矢沢宰 17歳の詩と日記

17歳(1961年5月7日~1962年5月6日)当時の日記

5月7日(日) 曇

17歳の誕生日。17年間、とにかく生きてきました。
しかし、どうみたって、ぼくの人生はこれからだ。
ぼくは確かにこれからだ。若い・・・。
苦労したっていい、死があってもいい、悩みごとがあってもいいだろう。
しかし、自分の本当の心に反しない、純な、素直な心、気持ちを、行いをしたいものだ。

6月7日(水) 晴

死んでもいいと思う時があるが、あんな時本当に死んでくれたら幸せだろう。
石にしがみついても・・・と思っている時は、死なないでくれよな。

7月13日(木) 小雨

地理テストは思わぬ所が出て、よくて80点くらいだろう。
武器よさらばを読んでいる。他に変わったこともなし。
考えることもしなかった。ただ今ひじょうに悲しい。孤独。
でもだからといってどうになるものでもなし。
僕は黙っている。今雨は止んでいるようだが、風が気持ちよい。

7月15日(土) 曇 

夕方6時ごろから学校裏を1時間半もかかって回ってきた。
まったく気持ちがよかった。
汗のワイシャツをきた人夫風の男達が自転車に乗って帰って行く姿や、奥さんや娘さんが買い物かごをハンドルにつるして町へ行く姿が、いくつも通りすぎた。
台所の窓にも、奥さんが右に行ったり左にして、夕飯の支度をしている様子が見えた。
草の上に座ってみているとあきることがない。
いつまでもこの部屋がまったく無意味に、暗く、味気ないものに思える。
明日は日曜日。床屋に行ってこよう。そして、詩を絶対ものにしてやる。

8月2日(水) 晴-雨

こうやって窓で風を浴びながら日記を書いていると、ぼくはうれしくなってくる。
幸せ?うん。楽しい?うん、夢のようだ。
あの人も雨戸を開けて、空をみていたっけ!うん・・・。

8月16日(水) 晴

ベルリン問題で世界が緊張している。
ヨーロッパの方では年末頃に世界大戦が起こるかもしれない、といっている人があるそうだが、そうなったらたまったもんではない。
人殺しあいを東西とも進んでやるようなことはないと思うが、どうにかして平和の方向へと進んでもらいたいものだ。
誰だって平和を願うのに、たとえ戦争をやったとしても、しかけた方も、しかけられた方も世界中が破滅するのに、そんなことはわかっていると思うのに、それでもお互いに仲よくなれないというのはどうしたわけか。
そんなことぐらいわからなければならないのかもしれないが、私にはまだわからない。

8月17日(木) 晴

高校野球を聞いた。ぼくと同じ歳の者たちがやってるんだなあと思うと、自分もやっているような気持ちになり、手に汗を握り、おしい場面になると思わずホロリとなる。
ぼくの中にも若さがあるんだ!ぼくの中にだって!

10月5日(木) 雨

絶安の時に考えた。
17年間生きてきたが、その内クツをはいていた時間よりも、布団にさわっている時間の方が半分以上、2/3近くであることを。
これはすごい!

11月7日(火) 晴

不思議に思うことがある。
核実験に対してもっと強い反対運動がどうして起こらないのだろうか。
人類の命をおびやかすものにはどんなものであろうとも、絶対反対するべきだ。
激しく反対するべきだ。
安保に反対した人達は、ソ連の50メガトンにはどうゆう行動もやらないのだろうか。
どうしてだろう。日本だけでなく、世界中でもっと強く、もっと強く!
どんな理由があろうとも!おやすみ。

1962年1月26日(金) 雪

詩作しながら涙が出てしまう。
久しぶりのことだ。だからといって別にどうということはないが。
今日はいやに昔の事が思われて、ノートをにらんでいたら、何だか涙が出てしまった。
血尿が出ていた頃を思い出したのだ。
2.3日前に詩作するのを少し休むなどといったが、あまり感情的になってでまかせをいわないように気をつけたがいい。(すみません。)
詩はできるときにできる。苦にしないがいい。
大きな心を持とう。苦しいこと、辛いことは承知の上だ。
それでもいいから生きたいと思っていた頃、それを忘れるな。(すみません。)

2月10日(土) 晴

この間やった導尿検査の結果菌が消えたそうだ。
また尿の中の赤血球も白血球もひじょうに減ったそうだ。
先生が‘来年の春にはきっと退院だよ’と冗談気に言っていた。

そうなると高校進学も夢ではなさそうだ。
しかも明春!こんなことを考えると勉強を一生懸命やらなければ!と少し張り合いが出てきた。

そこで先生に今度聞いてみようと思う。
はっきりとした態度をとってもいいだろうか・・・と。

そうなるともし受験勉強をすることになると恋も詩も一時おあずけだな。でもやりたいものだな。
再出発!そんな感じだ。

3月19日(月) 曇

山川先生に呼ばれて教務室に行ったが、来学期から2年の勉強を飛び越えて、3年の勉強をすることになったそうだ。
やれるかどうか。(やらなければならん。)
承知した。苦しいと思うががんばる。
きっとやってみせる。やってやる。がっばってやる。

それだけだ!

4月10日(火) 曇

いつの間にかGardenが緑にしきつめられた。
それが昨日今日の小雨で鮮やかに光っている。
緑の輝きだ。

学校が始まった。

4月24日(火) 曇

わかば会選挙で会長に選ばれた。
勉強のことを考えると何もやるまいと思ったのだが、みんなのために引き受けた。
バリバリとやってやる。

看護婦さんからつつじの花をもらった。

5月2日(水) 雨

浴場清拭許可。
湯を前進にあびるのは四年数か月ぶり。
気持ちが良かった。

でも頭がボーっとして・・・。

17歳当時の詩

入道雲

大男になって

またいだり
よじ登ったり
いっきにかけおりたりして

ふるさとへ帰りたい


私はいつも思う

私はいつも思う。

石油のように
清んで美しい小便がしたい、と。

しかも火をつければ
燃えるような力を持った小便がしたい、と。


矢沢宰 17歳の詩と日記 おわり

年齢ごとの詩と日記