝いていて」「すべてを見守っている」そんな姿を追いかけ、手が届くように自分もがんばりたい。

新しいもの   永井 晃気


なぜだろう

この世には人がいる

この世には物がある

この世には空気がある


なぜだろう

何もしていないときは

何かしたいと思う

何かしているときは

何もしたくないと思う


なぜだろう

まるで空を見ている時に

何もせず周りも気にせず
ぼっーとしている時の様に

自分の心で思っていても
すぐに動くことができない


なぜだろう

まるで何かを
守っているかの様に
この世には山がある

まるで何かを
覆っているかの様に
この世には海がある


なぜだろう
新しい事をしてみたいのに
自分でやろうとは思わない

今から過去に戻って
色々やり直したいのに
今を生きていたい


なぜだろう
鳥が空を飛ぶ様に
自由になりたい

風が雲を押し出す様に
誰かの背中を押してみたい


なぜだろう
審査員
審査員

「なぜだろう」と、くりかえしこの世と自分に疑問を投げかけている。人がいて、物があって、空気がある。そこから問いははじまっている。問うことこそ自由に生きること。

優しかった曽祖母   長尾 和来

僕のひいばあちゃん
1年前に亡くなった

102歳

大好きだったひいばあちゃん

泣いても泣いても涙がとまらず

心にポッカリ大きな穴
「よう来たのー」
「お前が一番かわいい」
と笑顔のひいばあちゃん

介護施設でぬってもらったマニキュア

すごく嬉しそう、キラッキラのつめ
「これが一番の楽しみー」
ととり出したタバコ、

幸せそうな顔で吸っていたあの日

車いすを押したり痒い所に薬を塗る
「ありがとう、ありがとう」
とひいばあちゃん

「まだまだ天からの迎えが来んからしかたない」と冗談もよく言ってた

葬儀の日
僕はひいばあちゃんがいないと生きていけないと泣いた

父の目にもあふれんばかりの涙

もっともっと長生きして欲しかった

もっともっと一緒にいたかった

僕の心の中で生きている

どこかで僕を見守っていてくれる
審査員
審査員

優しかった笑顔のひいばあちゃんの死。もっともっと生きていてほしかったけれど、年齢にはかなわない。ぬってもらったマニキュアがいとしい。きっと見守っていてくれるよ。

ぼくのぼうし   西 桜


ぼくは、たろう

大切なぼうしをなくした

ともだちのひまちゃんに
ぼくのぼうしを見たか聞いてみたら

だっくんの家にころがっていたよ
といったから

だっくんの家に行って聞いたら

いちごちゃんの家にころがっていたよ
といって家に入っていった

いちごちゃんに聞いたら

さっきわたしの家にぶつかってこわれちゃったよ

たろうくんはめちゃくちゃしょっくをうけてかなしんでいました

それは、今日たろうくんのたんじょうびだからです

そのよるたろうくんの家で
みんなでパーティーのじゅんびをしていました

かなしんでいたたろうくんが家に帰ったらびっくり

それでたろうくんがプレゼントを開けると
ぼくのぼうしが入っていました

それでたろうくんはよろこんでいました
それであそんでつかれたのでふでばこの中でねました
審査員
審査員

たろうくんの大切なぼうしがなくなり、ともだち何人かに聞いたけれどわからない。
その夜のたろうくんのたんじょうびパーティに、ぼくのぼうしのプレゼント。
ぼくはエンピツ?

天気のきもち   西村 京佑


雨がいっぱい降る。

空が泣いている。

雷がゴオーンと鳴っている。

空が怒っている。

晴れと雨がまざっている。
きっとデート中だ。

晴れているのは彼氏。
雨は彼女だな。

気温が高い。
もしかして空がイライラしているのかも。

気温が低い。
もしかして空が邪悪で冷たいようだ。

みんながおびえている。

風が強い。
空の子供が、風車で遊んでいる。


空の気持ちは、まだまだ分からない。
審査員
審査員

天気にはいろいろな表情がある。「晴れ」と「雨」のデートというのはおもしろい発想だなあ、ゆかい愉快。「空の子供」が「風車で遊んでいる」という発想も自在ですばらしい。

見えない色   萩原 果林


始まりは透明

だれだってそうだ

この世に芽吹いたのならば
布に染み込むように染まっていく

皓月のような白

あの鳥のような青

アスターのような赤

一人一人がもっている
変えることのできる色
変えることのできない色

何色がいいだろう

嫌いな色があるならば変えればいい

好きな色があるならば大切にすればいい

色は無限大

真っ白な太陽

真っ黒な雲

表に出す色 出さない色

何色を見せようか

色はファッションだ

まだ出会ってない色に出会いたい

あれみたいな綺麗な色になりたい

赤だけの世界などない

白だけの世界だってない

みんな違う色を持っている


この世界は色で溢れている
審査員
審査員

色でこの世を見よう(読もう)としている。単純ではない。嫌いな色・好きな色があっても、じつはたいてい思うようにはいかない。これからどんな色を発見するか、作り出すか。

くだもの   林 陽菜乃


しゃきしゃきりんご

ぷるんぷるんぶどう

ぷちゅぷちゅいちご

ぷしゅぷしゅれもん

ちょろちょろもも

むりむりばなな

とろとろさくらんぼ

しゅるしゅるすいか

たらたらめろん

ぷちゃぷちゃみかん

ぷらんぷらんぱいなっぷる

しゅうしゅうぶるうべりい

だりだりらいち

すりすりなし
審査員
審査員

作者はくだものがすきなのかな? それらを食べるときの音をくふうして、つくりだしている。
きまりきった音ではなく、じぶんにしかわからない音がさぐられている点が大切。

ありがとう   福田 雪輝


あいさつしてくれてありがとう

いつもわらってくれてありがとう

温かい料理をありがとう

一緒にいてくれてありがとう

泣き合ってくれてありがとう

助けてくれてありがとう

励ましてくれてありがとう

教えてくれてありがとう

産んでくれてありがとう

すべてにありがとう

あたり前は無くなって初めて気づく

自分の何かが無いような気がして

太陽が暗くて

光が闇に見える

あたり前だったありがとう

言えなくなってしまった
ありがとう

心を込めて言えていたのだろうか

言えてなかったのなら言いたい

何を言えばいいのかな

聞こえるのかな
雲の上まで

でもきっと聞える
そう信じて
心を込めて
大声で叫んだ

ありがとう

そうしたら黒い雲が白く

黒い空が青く

暗い心が明るくなった

雲の上までとどいたみたい

だって

聞き慣れた懐しくも

温かい声で返って来たから


ありがとうって
審査員
審査員

生きていく上でのあらゆることに対して「ありがとう」の言葉。そこには心もこめられているはずである。感謝の気持ちをもつこと。それによって気持ちも、景色も晴れてくる。

思いのキャンバス   眞塩 心菜


真っ白なキャンバス

君は様々な色に染まる

様々な形に姿を変える

どんな風に描こうか
想像するだけで胸が高なる

筆の穂先を色で包み込めば
筆は艶やかに光った

そしてキャンバスの上で踊るんだ

色鮮やかなキャンバス
私だけの世界がここにある
一枚の絵は多くを魅せる
窮屈だけど自由な場所

ずっとここにいたい

悲しいときや辛いとき
君は私の心に寄り添う

いつしか私の一部になっていた
真っ白なキャンバス

今の気持ちをここに残そう

筆と絵の具を手に取り
思いのままに色を重ねた

未来でこの絵を見て

今の気持ちを思い出すために
審査員
審査員

キャンバスは「自由の場所」だ。真っ白いキャンバスは楽しいとき・悲しいときによって、何色にも染まる。自分の気持ちをどう描こうか、胸が高鳴る。一人こもってはいけない。

「森のギター」   溝上 健志朗


私が生きていると思う瞬間


それはギターを弾くとき

風を感じながら
ギターを弾く

森を感じる風の声
ギターの横に日差しが差す

もう夕方だ
ギターを弾くと時間を忘れる

もくもくと練習をする
「カッコウ」の曲

ギターを弾くとさわやかな気持ち
ギターの音色


森の中にいるような
審査員
審査員

「ギターを弾く」とき、風を感じ森を感じる。それは自分と素直に向きあえる貴重な時間でもあるが、時間を忘れる体験も大切。この「ギター」は他の楽器であってもかまわない。

教訓   宮下 月希


私には、何ができるだろう

素直になること

目を見てじっくり話を聞くこと

悪いと思えること

泣くこと

好きになること

言葉で伝えること

毎日そばにいること

そして仲直りできること

みんな簡単だけど、難しい

ケンカして、ケンカして、ケンカして
弟だけど、許せない
弟だけど、容赦ない

だって私と弟は違う

同じママのお腹から産まれ
同じ環境で育ち、同じご飯を食べ
同じ空間で共にする。

でも、全て同じじゃない。

育った年日、

男と女

友達、先生、出会った人

得てきたことが違う。

違ってケンカして当たり前

性格だって生まれつき違う

だから、素直に言えない、わだかまり

エンドレスの言い合い

どうしたらいいんだろう

自分に問いかける

“ごめんね”

の一言なのに、たった一言が言えない

喉につまった、違和感をスッーと溶かす
母の魔法の8ケ条

怒りから悩んで和む自分への問いかけ

簡単だけど奥深い、ケンカの仲直り

やっと言える

“ごめんなさい”

私に何が出来る


魔法の言葉の8ヵ条
審査員
審査員

「母の魔法の8カ条」にある「……こと」はわかっているけれど、むずかしい。
弟だってちがうのだから、友達や先生ともちがって当然。

ケンカの仲直りはなかなかむずかしい。

永遠の一秒   矢島 大也


一秒はきっと大事だ

その一秒が重なって一日になる
その一秒が重なって一年になる

たかが一秒、されど一秒

一秒は大事だ

コロナウイルスに怒ったその時も一秒が過ぎている

一秒はすぐに飛んでいく

でも、記憶という木には留まっている

時の流れはとても速い

一秒は大事だ

一秒を大切にし続ける

それは人生を大切にする、ということ
それは尊い命を大切にする、ということ

一秒は大事だ

一秒あれば気持ちも変わる
一秒で言える「おはよう」「ありがとう」「ごめん」「さようなら」
一秒とは短かそうで永い
一秒はすごく大事だ

勉強の一秒、仕事の一秒の積み重ねで夢が叶うかもしれない

一秒は永遠につなげられる

みんな同じ一秒を生きている

みんながみんな永遠につながる一秒を築き上げたら、この地球も永遠の希望となる


みんなで大切にしよう「永遠の一秒」
審査員
審査員

一秒の重なり、一秒の大切さ貴重さ、そこに着目していることに注目した。何事も一秒から始まる。つまり積み重ねということ。理屈ではなくて、永遠につながる一秒の大切さ。

ぼくの改造計画   山口 優空


運動会の日が近づいてくる。

走るの、やだなあ。

夏休み、もう終わった。

作品展の新聞、まだと中だ。

六年生はいつも六限だ。
やだなあ。

疲れて、ねちゃうよな。

小学校最後だから、
いっぱい、遊びたい。
勉強もしたい。

中学生になる前に
まず、やだなあ病をなおす。

それから、後でやる病も、やっつける。

ついでに、忘れんぼう病も なくす。

ぼくの改造計画で
中学校で 友達と いっぱいの
思い出を作りたい。
審査員
審査員

「改造計画」とは大きく出ました。第一連に書かれていることは、いずれも「やだなあ病」の現れです。自分でもそれをまずい、直そうと考え、「改造計画」で思い出を作りたい。

名も知れぬ彼   涌澤 雪乃


学校への通学路のはじっこに

名も知れぬ彼は たたずむ

誰も気づかぬような 存在に

威厳を持って 誇りを持って

空を夢見て むんと胸と張って

碧い葉を伸ばす 彼に

淡い色の花を見た

誰も気づかぬような 美しさに

威厳を持って 誇りを持って

海を夢見て むんと胸を張って

雨粒でお洒落している 彼に

泥はうらやましがって くっつく

誰も気づかぬような 輝きに

威厳を持って 誇りを持って

光を夢見て むんと胸を張って

今日もきちんと立つ 彼に

なんだかうれしくなった私は

母さんに内緒で

彼に 水とうの水をかけた

彼は今も 生きている

誰も気づかぬような 一生に

威厳を持って 誇りを持って

明日を夢見て むんと胸張って
審査員
審査員

通学路のはじっこにたたずむ「彼」とは何か。作者ははっきりと明かさないけれど、威厳をもって「むん」と美しく咲いている花らしい。「名も知れぬ彼」に水をあげるやさしさ。

第27回矢沢宰賞の審査を終えて

 今回で第27回をむかえた「矢沢宰賞」も、新型コロナウイルスには勝てません。賞自体は健在ですが、全国からの入選者が一堂に会する贈賞の「詩の集い」は、事務局の判断で中止せざるをえません。

 でも、今年も全国から1,036編という多くの詩のご応募をいただきました。そのすべての作品をわが机の上に広げると、元気な文字、乱暴な文字、かすれた文字、きちょうめんな文字……などが、ワッとばかりにおし寄せてくるようでした。

 うれしい悲鳴を毎度あげる私です。ふだん、おとなの詩を読む機会が多い私にとって、とくべつ幸せな時間がながれます。いつも申し上げる「至福のとき」なのです。みなさん、ありがとう! それらの作品に驚いたり、感心したり、正直言ってものたりなかったり、惜しかったりします。
「至福のとき」とはそういうものでしょう。

 1,036編すべてに目を通して、まず70編近くにしぼりました。さらにくり返し読んで入選以上の40編(本誌に掲載)を最終的に選びました。選評はそれぞれの作品に付してあります。

 残念ながら選にもれた人、ごめんなさい。別の機会にがんばってね。いつもそうですが、フェアに選んでいるつもりです。事務局では「詩の集い」がないかわりに「ビデオレター」を考えているそうです。具体的にどうなるのか、これを書いている今はまだわかりません。

 残念ながら、今年は入選以上の皆さんと集うことはできません。でも、作品の入選は堂々たる入選です。昨年も書きましたけれども、詩を書くときは「観念的発想は避けて、自分が感受した通り正直に書く」ということが大切です。

 「入選作」の配列順は、昨年同様姓名の50音順となっております。
来年こそは「詩の集い」でお会いしましょう!

  • 審査員 八木 忠栄
    1941年見附市生まれ。日大芸術学部卒。
    「現代詩手帳」編集長、銀座セゾン劇場総支配人を歴任。
    現在、個人誌「いちばん寒い場所」主宰。日本現代詩人会理事。青山女子短大講師。
    詩集「きんにくの唄」「八木忠栄詩集」「雲の縁側」(現代詩花椿賞)他多数、エッセイ集「詩人漂流ノート」「落語新時代」他、句集「雪やまず」「身体論」(吟遊俳句賞)。

年ごとの入賞作品のご紹介

最優秀賞受賞者タイトル
第1回(平成6年)山本 妙本当のこと 
第2回(平成7年)山本 妙災害
第3回(平成8年)高橋 美智子小さな翼をこの空へ
第4回(平成9年)野尻 由依大すきなふくばあ
第5回(平成10年)佐藤 夏希お日さまの一日
第6回(平成11年)除村美智代大きなもの
第7回(平成12年)徳田 健ありがとう
第8回(平成13年)井上 朝子おくりもの 
第9回(平成14年)藪田 みゆき今日は一生に一回だけ 
第10回(平成15年)日沖 七瀬韓国地下鉄放火事件の悲劇
第11回(平成16年)佐藤 ななせ抱きしめる
第12回(平成17年)髙島 健祐えんぴつとけしゴム
第13回(平成18年)濱野 沙苗机の中に
第14回(平成19年)田村 美咲おーい!たいようくーん
第15回(平成20年)高橋 菜美空唄
第16回(平成21年)今津 翼冬景色
第17回(平成22年)西田 麻里命に感謝
第18回(平成23年)山谷 圭祐
第19回(平成24年)坂井 真唯クレヨン
第20回(平成25年宮嶋和佳奈広い海
第21回(平成26年)金田一 晴華心樹
第22回(平成27年)安藤 絵美拝啓 お母さん
第23回(平成28年)宮下 月希大好きな音
第24回(平成29年)宮下 月希心のトビラ
第25回(平成30年)阿部 圭佑ものさし
第26回(令和元年)上田 士稀何かのかけら
第27回(令和2年)宮下 音奏大好きな声
第28回(令和3年)横田 惇平ふくきたる夏休み
第29回(令和4年)野田 惺やっと言えた
第30回(令和5年)舘野 絢香気持ちをカタチに 思いを届ける